『サルまん 2.0』の失敗について何か書いてみる
少々話題に乗り遅れてはいますが、5月25日に発売された『IKKI』で、竹熊健太郎さん・相原コージさんの両名による『サルまん 2.0』の連載が中止になりました。
単行本になったらまとめて読むつもりだったのですがその予定はないらしく、取り急ぎ最終回だけでもということで読んでみました。中止した理由(お二方並びに『IKKI』編集長の江上氏との認識のズレ等)が赤裸々に描かれていて、また作中で2人が口論から殴り合い等に発展していく様子など、往年の『サルまん』を彷彿とさせて(僕は)非常に楽しく読むことができました。
(単行本が無理なら、せめて同人誌で出版してくれないかなぁ・・・、と切に願っている次第。)
竹熊健太郎さんご本人のブログでも中止の事情について触れられています。
これについて少々駄文を連ねてみようかと思います。
リンク先の竹熊さんの文章を読むと、メディアミックスに非常に拘っていたことが判ります。
最初の『サルまん』でもある程度触れられていますが、『サルまん』が描かれた時期と『2.0』(つまり現在)とではメディアミックスの状況が格段に変わっています。
マンガがアニメ化され、グッズが作られ、ライトノベルや美少女ゲームに同人誌と実に多岐に亘るジャンルが台頭してそれらのコミカライズやアニメ化も行われ・・・という具合。
オタク状況全般に絡んでくる訳です。
『サルまん』はパロディという構造を持っています。
早い話、『2.0』でやろうとしていたことはオタク状況そのものをパロディの対象にすることと言って差し支えないと思います。
この場合気になるのが、どれだけの読者に受け入れ体制(或いは耐性)があるかということです。
『2.0』は作者・編集側の意思の疎通がうまくいかず、結局メディア展開を行うことなく中止となりました。では意思の統一が図れていた場合はどうでしょう?
例えば以下のような展開ができたと仮定します(あくまでも仮定ですよ)。
- 「サルまん専用ブログ」で『デスの音』の連載を始める
↓
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- 「たけくまメモ」でそれを話題にする(当然真相は伏せて「『デスの音』のアニメが!」みたいなエントリーをアップして盛り上げる)
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- 「専用ブログ」で「ちゃんとした声優を当てて長編をつくろう」みたいな呼びかけをして、公開オーディションも行い実際に長編(60分くらい)を制作・販売。その間も『デスの音』の連載は続けていく。次第に盛り上がりを見せていく。
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- 同人誌も出回り始める(これも少なくとも最初のほうは仕込みあり)。『デスの音』18禁のみならず竹熊×相原(或いは相原×竹熊)みたいなBLまで出てくる。それらも「たけくまメモ」で取り上げる。正式にメーカーからグッズも出て、コミケの時期に合わせて大盛り上がり。
↓
- 『2.0』でネタばらし。高らかに笑う竹熊・相原両氏。
青写真としては案外これに近いものだったのではないかと思うのですが、こういう流れになったと仮定して、買った側の人間のどのくらいが「パロディ」と看做すのかな、と。
壮大なネタとして笑ってくれる人よりも、ペテンだ騙されたと騒ぎ立てる人のほうが遥かに多いのではないかと懸念する訳です。
そこには「萌え」も絡んでくる。
「萌えアニメを作る」ということは、当然それらを好む年齢層をターゲットにしていると考えて差し支えないと思います。世代分類すると第三世代オタクがメインでしょうか。
その世代は「萌えた自分を疑いなく肯定する世代」ではないか(少なくともそれに近い感性を持っているのではないか)と思うのですよ。
このあたりは、岡田斗司夫さんの『オタクはすでに死んでいる』が参考になるのではないかと思います(ネットでの評判は散々ですが、論旨じたいは間違っていないと思っています。)
「萌えた自分を否定された!」「作者に騙された!」的な反応をしてしまう可能性が高い気がするのですよね。「ネタとして楽しむ」という感性をあまり持っていない・訓練されていないのではないかと考える次第です。
でもこれ、うまくいけばそれこそTV放映時の『エヴァ』に近いことになっていた可能性もあるかなぁ・・・。
他にもいろいろと考えることはありますが、非常に長くなったのでこのあたりにて。
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