マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

独断と偏見に基づく、漫画文庫発刊の出版社別傾向(その3)

の続きになります。
今回は、マンガとの関連性が薄そうな出版社についてです。相変わらず長文になりそうなので、3つに絞って書きます。



筑摩書房


筑摩書房マンガ雑誌は持っていない筈ですが、時折マンガの作家全集とかを出したりします。
漫画評論家で明治大学准教授でもある藤本由香里さんは、元々は筑摩書房の編集者でもあります。それも関係しているのかもしれません。


そしてちくま文庫でも、マンガを出しています。
これがまた良い作品が多い。


ゲゲゲの鬼太郎 (1) (ちくま文庫)

ゲゲゲの鬼太郎 (1) (ちくま文庫)

劇画ヒットラー (ちくま文庫)

劇画ヒットラー (ちくま文庫)


水木しげるセンセイの作品も多数出してますし、


説経小栗判官 (ちくま文庫)

説経小栗判官 (ちくま文庫)


近藤ようこさんの文庫描き下ろしマンガとかもあったりします。
藤本由香里さんとの評論家繋がり、なのかどうかは判りませんが、夏目房之介さんのマンガ(且つ評論)もありますね。



あと最近だと、「つげ義春コレクション」の刊行もありました。


つげ義春コレクション ねじ式/夜が掴む (ちくま文庫)

つげ義春コレクション ねじ式/夜が掴む (ちくま文庫)


因みにこの「つげ義春コレクション」についての扱いはちょっと独特なようです。
背表紙の色が他とは違うのですね。


ちくま文庫は、背表紙の色でおおまかにジャンルが判ります。
白だと学問的な内容(ちくま学芸文庫)、青だと数学関係、淡い肌色(クリーム色?)だとエッセイ・ノンフィクション関係、濃い肌色(茶色?)だと文学、そして灰色がマンガです。*1


つげ義春コレクション」の背表紙は濃い肌色なんですね。
つまり文学作品的な位置付けをされている、ということです。


と、この位置付けじたいにも多少疑問符はありますが、それはまた別の問題でしょう。
他に特徴としては、ちくま文庫はカバーに加工をしていないので、汚れが染み付いてしまったり傷みが出やすかったりという点があります。コレクター泣かせの文庫だなと思う次第です。



文藝春秋


文春文庫というとどうしても司馬遼太郎池波正太郎の時代小説というイメージがありますが、「文春文庫ビジュアル版」として幾つかマンガも出しています。
最も馴染み深いのはこれでしょうか。


新装版 アドルフに告ぐ (1) (文春文庫)

新装版 アドルフに告ぐ (1) (文春文庫)


これは『アドルフに告ぐ』が週刊文春に連載されていたことを考えれば至極当然と言えますが、それにしても手塚先生、どれだけ貪欲に仕事をしているのだという話です。これだけ色々な出版社から作品が出ている人はそうそういないと思います。


あとは山岸凉子さんの短編集とか、東海林さだおさんの『漫画文学全集』も出ていますね。


天人唐草―自選作品集 (文春文庫―ビジュアル版)

天人唐草―自選作品集 (文春文庫―ビジュアル版)


あと文春文庫ビジュアル版の特徴として、ちょっと厚手の、上質な紙を使っていることがあると思います。
内容的に、対象年齢も多少高めでしょうか。



岩波書店


岩波文庫はないだろう!と言われそうですが、見方次第によってはそうとも限らない。
明治・大正期の諷刺画・漫画セレクションを出しているのです。


近代日本漫画百選 (岩波文庫)

近代日本漫画百選 (岩波文庫)

岡本一平漫画漫文集 (岩波文庫)

岡本一平漫画漫文集 (岩波文庫)


まぁ今で言う「マンガ」とは随分趣が異なるのですが、読んでみるとなかなかに味わいがあります。
当時の世相・風俗理解にも繋がるのではないかと思ったりもします。マンガの歴史的な流れを知るうえでも避けては通れないのではないかという気もしますね。


上の2作の編集を担当した清水勲さんは、近代諷刺画研究の分野では第一人者とも言うべき方です。
最近も、『四コマ漫画』という本を出していますね。


四コマ漫画―北斎から「萌え」まで (岩波新書)

四コマ漫画―北斎から「萌え」まで (岩波新書)

(積み本が多いのでまだ手を出していないものの、近いうちに購入予定。)



さて、このくらいにしておきましょうか。
本来はある同人誌の感想を書くための前フリだったのが、予想外の長文になってしまいました。
次の記事でその感想を書こうかと。・・・3日後かな?

*1:ただこの色分けが明確になったのは恐らく1995年前後。僕が持っている水木センセイの『縄文少年ヨギ』(1992年発刊)の背表紙は淡い肌色です。