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時折マンガの話をします。

『深夜食堂』:どこか懐かしいメニューから始まる悲喜こもごもの物語

久し振りにマンガの感想を。
こちらです。

深夜食堂 1 (ビッグコミックススペシャル)

深夜食堂 1 (ビッグコミックススペシャル)

安倍夜郎さんの初単行本となる『深夜食堂』です。
ビッグコミックオリジナル」の増刊号で連載されていて、最近本誌に移ったんですかね。
何でも長いことCMディレクターか何かをやっておられて、40歳を過ぎてからマンガ家へ転身という非常に珍しい経歴をお持ちのようです。
(情報元:http://www.pmaker.jp/alti014/index.php?action=article&numero=45

これがまたじわりと目に(あと胃にも)くる、実にいい味わいの作品なのです。
では以下に、いつものように概略と感想を書きます。


この話の舞台となるのは、とある場所にある食堂です。
この食堂の営業時間は夜の12時から朝の7時まで。だから「深夜食堂」。
深夜食堂のメニューは、豚汁定食の他にはビール・酒・焼酎だけ。
あとは注文さえすれば、作れるものならばマスターが何でも作ってくれる。

そんな店で、注文されたメニューから始まる、そこに来るお客さんの時に切なく時に温かいエピソードが描かれていく訳です。


この作品に登場する食べ物が、また実にいい味を出しているのですよ。
有名どころの料理マンガだと、贅を凝らした高級食材に加えて手間と技巧を尽したものが登場したりする訳ですが、それとは正反対の方向性。
「赤いウィンナー」とか「きのうのカレー」とかだったりします。
僕は高級な食べ物には縁がなく、繊細な味覚も持ち合わせてはいないので、こういうメニューが出てくるほうが話に親近感を感じることができていいですね。

お客さんも一癖も二癖もある人たちばかりで、そこで色恋沙汰が起こったり親子関係の話が出てきたり、それ以外にもまぁ色々と。
哀しさが込み上げてくるようなお話とか。
かと思えば、ちょっとうらぶれた感のある人たちの、しかし確かに存在するささやかな幸せとか。
実にいい話が、たくさんあるんですよ。


絵柄的には、決して上手とは言い難い。
しかしこの作品に相応しい、独特のクセになる絵柄だと思います。
作中でナポリタンを食べたイタリア人が

美味シクナイケド、癖ニナル味デス。

(103ページ)


と言っていますが、まさしくそういう感じです。
是非とも読んでみて戴きたい一冊ですね。読んでいるうちに、作中に出てくる食べ物を実際に食べたくなりますよ。

僕も今度帰省したら、ポテトサラダを作ってもらおうと思っています。