マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

コミティア88同人誌紹介・その3(評論編・後編)

それではコミティアで購入した同人誌の紹介を続けます。
今回取り上げるのは、随分前から知られていたもののようやく購入した作品です。



著者である久我真樹さんのサイト・ブログはこちらです。

サイト:SPQR
ブログ:ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん


ネット上で話題になったことは知っていますが、実際に手に取ると改めて凄さが判りますね。
メイドさんの分類から、仕事の説明、給与体系、衣食住、文学作品やドラマ等に登場したメイドさんの紹介に至るまで、精緻を極めた解説が為されています。研究というのはこのレベルを指すのだな・・・と、ただ唖然とするばかりです。
英文原著も含めた膨大な資料に基づく、570ページに及ぶ記述。「二〇〇八年夏に刊行される時点で、日本で最も詳しく総合的に使用人を解説している資料本だと自負しております」(10ページ)との言葉に、異論を挟む余地はないです。


そして第八章『特別寄稿「メイドさんの十年」』に収録されている、メイド本サークルの先駆*1「制服学部メイドさん学科」主宰・阿羅本景氏の文章は必読。
今から10年くらい前には殆ど誰も顧みることがなかった「メイド」というジャンルをいち早く研究し、道を拓きながらも、その後のブーム・展開に違和感を抱き一線から退いた経緯を綴り、そして現在なお研究を続けるサークルの方々へのエールで締めくくっています。
切なさ・寂しさに満ちていながらも快い読後感を残す文章です。



  • 『書体の研究』vol.1〜vol.3(サークル:ゆず屋)


ゆず屋さんのブログはこちら:ゆず屋


マンガとかで作品特有の世界観・雰囲気を作り出す際、文字そのものが少なからずその役割を担っている。
そんなことを何年か前から考えつつ幾つか資料になりそうなマンガを集めたりもしていますが、本格的に調べようとするとデザインの分野や印刷技術の歴史とかにも踏み込む必要があります。時間や財政上の問題もありなかなかそこまで手が出せず、文字に関してあれこれ考えるのは放置したままになっています。*2


それだけに、こういう同人誌を出してくださると非常に嬉しいですね。
この3冊では主に、有名なマンガ・アニメ・ライトノベル等のタイトルロゴに着目し、使われているフォントの解説をすると共に、異なるフォントを用いた場合どのようになるか比較を行ったりしています。また、僕自身には縁が遠い話ですが、実際に同人誌とかを作る人たち向けの「フォントの買い方」特集を組んだりもしています。実用性も高い一冊だと思います。


この本を読むと、これまで軽く読み飛ばしてきた・或いは一瞥するだけだった(かもしれない)表紙がまったく違ったものに見えてきます。お薦めですよ。


・・・と、このあたりで区切りとしておきます。
まだ幾つか購入したものはありますが、まだ読み込めていないので。
さて次は文学フリマの戦利品紹介ですが、いつになるかは未定です。

*1:こちらは未読。

*2:折を見て小ネタをアップしてみようかな、とも思ってはいます。