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時折マンガの話をします。

キリスト教原理主義マンガの世界

何日か前にブックマークした記事です。


非常に興味深い内容ですが、ちょっと読みづらい印象がありましたので、少々手直ししたうえで転載してみます。

幾分古いデータのようなので、続刊に加えて文庫版・完全版等が多く出版されている現在とは幾分順位が異なるかと思いますが、極端な変動はないかと思います。
『静かなるドン』の大健闘とかについても触れたいところですが、今回取り上げるのは太字にもした33番目の『これがあなたの生涯でした!』です。


このランキングだと多くが日本のマンガで占められていますが、上位に来ている海外のマンガになると、実際に読んだかどうかはともかく名前くらいは知っているような作品が多いと思います。映画化している作品もありますしね。
しかし33位というかなり高い順位でありながら、この作品と作者のジャック・チックという方については(少なくとも日本では)知らない人もけっこう多いのではないかと思います。


ジャック・チック氏は、ガチガチのキリスト教原理主義者です。
つまり聖書に記されていることのみを信仰し、それ以外の教義を認めないという立場ですね。*2
例えキリスト教であっても、聖書の拡大解釈とかは認めないようです。つまり判りやすく言えば、


「聖書に輸血を禁じる記述などないだろうが、アホか!」
「聖書にコーヒーや紅茶の飲むことを罪悪とする記述などないだろうが、アホか!」
「進化論?聖書には神が7日で創ったと書いてあるだろうが、アホか!」


ということでありましょう。エホバの証人モルモン教は無論のこと、進化論に一定の理解を示しているローマ・カトリックに対しても徹底した批判を行っているようです。
ジャック・チック氏は自らの信仰を広めるために、その信仰に基づいた物語を小冊子にして配布しているのです。そのために自ら出版社まで興しているのですよね。出版社のサイトはこちらになります。

  • CHICK PUBLICATIONS(英語サイト)
    (実に本格的なサイトです。トップに掲載されている信者の方々の笑顔が何とも目に残ります。)


この小冊子、世界100カ国以上に翻訳がされているらしく、当然日本版も存在します。僕は実物を目にしたことはないのですけど、街角で配布していたり郵便受に投函されていたりもするようです。
その小冊子をチック・トラクトと言い、百数十種類存在します。そしてチック・トラクトで最も有名なものが『これがあなたの生涯でした!』になる訳です。


内容を簡単に言うと、享楽的な生活を送ってきた人物が死後神の裁きを受けて永遠の刑罰を受けるというものです。その描写が為されたあと、神を信仰しつつ日々善行を積めば死後神の御元に行けますよ、ということが語られます。
実に単純明快なストーリー展開と言えますね。


そしてチック・トラクトの特徴として(ガチガチの原理主義以外で)挙げられるものは、異様なインパクトを持つ絵柄です。判りやすい例を挙げてみます。



真ん中に描かれているのは背徳の街、ソドムを描写したものです。
如何でしょう?(^ω^)
因みに写真は、チック・トラクトの紹介をした同人誌『ジャック・チックの妖しい世界』です。唐沢俊一さんが出したものですね。*3
この同人誌では『これがあなたの生涯でした!』を含む幾つかの代表作を紹介しています。何れも強烈な印象を残すものなので、ご興味のある方は一読してみるのもいいかもしれません。


そして注目すべきは、この作品が6000万部以上発行されているという点ですね。
かなり大きな支持を得ているということです。原理主義というのは決してマイナーな存在ではないというのが判りますね。そういえばつい最近、こういう記事もありました。


異文化を知るきっかけとして、こういうマンガを読んでみるのもいいかもしれませんね。
ということで、今日はこのあたりにて。

*1:調べてみたところ、古典文学をマンガ化したシリーズのようです。シリーズ累計での売上ということですね。それにしても10億は凄い。

*2:正確に言えばいろいろと違うのでしょうが、僕は専門家ではないのでご容赦願います。

*3:ネット上での唐沢さんの評判は実によろしくないようですがね・・・。例の盗作問題についてはさすがに問題ありですが、『B級学』とかは個人的に非常に影響を受けた本であると同時に復刻の分野で恩恵を与っているので絶対に全否定はできないんですよね。