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時折マンガの話をします。

「ゼロ年代的なマンガ」は何故少ないのか、あれこれと考えてみる

オタク関連の評論・批評の分野で、近頃「ゼロ年代」という言葉を度々目にする気がします。
試しに Google で「ゼロ年代」とだけ入れて検索をかけてみたところ、1070万件ほどヒットしました。


ただ正直なところ、僕には「ゼロ年代」という言葉がいまいちピンとこない。
自分がオッサンだからということもありますし、どうもゼロ年代云々を語る書籍とかサイト・ブログは少々小難しい印象(或いは偏見)がありまして、ある程度距離を置いているのも原因のひとつです。


そして何より、「ゼロ年代」の語りでマンガが俎上に上がることが少ないのです。


俎上に上がるのは主にアニメとライトノベル、あとはギャルゲーです。
実際にはマンガでもあるのかもしれませんが、少なくとも上記3つに比べるとかなり割合は低いと思う。


これには幾つか要因があると考えられます。
幾つか思い付いた仮説を挙げてみましょう。



【連載の長期化に伴う諸問題】


早い話が、連載が長くなって「年代」で括るのが難しいということです。


ONE PIECE』は何年代のマンガなのか?
ジョジョの奇妙な冒険』は?
ああっ女神さまっ』は?
『静かなるドン』は?
なんと孫六』は?
こちら葛飾区亀有公園前派出所』は?
ヒゲとボイン』は?


些か極端な例で、尚且つ幾つか何か間違った方向性の作品を挙げてしまった気もしますが、何れの作品も連載中です。そして連載が始まったのが70年代〜90年代。また連載中に作風が変わったり、時代風潮の影響を受けたりということもあるでしょうから、一概に年代で語るのが難しいジャンルではないかと思う訳です。
とりわけ、連載の長期化が顕著になった90年代以降は、少なくともマンガにおいては年代語りは難しくなっている気がします。


また連載の長期化は、1人のマンガ家さんが描く「作品数」が減るということでもあります。
連載作品にかかりっきりになってしまいますからね。余程筆が速くない限り、複数の作品を同時に発表するのは難しい。習慣連載を持っているなら尚更です。
短篇や読切を描く機会が少なくなるということでもあります。また、それを発表する場も少なくなっている感が強い。


他ジャンルをマンガの状況と比べてみましょう。
ライトノベルは比較的新しいジャンルであるために長期化の影響がまだ少ない、またシリーズものであっても1冊単位で話がまとまっている場合が多く、批評の対象にしやすいというのはあるのではないかと。
アニメはクールごとに製作されるのが基本です。一部の例外を除き、アニメは13話前後或いは26話前後と決まっているのです。
ゲームに関しても作品ごとの評価です。また極端な例えになりますが、『ドラゴンクエスト』を20年以上続いている「ひとつの」作品として評価することはまずないだろうということです。


連載という形式が、年代での括りを難しくしている。
案外「ゼロ年代的」な作品が出やすいのは、読切が主体のジャンル、具体的にはエロマンガやBLとかかもしれませんね。



【ジャンルの広さ】


上記3つのジャンルには、共通項があるように思います。


10〜20代男性をメインターゲットに据えているという点ですね。


その層に狙い撃ちで作品が提供されている訳です。
そしてそのごく限られた層に、ピンポイントで大量投下されるが故に拾われやすい。つまり語りの俎上に乗りやすいということです。また、そのような「年代語り」をしたいという欲求を持っているのがほぼ同じ層なのではないかと(少し年代は上がるか?)。


それに比べてマンガはどうか。
言うまでもなく、無闇にジャンルが広いのです。


少年向、青年向、中高年・オヤジ向、少女向、レディコミ、オタク向、18禁、BL、ねこ、実話系、ギャンブルもの、etc。
恐らく「ゼロ年代的」なものが多く存在するであろうジャンルはオタク向(角川とかアスキー・メディアワークスとか)だとは思うのですが、それはマンガの1ジャンルでしかない。


ライトノベル等に比べて見つけづらく、埋もれやすい。
それが「ゼロ年代的なマンガ」について語られることが少ない理由(のひとつ)なのかなと思ったりしている今日この頃です。



とは言え、やはり「ゼロ年代」を思わせる作品はあるだろう。
と思ってリストアップしてみようと考えていたのですが、少々疲れたので後日余裕があれば挙げてみようかと思います。