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時折マンガの話をします。

『キャラ☆メル』5月号のインタビュー記事

買ったのはしばらく前ですが。

キャラ ★ メル 2008年 05月号 [雑誌]

キャラ ★ メル 2008年 05月号 [雑誌]

定期購読している雑誌(情報誌)のひとつです。取り上げる作品が萌え系・ギャルゲー等に特化しているので自分にとってまったくの対象外となる作品も多いですが、インタビュー・対談記事が充実していてなかなか面白い雑誌です。

この雑誌の見どころ(読みどころ?)のひとつが「フジキャラたん(藤島康介のキャラクター探究室)」。
藤島康介さんと言えば説明するまでもなく『ああっ女神さまっ』や『逮捕しちゃうぞ』の作者ですが、この雑誌では注目されている(アニメとかライトノベル関連の)クリエイターの方々への対談を毎号行っています。この雑誌の表紙も藤島さんが描いてますね。

この号での対談相手は支倉凍砂さん。
アニメ化もされた『狼と香辛料』の作者さんですね。

対談を読むと、ひとつの作品を創るのに実に多くの資料収集を行っているのかが判ります。
まさか萌え系中心の雑誌からアウグスティヌス神の国』の名前が出てくるとは思わなかったですよ。
いちばん興味深かったのが以下のくだり。

 (前略)ホロの狼の設定にも元ネタがあって『金枝篇』っていうフレイザー民俗学の本にあのまんまの伝説があるんです。
 たぶん実際に読んでいる人は100人いるかいないかですよ。
 ネットで見ていると、(中略)正解にたどり着いたのは私が見た限りではふたりしかいなかった。
 それを読んでいる人がネットにはちゃんとふたりいるんですね。
 驚きです。母国イギリスでも有名だけど読まれない本の代表みたいな扱いなのに(笑)。

なるほど、確かにアニメ第一話の収穫のくだりは多分に土着的な匂い・民俗学的な風習を感じます。
実際に確かめてみました。

岩波文庫版『金枝篇』3巻の第48章は「動物としての穀物霊」と題されています。
その章は10の項目に分かれていて、2つ目にあるのが「狼または犬としての穀物霊」です。
そこに以下のような文章がありました。

穀物狼」の信仰が特によく行き渡っているメックレンブルクの諸地方では、その中に「狼」が坐っているというので、誰でも最後まで残った穀物を刈ることをおそれる。そこで誰も一番ビリになるまいとして大いに馬力をかけるし、女たちも「その中に狼がいる」ので、最後の刈り束を結わえるのをおそれぬ者はない。

フレイザー金枝篇(三)』243〜244ページ)

最後の穀物の刈り手は、農作物がライ麦である場合には「狼」とか「ライ麦狼」と呼ばれ、メックレンブルクの多くの地方では、他の刈り入れ人に咬みつくまねをしたり、狼のように咆えたりして、その性格を表さなければならない。

(前掲書、244ページ)


確かにそのままですね。(´ω`)
アニメ第一話で、いちばん最後に麦を刈り入れたクロエがホロを真似て吠える描写がありました。

それにしても、元ネタが『金枝篇』とはまったく気が付きませんでした。
持っているにも関わらずです。(´Д`)
民俗学とか多少興味があるので買ったはいいものの、あまりの長さに挫折してしまうのですよ(岩波文庫版で全5巻。それでさえ、原著全13巻を2冊に縮刷したバージョンの翻訳です)。

そういう長大な本とかもしっかりと読んでいるからこそ、作品世界にリアリティが生まれるのかと。
ファンタジー的な世界観であるからこそ、その世界の設定はしっかりと構築する必要がある。藤島康介さんも常日頃からそう仰っているそうで。
自分の頭の中でだけ考えるのには限界があるようにも思いますしね。
また設定がしっかりしていればいるほど、読み応えのある作品が多いように感じます。

狼と香辛料』、アニメ版は通して観ましたけど、話はOPテーマ曲『旅の途中』そのままに途中で終わっています。1クールでは致し方ないところでしょうね。
原作のほうにも手を出してみたいところです。