マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

コミティア88同人誌紹介・その2(評論編・前編)

さて引き続きコミティアで入手した同人誌の紹介を。
今回は評論本・研究本を取り上げます。


  • 『ぶっとびマンガ大作戦 vol.12』(サークル:WAIWAIスタジオ)


新田五郎さんによる同人誌です。ぶっとんだマンガを語る技量において、新田五郎さんの右に出る方は恐らく存在しません。ご本人のサイトやブログで確認して戴ければと思います。


サイト:ふぬけ共和国・マンガ
ブログ:ふぬけ共和国ブログ


今回購入した同人誌でも、麻雀が禁止されたことが原因で日本が大混乱に陥る『麻雀戒厳令とか、『実験人形ダミー・オスカー』でもお馴染みの小池一夫叶精作コンビによる何だかよく判らない時代劇『凶刃者 ブレイダー』とか、とにかくけったいな作品が達意の語り口で紹介されています。(『麻雀戒厳令』については、近代麻雀漫画生活のいのけんさんの意見も聞いてみたいところです。やっぱり麻雀マンガ好きには有名だったりするのでしょうか?)


とは言えこの同人誌の白眉は「マジメコーナー(笑わせる原稿ではありません)」と題された、石森章太郎*1先生の『マンガ家入門』についての一連の記事。
様々なバージョンが存在する『マンガ家入門』*2をそれぞれ詳細に読み解き、これらの作品の意義を明らかにすると共に、基本的に同じ内容である『入門』の相違点・変更点についても言及をしています。テキスト考証としても実に素晴らしい内容となっている。


最近は文庫版・新装版・完全版といった具合に様々なバージョンが出版されますし、作家さんによってはその都度修正を加えたりもします。どのバージョンで読んだかによって、印象がかなり異なってしまう可能性も充分に有り得る筈。
こういうテキスト考証は絶対に重要な行為だと思うのです。しかし実際にそういうことがしっかり為されているかというと些か疑問符が付きます。『手塚治虫の奇妙な資料』くらいでしょうか。


手塚治虫の奇妙な資料

手塚治虫の奇妙な資料


ちょっと堅苦しいことを書いてしまいましたが、これはお薦めです。
それでは次の同人誌に移ります。



  • 『漫画で何がわかるの? 〜学習漫画の本〜』(サークル:くま温泉)


くま温泉さんのブログはこちら:黒熊のよちよち無料相談質屋


マンガレビューの未踏区域と言えるのが、実話系とペット系のマンガ、そして学習マンガではないかと思います。
僕の知る限りでは、漫棚通信ブログ版さんとかが時々紹介するくらいでしょうか。


この同人誌は、そんな学習マンガの紹介・解説を行っています。
そして取り扱っているマンガの量が尋常ではありません。
金融や統計学からへそくりの極意に至るまで、ジャンルの広さにも圧倒されます。
個人的には、岐阜県山岡町の主要産業である寒天について」紹介した『寒天娘 寒天のすべてがわかるコミック』や、『WILD HALF』の作者・浅見裕子さんが作画を担当した『マンガ川越の歴史』を凄く読んでみたいです。


後半の書誌データも含め、大変な労作です。



・・・と、思ったより文章量が多くなったので、「評論編」は2つに分けることにします。
後編は早ければ今日中にでも。

*1:後に石ノ森章太郎に改名。

*2:最初に出た『少年のための マンガ家入門』、『続・マンガ家入門』、それを合本にした『石ノ森章太郎のマンガ家入門』、合本の文庫版。