マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

6月14日

14日に購入したのはこちら。


あしたの弱音 (BEAM COMIX)

あしたの弱音 (BEAM COMIX)


以上3冊。
高尾滋さんの『ゴールデン・デイズ』、名作の呼び声は聞いていたので、文庫化を機に購入開始。タイムスリップ、ミステリー的構成、許されざる恋愛模様、そして大正浪漫。いやはや素晴らしいですなぁ。もっと早く読んでいなかったのが惜しまれる作品です。

6月13日

13日に購入したのはこちら。


ちはやふる(21) (BE LOVE KC)

ちはやふる(21) (BE LOVE KC)


以上3冊。
ちはやふる』は、表紙からも推察できるように、まさしく原田先生の巻。オカルトじみているという感覚を抱く方もいるかもしれないが、長い年月の積み重ね・研鑽がもたらす説得力っていうのはあるよな、と。あと、桜沢先生の猪熊さんへの接し方が良い。
セントールの悩み』は、第27話の進路希望の話が、何とも言えない読後感でした。

6月11日

11日に購入したのはこちら。


のんのんびより 4 (MFコミックス アライブシリーズ)

のんのんびより 4 (MFコミックス アライブシリーズ)

おくさん 3 (ヤングキングコミックス)

おくさん 3 (ヤングキングコミックス)

蒼き鋼のアルペジオ 04 (ヤングキングコミックス)

蒼き鋼のアルペジオ 04 (ヤングキングコミックス)


以上3冊。
『蒼き鋼のアルペジオ』は、この巻あたりから物語に広がり・深みが更に出て来た印象がありますね。それぞれの立場の思惑が描かれつつ、数多く存在する謎が断片的に明かされていく。なかなかにハードな展開が続く中、この巻ではメンタルモデル・キリシマとデザインチャイルドの蒔絵とのやりとりに和まされました。

『さよならソルシエ』は、装丁・デザインが緻密に計算されている

もう1ヶ月近く前になりますが、穂積さんの新作『さよならソルシエ』の1巻が発売されました。


さよならソルシエ 1 (フラワーコミックスアルファ)

さよならソルシエ 1 (フラワーコミックスアルファ)


昨年発売された初単行本『式の前日』が、新人離れした完成度で話題となり一時期入手困難になったのみならず、その年の「このマンガがすごい!」オンナ編で2位を獲得。一躍時の人となった感もある穂積さんの、待望の初連載作品となります。


式の前日 (フラワーコミックス)

式の前日 (フラワーコミックス)


さよならソルシエ』の舞台となるのは19世紀末のパリ。そこに画廊を構える気鋭の画商・テオドルスが主役です。彼は権威と品格・保守に凝り固まっているパリ画壇に、不敵な態度で新風を巻き起こさんとします。
そしてテオドルスのフルネームは、テオドルス・ファン・ゴッホ。彼の兄は、後に天才画家と評されることになるフィンセント・ファン・ゴッホであった・・・。


新しい画風(印象派)を席巻させようと画策するテオドルスとパリ画壇との対立と、テオドルス、フィンセントの二人の関係を軸に、物語は綴られていきます。
テオドルスの目論みはどのような結末を迎えるのか。純真無垢なフィンセントと、彼に対して崇敬と嫉妬が入り交じった複雑な感情を持つテオドルスとの関係が如何に描かれるのか。
後の史実から幸せな結末は難しいと思われますが、そこに至るまでの彼らの、のみならずその時代にパリに生きる人々の姿をどこまで鮮烈に描いていくのか。


未だ導入部といったところではありますが、初連載作にして既に円熟の筆致といった印象も強く受ける。1巻ではテオドルスのトリックスター的活躍が読み手の心を躍らせてくれますね。2巻以降では上で書いた2つの軸がより詳細に描かれていくものと思われます。続きに大きな期待を寄せる次第です。



さて、そんな『さよならソルシエ』ですが、作品のみならず、装丁・デザインも非常に計算された、洗練されたものという印象を受けました。



上の画像と同じですが、こちらが表紙。
テオドルスの顔が大写しになっています。鋭いまなざしと不敵な笑みが強い印象を与えますね。
そしてこの絵は、裏表紙と1枚続きになっています。より正確に言えば、カバー全体が1枚の絵になっていますね。



こちらが裏表紙です。描かれているのはフィンセント。
テオドルスに比べると、ギラギラしたところがまるでないのが判るかと思います。
テオドルスの後ろに立ち、相手を射抜く様な鋭さというよりは、何かを深く見据えるようなまなざしといった印象(まぁ、これは個人的な主観ではありますが)。
そして当然ですが、フィンセントは絵筆を持っています。これが巧い。



背表紙のところに、ちょうど筆先が描かれているのですね。
つまり、仮に本棚に棚差しされている状態であったとしても、絵筆だけは見える。
この作品が、絵画・或いは画家を題材にした作品であるということが、背表紙を見ただけでも判るようになっているのです。
それでいて、タイトルは『さよならソルシエ』。タイトルだけではどのような物語なのか、少々想像しづらい。思わずどんな作品なのか、手に取ってみたくなるような仕掛けだと思う訳です。
そして筆の方向、つまり背表紙へと向かえば、そこには概略が記載されています。
表紙方向へ目を動かせば、強い存在感を放つテオドルスの姿。


実に緻密に計算された構図だと感じます。
そしてこのように、背表紙も使った、立体的な観点からデザインできるのは、「書籍」という形態の強みかと考える次第です。



電子書籍も悪くないけど、やはり紙の本も良いですね。
といったところで、本日はこのあたりにて。

6月10日

10日に購入したのはこちら。


きのこいぬ 1 (リュウコミックス)

きのこいぬ 1 (リュウコミックス)

おくさん 2 (ヤングキングコミックス)

おくさん 2 (ヤングキングコミックス)

焔の眼(2) (アクションコミックス)

焔の眼(2) (アクションコミックス)


以上5冊、の筈(下2冊は別の日だったかも)。
『月影ベイベ』は、名作『坂道のアポロン』の小玉ユキさんの新作。今作の舞台となるのは、伝統芸能 " おわら " を守り継ぐ地方都市。富山になるんですかね?その町の少年・光と、彼が父親のように慕っているおじさん・円と、東京から転校してきた少女・蛍子との奇妙な関係。まだ物語は始まったばかりですが、早くも引き込まれてしまいますね。
戦国妖狐』は、というか水上悟志さんの作品全般に言えることですが、やはり一貫して人間の強さを描き続けているなぁ、と。千夜と神雲との戦いの最後を締めるのが、闇の力ではなく「息子拳骨」である点に、それを強く感じた次第です。

6月7日

7日に購入したマンガはこちら。


惡の華 (8) (講談社コミックス)

惡の華 (8) (講談社コミックス)

亜人(2) (アフタヌーンKC)

亜人(2) (アフタヌーンKC)

テンペスト(4) (KCx)

テンペスト(4) (KCx)

昭和元禄落語心中(4) (KCx)

昭和元禄落語心中(4) (KCx)


以上6冊。ややまとめ買いです。
昭和元禄落語心中』は、過去編も佳境に入り大きな盛り上がりを見せてきていますね。菊比古の師匠(先代八雲)の懺悔の場面は、あたかも『真景累ヶ淵』の如き業の深さが描かれ、そしてその直後に描かれる菊比古の高座の緊迫感。不幸が重なっての孤独をも芸に昇華させる姿がまた業が深く、実に見事な描写でした。

遂に刊行開始。資料的価値も計り知れない決定版、『水木しげる漫画大全集』

6月3日から、遂に待望の『水木しげる漫画大全集』の刊行が開始されました。



50年を越える画業の集大成とも言えるこの全集、まさしく偉業と呼ぶべきでありましょう。当然の如く第1期の全巻予約はしていますので、さっそく購入してきました。
そして一読して、これは見事な仕事であることを改めて確認した次第です。



こちらは背表紙の下半分の写真です。
全集全体でのナンバリング(年代順)が刻まれています。『「忍法秘話」掲載作品(全)』が021、『ゲゲゲの鬼太郎 1』が029、『不思議シリーズ(全)』が081。それと共に、本の帯には発表年代も併せて掲載。この年代は帯にのみ記載されています。心憎いデザインですね。
そして第1期は33冊刊行されるのですが、既に「081」が刊行されているのもポイントです。既に第2期以降を視野に入れている、水木センセイならびにプロダクション、そして講談社の気概みたいなものを感じますね。



こちらは各巻に付録として付いてくる小冊子「茂鐵新報」。
収録作品の詳細な解題やインタビュー、各巻巻末の解説者の紹介文等を掲載。因みに『忍法秘話』解説が白土三平さん、『ゲゲゲの鬼太郎』が高橋留美子さん、『不思議シリーズ』が荒俣宏さんです。
そして上の写真のいちばん左の「茂鐵新報」には、

水木しげる
漫画大全集
六月刊行
百八冊
講談社


と書かれた紙を持つ水木センセイの姿が。
その写真の下に書かれた解説では「全体の巻数は今のところ未定。」と書かれてはいるものの、荒俣宏さんも解説で「すべてが刊行されれば百巻を軽く凌駕する」*1と書いているので、恐らく108冊に近い数字になるのであろうと思われます。


そして資料的な面から見ても、圧巻の一言。
全収録作品はもちろんのこと、収録されたカラーイラスト、単行本収録の際にカラーを施した箇所に至るまで、詳細に初出が記されています。
更には、この全集は「初出時の状態での収録」を基本にしています。つまり「雑誌に掲載されたバージョン」を収録している訳ですね。
そして、単行本にする際に加えられた修正(改稿・コマの組み替え・追加等)については、資料というかたちで別個に収録しています。未使用原稿もそこに含まれる。


これは、ほんとうに素晴らしい仕事です。
ようやく、水木しげるセンセイの膨大な仕事の、全貌を窺うことができる。
娯楽性の高さについては論を俟たない。


少々値は張りますが、充分過ぎるほどにその価値はあると思います。
ファン必携、そうでない方(など存在しないと信じたいところですが)にも是非一度は読んで戴きたい全集ですね。


といったところで、本日はこのあたりにて。

*1:水木しげる水木しげる漫画大全集081 不思議シリーズ(全)』436ページ。

6月5日

5日に購入したのはこちら。


おくさん 1 (ヤングキングコミックス)

おくさん 1 (ヤングキングコミックス)

ヒノコ 2 (花とゆめCOMICS)

ヒノコ 2 (花とゆめCOMICS)


以上2冊。
『おくさん』で描かれるのは、圧倒的なスタイル(B107㎝!)で天然のおくさんの日常。おくさんの一挙手一投足に、むせかえるようなエロスが立ち籠めていて素晴らしいですね。そしてだーさん羨まし過ぎる。
『ヒノコ』は、「文字」そのものを使った表現と、それを物語に組み込むストーリーテリングの巧みさに舌を巻きます。続きが非常に愉しみな1冊。ところでこの作品、漢字研究の泰斗、故・白川静氏の影響とかもあったりするのでしょうか。

『囚人リク』における加藤看守の描写について

瀬口忍さんの『囚人リク』、面白いですね。
現在「チャンピオン」で連載している作品のなかでも、トップクラスの熱さを持った作品だと思います。


囚人リク 11 (少年チャンピオン・コミックス)

囚人リク 11 (少年チャンピオン・コミックス)


隕石直撃により壊滅状態になった東京のスラム街で暮らしていた少年・リク。リクはスラム街に駐在する交番のおじさんを、実の親のように慕っています。しかし、警視総監・鬼道院の汚職を独自に調査していたおじさんは、鬼道院の手によって殺されてしまう。そしてその罪を着せられたリクは、懲役30年を科せられ「極楽島特級刑務所」へと収監されてしまいます。鬼道院への復讐を誓ったリクは、脱獄不可能とされる極楽島特級刑務所からの脱出を決意する・・・、という筋書きです。
脱獄を巡る囚人と看守との駆け引き、囚人同士の絆・友情等が高密度で盛り込まれ、読者の心を摑んで離さない展開が続いています。


先月(5月)に発売された11巻では、脱獄計画への疑惑を持ち、その事実を摑むことで自らの出世を目論む冷酷な看守・加藤と、加藤によって懲罰房へと送られ過酷な拷問を受けるリクとレノマ(リクと共に脱獄の誓いを立てた、リクの所属する木工場のボス)、そして二人を助けようと奔走するレノマの部下たち、三つ巴の駆け引き・攻防が描かれます。


さて、今回取り上げるのは、10〜11巻で大きな存在感を示す加藤看守についてです。
実際に読んだ方はお判りかもしれませんが、加藤看守は一挙手一投足に無闇に存在感がある。判りやすい例を挙げてみます。



(瀬口忍『囚人リク』11巻88ページ。)



(同書11巻118ページ。)


上の画像は、なかなか脱獄の確証を摑めない加藤看守が、証拠を捏造してリクとレノマを陥れることを決意する場面。
下の画像は、その証拠捏造に手を付け始めた箇所になります。
異様にケレン味溢れているのが、見て取れるかと思います。ストーリー展開から大きく浮いた印象を受ける、一歩間違えるとギャグと捉えられかねないギリギリのポージング。
何らかの意味、或いはインスピレーションがあったのか、非常に気になるところです。



そんな中、個人的に最も気になったのが、加藤看守の「目」の描写なのですね。
こちらも例を挙げてみましょう。



(同書11巻26ページ。)


加藤看守が脱獄の証拠を摑まんと、昏い野望をあらわにしている箇所。
右目と左目の描写が異なっています。目の焦点も合っていないですね。この表現は、上の画像を最初として、その後しばらくの間用いられます。
このような状態になったのは、レノマに殴られて怪我をしたのが原因ではあるのですが、個人的な所見では、それは後付けと言って差し支えないのではないかと。恐らくそれとは別の、何らかの意図が込められています。



(同書10巻181ページ。)


怪我の原因となった、レノマを罠に嵌めようとして見破られ、殴り飛ばされた直後の場面。左目は無傷なのが判るかと思います。また、



(同書11巻52ページ。)


怪我がほぼ直っているにも関わらず、右目・左目の描写が異なるケースがあります。
因みにこの箇所は、かつてレノマと取引をした元看守・山岡を脅し、脱獄の証拠を摑もうとしている場面です。


この歪な描写は何なのか。
それに対する1つの仮説を提供してくれるコマがあります。それがこちら。



(同書11巻148ページ。)


レノマの部下を始めとする、多くの人物の尽力により、遂に加藤看守は敗北を悟り、膝から崩れ落ちます。非常に特徴的な筆致で描かれているので、印象に残っている方も多いのではないかと。
この描写から、(少なくともこれを執筆していた時期に)瀬口忍さんはキュビズムに強いインスピレーションを受けたのではないか、と。



キュビズムっていうのは、詳細は Wikipedia あたりをご参照戴ければと思う訳ですが、概要を引用すると、

  • ルネサンス以来の「単一焦点による遠近法」の放棄(すなわち、複数の視点による対象の把握と画面上の再構成)
  • 形態上の極端な解体・単純化・抽象化


Wikipediaキュビズム」の項目より一部抜粋)


という2点を特徴とする表現様式になります。
有名な作品を1つ挙げると、こちらになりますでしょうか。



パブロ・ピカソ『泣く女』、1937年制作。)


『囚人リク』11巻148ページの、抽象化され、且つ継ぎはぎされたかのような加藤看守の描写は、少なからずキュビズムの表現に似通った要素があるのではないか、と思う訳です。キュビズムを元に、瀬口忍さんが独自のアレンジを加えた描写なのかな、とも。
それを踏まえて、上で挙げた「目の描写」を考えてみます。
これもまた、「複数の視点による対象の把握と画面上の再構成」という、キュビズムの方法論に基づく描写かもしれない。
冷酷な看守としての加藤の姿と、家庭での良き父親としての加藤という二面性を、複数の顔を持つ加藤看守の姿を、象徴的に表現しているのかもしれない。



まぁ、当然考え過ぎという可能性もありますけどね。(´ω`)
案外、このエピソードを描いていた時期に、ピカソか誰かの作品に接し強い衝撃を受け、作中に盛り込んでみた、という程度かもしれません。それ以前に「特に深い意味はないです」という可能性すら存在する。
とは言え、あれやこれやと推測を重ねてみるのも、マンガの愉しみ方の1つではないかと考える次第です。


といったところで、本日はこのあたりにて。

6月4日

4日に購入したのはこちら。


ニセコイ 7 (ジャンプコミックス)

ニセコイ 7 (ジャンプコミックス)

監視官 常守朱 2 (ジャンプコミックス)

監視官 常守朱 2 (ジャンプコミックス)

のんのんびより3 (MFコミックス アライブシリーズ)

のんのんびより3 (MFコミックス アライブシリーズ)


以上5冊。
遅ればせながら『食戟のソーマ』読んでみたのですが、「食」っていう「ジャンプ」では比較的扱われることが少なかった素材(他にパッと思い出せるのが『包丁人味平』くらい)を、巧く調理しているなぁ、という印象を受けました。お色気枠的な位置もしっかり抑えているのは、佐伯俊さんのキャリアの賜物と言えますかな。(´ω`)
ニセコイ』は、舞子とるりちゃんの距離感が気になってきています。そして小野寺さんの出番の少なさに(以下略)