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マンガLOG収蔵庫・別館

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文字には力がある。津田雅美『ヒノコ』の世界と文字表現

ネット上だとあまり名前を見掛けない印象もあるのですが、津田雅美さんの『ヒノコ』ってどのくらいの方が読まれているのでしょうか?


ヒノコ 1 (花とゆめCOMICS)

ヒノコ 1 (花とゆめCOMICS)


ヒノコ 2 (花とゆめCOMICS)

ヒノコ 2 (花とゆめCOMICS)


津田雅美さんの最も有名な作品となりますと、やはりアニメ化もされた名作『彼氏彼女の事情』になるかと思いますが、それ以降も、互いの認識のズレが2つの視点からコミカルに描かれる『eensy-weensy モンスター』、江戸時代が現代(西暦2000年以降)まで続いているという設定の『ちょっと江戸まで』と、秀作を続けて描かれています。
そして現在「LaLa」で連載中の作品が、上に挙げた『ヒノコ』です。


この作品、ストーリー的にも表現的にも実に面白い作品なので、今回ちょっと取り上げてみようかと。以下、ネタバレ描写も若干含みますので読み進める際にはご注意を。





『ヒノコ』は、古代日本をモティーフにした世界(弥生時代平安時代を混ぜたような世界観)が舞台の、オリエンタルファンタジーです。この地には、不思議な能力を持つ「巫女」が存在しており、異形の存在も実際にいる。
ある日、「宝物」を都へ運ぼうとしていた悪徳商人が、盗人に襲われます。
宝物の噂を聞きつけて襲った盗人の首謀者は、近くの町に暮らす浮浪児の少年・シン。首尾よく「宝物」を手に入れたシンが、その中身を確認すると、



津田雅美『ヒノコ』1巻16ページ。)


中に入っていたのは、身動きの取れない状態にされ、激しく暴行を加えられた女性。
シンはその女性・マユラを介抱してやります。そしてマユラを奪われた商人は、都の役人を引き連れて町へと戻ってくる。
町を訪れた役人は、盗賊行為が町ぐるみで行われていたと判断し、全員を捕縛しようとします。その様子を見たマユラは、紙と筆を手にして役人・商人の前に姿を現す。



(同書1巻40〜41ページ。)


「巫女」としての力を示したマユラ。
彼女は「書いた文字の意味を具現化させる能力」を持っています。上のコマは、見開きの関係上見えづらいかもしれませんが、「縛」の文字を書いて役人と商人を縛り付けている場面ですね。


役人の手を逃れ、更には枯れ果てていた土地を元の姿に戻したマユラと、彼女に付いて行くことに決めたシンは、当てのない旅路へと就きます。そしてマユラの能力を危険視した役人・クランドはマユラたちを追い始める・・・。



と、ここまでが第1話。
ここからは、言わばロードムービー的な物語展開となります。マユラを追うクランド、追っ手から逃れようと旅を続けるシンとマユラ、訪れた村での村人たちの交流や危機。
この国では、巫女を手にした町・村は栄えるという伝承がまことしやかに伝わっています。実際、巫女の不思議な力(巫女によって能力は色々)を巧く使って栄えることができる。その一方で、国は「巫女狩り」を進めており、巫女としての能力を持つ者は王朝へと集められます(力=権力の集中みたいなものですかな)。巫女を手許に置いておきたい人物・或いは村や町は、巫女を巧妙に隠し持つ。栄えるために巫女を攫うことも行われる。
マユラとシンも、数々の思惑に巻き込まれながら、能力を用いて危機を切り抜けたり、時には人助けをしながら、旅路を重ねていきます。更には王朝建国時の伝説や予言も絡み合い、物語の規模は徐々に大きくなってきているところです。


そしてこの作品の白眉とも言えるのが、マユラの「力」の表現ではないかと。
文字の意味を具現化する、と書きましたが、『ヒノコ』において用いられる文字は多岐にわたります。古代の文字も使われる。
使われている(或いは、これから使われるであろう)字体を幾つか挙げますと、甲骨文字・金文・篆文・隷書・草書・行書・楷書等々。これらの中でも、とりわけ甲骨文字〜篆文にかけては、初期の象形文字ということもありましょうか、キャラクター性を備えています。それを実に巧く、作品の表現に取り込んでいると思う訳です。



(同書1巻142ページ。)


もっとも判り易いと思われるのがこちらでしょうか。
楷書か行書で書かれた「見」の文字が動き出し、隷書(もしかすると篆文かも)に変化した段階で紙から立ち上がり、更には金文に変化して「目」と「人」になってキャラクター化し、感情すら持つようになっています。目玉だけなのに何とも可愛らしいですな。
そしてこういった表現、実にマンガ(やアニメーション)ならではの面白さがあると思う訳です。嘗て手塚治虫が「マンガとはメタモルフォーゼです」的な内容の発言をしたことがあったかと思うのですが、それを地で行く表現かな、という気も。



(同書2巻98ページ。)


他にも、こちらは『ヒノコ』の舞台となる国の図ですが、大王の支配下にある国「白𥄢(ハクソウ)」「緑蘩(リョクカ)」「赤承(セキショウ)」の3つの国の名前・文字にも明確な意図が込められています。あまりネタバレが過ぎるのも問題なので、ご興味のある方は是非単行本を。



物語の展開的にも「文字」が不可分に組み込まれており、尚且つ表現としても面白い。より多くの方に読まれて欲しい作品だと思います。
といったところで、ひとまずはこのくらいで。

6月21日

21日に購入したのはこちら。



のりりん(7) (イブニングKC)

のりりん(7) (イブニングKC)


げんしけん 二代目の伍(14) (アフタヌーンKC)

げんしけん 二代目の伍(14) (アフタヌーンKC)


以上3冊。
げんしけん』、やはり第80話は感慨深いものがありますね。これが描かれて良かったとしみじみ感じます。そして1つの大きなストーリーが決着をみて、また別のストーリーが、下の世代を中心とした物語が本格的に動き出すのかな、と思う訳ですが、それにしても斑目のモテ期たるや(以下略)。
下の世代だと、やはり注目を集めているのは波戸くんなのでしょうが、個人的に気になっているのは吉武なんですよね。現時点で、屈折らしい屈折を何一つ見せていない。こういう存在として周囲を引っ掻きまわし続けるのか、或いは荻上以上の闇を抱えていたりするのか。個人的な嗜好で言えば後者が読み応えがあって良いのですが、果てどうなるか。

「漫画家使用画材アンケート」分析

先日、「季刊エス」最新号を購入しました。



この2013年7月号(43号)の目玉と言える特集が、10周年特別企画として行われた「漫画家使用画材アンケート」です。コミックナタリーでも取り上げられていましたね。


115名のマンガ家さんに行った大アンケート。アンケート参加作家さんの一覧は上記リンクをご参照戴ければと。
質問事項は、この号の特集が「メイキング・スペシャル 画材百科」ということもあり、画材・作画方法が中心となっています。小さな文字が、6ページぎっしりと埋まっている特集は一読の価値あり。
今回は、このアンケート結果を幾つか分析してみようかと思います。





【アナログ・デジタルの比率】

  • アナログ:83/115(72.2%)
  • デジタル:21/115(18.3%)
  • 双方併用:11/115(9.6%)


やはりまだ、ペンを用いての作画(アナログ)が大きな割合を占めていますね。
とは言え併用も含めればデジタル使用率は約28%、今後もこの割合は少しずつ増えていくのかな、という気はします。



【人物を描く際に用いるペンの比率】

  • Gペン:51
  • 丸ペン:43
  • ミリペン*1:9
  • カブラペン*2:7
  • ボールペン:6
  • スクールペン:4
  • 筆・筆ペン:4
  • 新ペン:2
  • ガラスペン:1
  • その他ペン*3:7


合計数が83を越えるのは、併用されている方が多いためです。
基本的に手数えでカウントしているため、若干ズレが生じているかも。また分類の際に勘違いしている可能性もあるので、その点ご留意戴ければと。
Gペンと丸ペンの使用率が圧倒的に高いですね。また、Gペンと丸ペンは併用率も高いのが特徴かと思います。髪の毛とか、細やかな描写が必要な際に丸ペンを使用するケースが多いようです。
一昔前だとマンガで使用するペン=カブラペンというイメージもあったように感じますが、現在は用いる方は少なくなっている模様。



【Windows と Mac の比率】

  • Windows:13
  • Mac:13
  • 併用:1
  • 不明・未回答*4:4


使用率は半々といったところ。機種を回答しているケースに関しては、 Mac の名称がないもの(dynabook とか Lenovo とか)は Windows と判断。やはりカウントミスはあるかも。
デザイン関連の仕事をする人は Mac という、漠然としたイメージから考えると少ない気もしますが、それぞれの普及率から考えれば、Mac の割合はかなり高いと言えるのかもしれませんな。


【使用タブレットの比率】

  • BAMBOO(バージョン不明):1
  • intuos 3:4
  • intuos 4:9
  • intuos 5:2
  • intuos(バージョン不明):2
  • cintiq 12WX*5:4
  • cintiq 21UX*6:6
  • cintiq 24HD*7:3
  • 機種不明・未回答:4


intuos と cintiq が人気を二分していますね。
cintiq のほうが、(価格・重量の面から見ても)より専門性が高いといいますか、プロフェッショナル・本格仕様といった印象を受けますかな。
回答に出ている機種はすべて WACOM 製品なので、タブレット市場においては WACOM が圧倒的シェアを占めているのが窺えます。



【デジタル作画における手描き使用率】

  • フルデジタル:13
  • 設定画のみ手描き:1
  • ネームまで手描き*8:5
  • ラフ・線画まで手描き*9:5
  • 人物まで手描き:1
  • ペン入れまで手描き*10:5
  • 背景のみ手描き:1
  • アナログのほうが質感が出る箇所(植物等)のみ手描き:1
  • 仕上げのみデジタル作画を使用:1
  • 未回答:1


デジタル作画を利用している32名のうち、フルデジタルは13名(40.6%)。
アナログ併用の人を除けば21名中13名(61.9%)。
作業効率・環境と作家さんのこだわりのバランスも、それぞれ段階があることが窺えて興味深かったです。




長くなってきたので一区切り。
このアンケート、資料的な価値も高いのではと思いますので、ご興味のある方はご一読をお薦めします。回答者も含めた、マンガ家・イラストレーターさんの作画行程の記事も別にありますので、作画そのものに興味がある方にも参考になる号かもしれませんね。


といったところで、本日はこのあたりにて。

*1:コピックマルチライナーやピグマもこちらに分類。

*2:スプーンペンもこちらに分類。

*3:万年筆、レターペン、製図ペン、サインペン、マジックetc。

*4:CPUやメモリの回答のみのケースや、自作PCのケース。

*5:DTZ-1200W/GOという回答はこちらに分類。

*6:DTK-2100/KOという回答はこちらに分類。

*7:DTK-2400/KOという回答はこちらに分類。

*8:「コンテ」もネームとしてカウント。

*9:「下書き」もラフ・線画としてカウント。

*10:「主線」もペン入れとしてカウント。

6月20日

20日に購入したのはこちら。


イデアの花 2 (花とゆめCOMICS)

イデアの花 2 (花とゆめCOMICS)


イノサン 1 (ヤングジャンプコミックス)

イノサン 1 (ヤングジャンプコミックス)


きのこいぬ 4 (リュウコミックス)

きのこいぬ 4 (リュウコミックス)


以上3冊。
『イノサン』は、『孤高の人』で登山の世界を描いた坂本眞一さんの新作。今度の作品で描くのは、歴史上恐らくは最も有名な処刑人、シャルル-アンリ・サンソン。1巻で描かれるのは、処刑という制度・そしてその役割を担い続けるサンソン家じたいに疑問を抱く、題名が示すとおりの純真無垢な少年・シャルル-アンリが描かれます。
彼が如何にして、フランス革命時に最も恐れられる処刑人となるのか、彼の無垢な心は如何なる彷徨をするのか。歴史物が好きなので、この作品には大きな期待を寄せています。

6月19日

19日に購入したマンガはこちら。


蒼き鋼のアルペジオ 06 (ヤングキングコミックス)

蒼き鋼のアルペジオ 06 (ヤングキングコミックス)



口福三昧(1) (KCデラックス)

口福三昧(1) (KCデラックス)


以上3冊。
『口福三昧』は、ラズウェル細木さんが「おとなの週末」で描いている連載作品、とのこと。さすがに「おとなの週末」まではチェックしていないので、単行本が出て初めて存在を知ったという次第です。
様々な料理の名店を訪れたり、数々の蘊蓄が披露されたり、それの自作を試みたりと、揺るぎないラズウェル節とでも言いましょうか。酒と食事が欲しくなる1冊です。
それにしても、ほんとうに色々な雑誌で連載持っていますね。

6月18日

18日に購入したのはこちら。


モブサイコ100 1 (裏少年サンデーコミックス)

モブサイコ100 1 (裏少年サンデーコミックス)


モブサイコ100 2 (裏少年サンデーコミックス)

モブサイコ100 2 (裏少年サンデーコミックス)


モブサイコ100 3 (裏少年サンデーコミックス)

モブサイコ100 3 (裏少年サンデーコミックス)


以上3冊。
『ワンパンマン』の原作(オリジナル)でも知られるONEさんが「裏サンデー」で連載している作品です。買っていなかったので、新刊発売を機に3冊まとめて購入。
『ワンパンマン』とも共通するところですが、圧倒的過ぎる超人的な力を持ちつつも、思考が超人とはかけ離れているモブ(主人公)のギャップが面白い。そして心理描写の巧みさ。モブと弟・律との心理的なすれ違いも見逃せないですね。そして3巻の引きに痺れました。

6月17日

17日に購入したのはこちら。


きのこいぬ 3 (リュウコミックス)

きのこいぬ 3 (リュウコミックス)



以上2冊。
『バード 雀界天使 VS 天才魔術師』はこの巻にて完結。実は未だに麻雀がよく判らなかったりする訳ですが、この作品でのトリックの応酬は実に刺激的でした。
そしてラスト3ページの衝撃!来たよ、遂に来たよ!と喝采を送らずにはいられないですな。これは続きに期待せざるを得ないです。