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時折マンガの話をします。

少女とトラウマ、悪役と浄化作用

先日、遠藤達哉さんの短編集『四方遊戯』と「ジャンプスクエア」で連載していた『TISTA』の完結巻を購入しました。


左が『TISTA』、右が『四方遊戯』です。どちらも非常に完成度が高く、実に愉しませて戴きました。
今日はこの2作品の感想を書き連ねてみようかと思います。
因みに細部は書きませんが全体的な話の構造の話をしてしまうので、ネタバレしつつも抽象的な文章になります。先を読み進める際はご注意を。


まずは『四方遊戯』から。
タイトルからも察しが付くように、4つの短編が収録されています。『西部遊戯』『月華美刃』『WITCH CRAZE』『PMG-0』の4編。「赤マルジャンプ」か何かに掲載されたようですね。(追記:『西部遊戯』以外は「ジャンプ」のようですね。)*1



『西部遊戯』は、凶悪犯罪に対して懸賞金制度を復活させ、国で賞金稼ぎを養成している世界が舞台となっています。
月華美刃』は『竹取物語』をベースにした、SF的な要素を併せ持つお話です。
『WITCH CRAZE』は、魔女とその血を狙うハンター(魔女狩り)を題材にした話。
『PMG-0』は凶悪犯罪に対して結成された「銃士隊」に所属する少女を主役にした話です。


これらの物語の主役は、全員(美)少女です。*2
そして彼女たちは例外なく、トラウマ或いは重い過去を持っている。
そしてその過去に屈するのではなく、それに真正面から向き合って立ち向かっているのが特徴と言って構わないと思います。後の生き方の、価値基準となっている。
何れのヒロインも強いのです。それが大きな魅力のひとつだと思います。


遠藤達哉さんの描く物語にはもうひとつ大きな特徴があります。
悪役を描くのが実に巧い。
どこまでも利己的な、読んでいて不快感を感じさせるほどの悪役を描くのですよ。例を挙げると、



(27ページ)


『西部遊戯』に出てくる保安官の息子キール・グラントや、



(174ページ)


『PMG-0』に登場する犯罪集団のリーダー、ジョルジュ・フェブルとかですね。
実に憎たらしい表情をしていますよね。(´ω`)


悪役たちの自己中心的な行動は、次々に周囲に被害を及ぼしていきます。
そしてそれは言うまでもなく、ヒロインの価値観とも正反対なものです。
必然的に両者は対峙することになる。そこで展開されるアクションもまた、これらの作品が持つ大きな魅力でもあります。非常にスピード感のある、流麗な描写なのですよ。作者の力量を感じさせます。


横暴の限りを尽くした悪役が、ヒロインに完膚なきまでに叩きのめされる。
その瞬間、実に爽快な気分に浸れる訳です。
読後感が非常にいい短編集です。読んで損はないと思いますよ。


『TISTA』では基本的には同じ構造ながら、幾つかの点において深化があると思います。
それについては次の記事にて。

*1:初出はちゃんと単行本にも書いて欲しいなぁ。

*2:『WICTH CRAZE』は正確には違いますが、少なくとも容姿は。(´ω`)