マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

6月16日

16日に購入したのはこちら。


きのこいぬ 2 (リュウコミックス)

きのこいぬ 2 (リュウコミックス)


こちら1冊のみ。・・・の筈です。
最近記録を怠っていたため、いつ買ったのか曖昧になりつつあります。従って多少のズレが存在するかも。
たこ焼きを「もっもっ」と頬張るきのこいぬの可愛らしさが尋常ではない1冊。

マンガにおける「田舎」の描写:ユートピアとディストピアのあいだ

自分の出身が岩手県だからでしょうか、マンガを読んでいると「田舎の描写」が気になります。
ひとことで「田舎」と言っても、言うまでもなく作品によって、その描かれ方は千差万別です。のどかな生活が描かれることもあれば、あまりにも息苦しい日常が描かれることもある。いろいろと読み比べてみるのも面白かったりします。


という訳で、大雑把な分類をしつつ、「田舎」が描かれているマンガをまとめてみました。
パッと思い付いた作品を挙げていくので、「○○が入っていない!」と感じる向きもありましょうが、そこはご容赦のほどを。



ユートピア的な田舎が描かれる作品】


のんのんびより 1 (MFコミックス)

のんのんびより 1 (MFコミックス)


まずはこちら、近々アニメ放映も開始される『のんのんびより』。
単行本の帯に「自転車で20分の最寄りの本屋はジャ○プの発売が毎週水曜日。」とあるくらいの、田舎を舞台にした作品です。自分の実家もそれなりに田舎でしたが、発売日は火曜日だったので、更に僻地ですね。
全校生徒5名の分校に通う女の子4人の日常が、四季の移り変わりも背景に描かれていきます。それぞれのキャラクターの掛け合いに癒される作品。


天然コケッコー (1) (集英社文庫―コミック版)

天然コケッコー (1) (集英社文庫―コミック版)


くらもちふさこさんの『天然コケッコー』も、どちらかというとユートピア的な印象がありますね。こちらはなかなかに人間関係が錯綜していて一筋縄ではいかない展開ではありますが、悪人はほとんど存在しないですね。
天然コケッコー』の舞台となる村も、バスが2時間に1本という片田舎。村人全員顔見知りという地域が描かれます。


この他にユートピア的な田舎というと、やはり『まんだら屋の良太』ですか。



この作品も、かなり悲喜こもごもの内容ではありますが(良太があこがれていたお姉さんが、恋人の借金のカタに無理矢理ブルーフィルムに出演させられたりするエピソードとか)、何と言うか、全体的には実に愉しそうな空間なのですな。
こういった「ユートピア的な田舎」の条件としては、当り前かもしれませんが、愉しさを共有できる友人が複数存在することが挙げられそうです。



ディストピア的な田舎が描かれる作品】


逆に、何らかの愉しみを共有できる友人が存在しないと、かなり田舎は息苦しい場所になるのかもしれません。
この息苦しさ、田舎のどん詰まり感を描いた極北とも言えるのが、これまたアニメが佳境に入っている『惡の華』と、『ハイスコアガール』で大ブレイクを果たした押切蓮介さんによる『ミスミソウ』であろうと思います。


惡の華(1) (少年マガジンKC)

惡の華(1) (少年マガジンKC)

ミスミソウ 完全版(上) (アクションコミックス)

ミスミソウ 完全版(上) (アクションコミックス)


この2作品で描かれる街の閉塞感は、あまりにも生々しいです。
行き場をなくして渦巻く負の感情がもたらす悲劇を、是非ご一読して欲しいところ。とりわけ『ミスミソウ』は読むのが辛い作品かもしれませんが、これは傑作としか言いようがない。


あと、上で挙げた『まんだら屋の良太』は温泉街が舞台なのですが、同じ温泉街を舞台とした作品でも、高橋しんさんの『雪にツバサ』は、どちらかと言うとこちらに分類される作品ですね。


雪にツバサ(1) (ヤンマガKCスペシャル)

雪にツバサ(1) (ヤンマガKCスペシャル)



【中間的な位置付け】


息苦しさみたいなものはあっても、それを忘れさせてくれる何かが存在する例。
最も判り易いのは、これまた押切蓮介さんになりますが、『ハイスコアガール』の原型とも言える、自伝的色彩も濃い『ピコピコ少年』シリーズになりますね。


ピコピコ少年

ピコピコ少年


学校の成績も悪く、親ともケンカしてばかり。理不尽な経験も数知れず。それでもゲームがあれば、そこは地獄ではない。


小玉ユキさんの『坂道のアポロン』も、これに近いかな、という印象を受けます。これは田舎が、というよりは主人公が身を寄せている家に息苦しさがある訳なので、視点を変えればユートピア的なのかも、とか。



最後に、上に挙げたもの以外の作品を書き連ねておきます。
あくまで個人的な印象に基づく、大雑把な分類です。追記していくかも。

ユートピア的】


ディストピア的】

それにしても、見方によってずいぶん異なる様相を示すものだなぁ、と感じます。
といったところで、本日はこのあたりにて。

6月15日

15日に購入したのはこちら。


焔の眼(3) (アクションコミックス)

焔の眼(3) (アクションコミックス)

のんのんびより 5 (アライブコミックス)

のんのんびより 5 (アライブコミックス)

おくさん 4 (ヤングキングコミックス)

おくさん 4 (ヤングキングコミックス)

蒼き鋼のアルペジオ 05 (ヤングキングコミックス)

蒼き鋼のアルペジオ 05 (ヤングキングコミックス)


雑誌類も含めて6冊。
『焔の眼』は、『ミスミソウ』の系譜にある作品ですね。年端もいかない少女の身に降り掛かる、何処までも過酷な運命。この巻に収録されている23話とか、ただ呆然とするばかりです。
それでいながら痛快娯楽活劇的な要素も加わっているところに、円熟の筆致みたいなものを感じたりもしますね。沙羅が今後どのように自らの運命を切り拓いていくのか、愉しみな作品です。

6月14日

14日に購入したのはこちら。


あしたの弱音 (BEAM COMIX)

あしたの弱音 (BEAM COMIX)


以上3冊。
高尾滋さんの『ゴールデン・デイズ』、名作の呼び声は聞いていたので、文庫化を機に購入開始。タイムスリップ、ミステリー的構成、許されざる恋愛模様、そして大正浪漫。いやはや素晴らしいですなぁ。もっと早く読んでいなかったのが惜しまれる作品です。

6月13日

13日に購入したのはこちら。


ちはやふる(21) (BE LOVE KC)

ちはやふる(21) (BE LOVE KC)


以上3冊。
ちはやふる』は、表紙からも推察できるように、まさしく原田先生の巻。オカルトじみているという感覚を抱く方もいるかもしれないが、長い年月の積み重ね・研鑽がもたらす説得力っていうのはあるよな、と。あと、桜沢先生の猪熊さんへの接し方が良い。
セントールの悩み』は、第27話の進路希望の話が、何とも言えない読後感でした。

6月11日

11日に購入したのはこちら。


のんのんびより 4 (MFコミックス アライブシリーズ)

のんのんびより 4 (MFコミックス アライブシリーズ)

おくさん 3 (ヤングキングコミックス)

おくさん 3 (ヤングキングコミックス)

蒼き鋼のアルペジオ 04 (ヤングキングコミックス)

蒼き鋼のアルペジオ 04 (ヤングキングコミックス)


以上3冊。
『蒼き鋼のアルペジオ』は、この巻あたりから物語に広がり・深みが更に出て来た印象がありますね。それぞれの立場の思惑が描かれつつ、数多く存在する謎が断片的に明かされていく。なかなかにハードな展開が続く中、この巻ではメンタルモデル・キリシマとデザインチャイルドの蒔絵とのやりとりに和まされました。

『さよならソルシエ』は、装丁・デザインが緻密に計算されている

もう1ヶ月近く前になりますが、穂積さんの新作『さよならソルシエ』の1巻が発売されました。


さよならソルシエ 1 (フラワーコミックスアルファ)

さよならソルシエ 1 (フラワーコミックスアルファ)


昨年発売された初単行本『式の前日』が、新人離れした完成度で話題となり一時期入手困難になったのみならず、その年の「このマンガがすごい!」オンナ編で2位を獲得。一躍時の人となった感もある穂積さんの、待望の初連載作品となります。


式の前日 (フラワーコミックス)

式の前日 (フラワーコミックス)


さよならソルシエ』の舞台となるのは19世紀末のパリ。そこに画廊を構える気鋭の画商・テオドルスが主役です。彼は権威と品格・保守に凝り固まっているパリ画壇に、不敵な態度で新風を巻き起こさんとします。
そしてテオドルスのフルネームは、テオドルス・ファン・ゴッホ。彼の兄は、後に天才画家と評されることになるフィンセント・ファン・ゴッホであった・・・。


新しい画風(印象派)を席巻させようと画策するテオドルスとパリ画壇との対立と、テオドルス、フィンセントの二人の関係を軸に、物語は綴られていきます。
テオドルスの目論みはどのような結末を迎えるのか。純真無垢なフィンセントと、彼に対して崇敬と嫉妬が入り交じった複雑な感情を持つテオドルスとの関係が如何に描かれるのか。
後の史実から幸せな結末は難しいと思われますが、そこに至るまでの彼らの、のみならずその時代にパリに生きる人々の姿をどこまで鮮烈に描いていくのか。


未だ導入部といったところではありますが、初連載作にして既に円熟の筆致といった印象も強く受ける。1巻ではテオドルスのトリックスター的活躍が読み手の心を躍らせてくれますね。2巻以降では上で書いた2つの軸がより詳細に描かれていくものと思われます。続きに大きな期待を寄せる次第です。



さて、そんな『さよならソルシエ』ですが、作品のみならず、装丁・デザインも非常に計算された、洗練されたものという印象を受けました。



上の画像と同じですが、こちらが表紙。
テオドルスの顔が大写しになっています。鋭いまなざしと不敵な笑みが強い印象を与えますね。
そしてこの絵は、裏表紙と1枚続きになっています。より正確に言えば、カバー全体が1枚の絵になっていますね。



こちらが裏表紙です。描かれているのはフィンセント。
テオドルスに比べると、ギラギラしたところがまるでないのが判るかと思います。
テオドルスの後ろに立ち、相手を射抜く様な鋭さというよりは、何かを深く見据えるようなまなざしといった印象(まぁ、これは個人的な主観ではありますが)。
そして当然ですが、フィンセントは絵筆を持っています。これが巧い。



背表紙のところに、ちょうど筆先が描かれているのですね。
つまり、仮に本棚に棚差しされている状態であったとしても、絵筆だけは見える。
この作品が、絵画・或いは画家を題材にした作品であるということが、背表紙を見ただけでも判るようになっているのです。
それでいて、タイトルは『さよならソルシエ』。タイトルだけではどのような物語なのか、少々想像しづらい。思わずどんな作品なのか、手に取ってみたくなるような仕掛けだと思う訳です。
そして筆の方向、つまり背表紙へと向かえば、そこには概略が記載されています。
表紙方向へ目を動かせば、強い存在感を放つテオドルスの姿。


実に緻密に計算された構図だと感じます。
そしてこのように、背表紙も使った、立体的な観点からデザインできるのは、「書籍」という形態の強みかと考える次第です。



電子書籍も悪くないけど、やはり紙の本も良いですね。
といったところで、本日はこのあたりにて。

6月10日

10日に購入したのはこちら。


きのこいぬ 1 (リュウコミックス)

きのこいぬ 1 (リュウコミックス)

おくさん 2 (ヤングキングコミックス)

おくさん 2 (ヤングキングコミックス)

焔の眼(2) (アクションコミックス)

焔の眼(2) (アクションコミックス)


以上5冊、の筈(下2冊は別の日だったかも)。
『月影ベイベ』は、名作『坂道のアポロン』の小玉ユキさんの新作。今作の舞台となるのは、伝統芸能 " おわら " を守り継ぐ地方都市。富山になるんですかね?その町の少年・光と、彼が父親のように慕っているおじさん・円と、東京から転校してきた少女・蛍子との奇妙な関係。まだ物語は始まったばかりですが、早くも引き込まれてしまいますね。
戦国妖狐』は、というか水上悟志さんの作品全般に言えることですが、やはり一貫して人間の強さを描き続けているなぁ、と。千夜と神雲との戦いの最後を締めるのが、闇の力ではなく「息子拳骨」である点に、それを強く感じた次第です。

6月7日

7日に購入したマンガはこちら。


惡の華 (8) (講談社コミックス)

惡の華 (8) (講談社コミックス)

亜人(2) (アフタヌーンKC)

亜人(2) (アフタヌーンKC)

テンペスト(4) (KCx)

テンペスト(4) (KCx)

昭和元禄落語心中(4) (KCx)

昭和元禄落語心中(4) (KCx)


以上6冊。ややまとめ買いです。
昭和元禄落語心中』は、過去編も佳境に入り大きな盛り上がりを見せてきていますね。菊比古の師匠(先代八雲)の懺悔の場面は、あたかも『真景累ヶ淵』の如き業の深さが描かれ、そしてその直後に描かれる菊比古の高座の緊迫感。不幸が重なっての孤独をも芸に昇華させる姿がまた業が深く、実に見事な描写でした。

遂に刊行開始。資料的価値も計り知れない決定版、『水木しげる漫画大全集』

6月3日から、遂に待望の『水木しげる漫画大全集』の刊行が開始されました。



50年を越える画業の集大成とも言えるこの全集、まさしく偉業と呼ぶべきでありましょう。当然の如く第1期の全巻予約はしていますので、さっそく購入してきました。
そして一読して、これは見事な仕事であることを改めて確認した次第です。



こちらは背表紙の下半分の写真です。
全集全体でのナンバリング(年代順)が刻まれています。『「忍法秘話」掲載作品(全)』が021、『ゲゲゲの鬼太郎 1』が029、『不思議シリーズ(全)』が081。それと共に、本の帯には発表年代も併せて掲載。この年代は帯にのみ記載されています。心憎いデザインですね。
そして第1期は33冊刊行されるのですが、既に「081」が刊行されているのもポイントです。既に第2期以降を視野に入れている、水木センセイならびにプロダクション、そして講談社の気概みたいなものを感じますね。



こちらは各巻に付録として付いてくる小冊子「茂鐵新報」。
収録作品の詳細な解題やインタビュー、各巻巻末の解説者の紹介文等を掲載。因みに『忍法秘話』解説が白土三平さん、『ゲゲゲの鬼太郎』が高橋留美子さん、『不思議シリーズ』が荒俣宏さんです。
そして上の写真のいちばん左の「茂鐵新報」には、

水木しげる
漫画大全集
六月刊行
百八冊
講談社


と書かれた紙を持つ水木センセイの姿が。
その写真の下に書かれた解説では「全体の巻数は今のところ未定。」と書かれてはいるものの、荒俣宏さんも解説で「すべてが刊行されれば百巻を軽く凌駕する」*1と書いているので、恐らく108冊に近い数字になるのであろうと思われます。


そして資料的な面から見ても、圧巻の一言。
全収録作品はもちろんのこと、収録されたカラーイラスト、単行本収録の際にカラーを施した箇所に至るまで、詳細に初出が記されています。
更には、この全集は「初出時の状態での収録」を基本にしています。つまり「雑誌に掲載されたバージョン」を収録している訳ですね。
そして、単行本にする際に加えられた修正(改稿・コマの組み替え・追加等)については、資料というかたちで別個に収録しています。未使用原稿もそこに含まれる。


これは、ほんとうに素晴らしい仕事です。
ようやく、水木しげるセンセイの膨大な仕事の、全貌を窺うことができる。
娯楽性の高さについては論を俟たない。


少々値は張りますが、充分過ぎるほどにその価値はあると思います。
ファン必携、そうでない方(など存在しないと信じたいところですが)にも是非一度は読んで戴きたい全集ですね。


といったところで、本日はこのあたりにて。

*1:水木しげる水木しげる漫画大全集081 不思議シリーズ(全)』436ページ。