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『惑星のさみだれ』9巻「最後の戦い・4」を読み解く

昨日、『惑星のさみだれ』9巻を購入しました。


惑星のさみだれ 9 (ヤングキングコミックス)

惑星のさみだれ 9 (ヤングキングコミックス)


超巨大泥人形「ビスケットハンマー」を用いて地球破壊を目論む魔法使い・アニムスと、それに対抗する姫・朝日奈さみだれ*1と騎士たち*2の戦いもまさに最終局面へと入っています。
9巻132〜136ページの、ビスケットハンマーとの戦いの結末など、鳥肌ものでした。


とは言え今回取り上げるのは別の箇所です。
タイトルにも挙げた、「最後の戦い・4」になります。
以下、かなりネタバレ的説明や画像の使用が多くなるので、未読の方はご注意ください。記事も収納しておきます。








ビスケットハンマーと対峙するため、さみだれと夕日、そしてさみだれを「姫」に選んだ精霊・アニマの3人は宇宙空間へと赴くことになります。夕日以外の騎士8人は地上に残っており、ハンマー破壊後も地球を滅ぼすことを止めようとしないアニムスと戦いを続けることになります。


その戦いの描写を見て、少し思うところがあった訳です。
あくまで自分が読んだ限りで、ですが、この戦闘は周到に考え抜かれたうえで描かれているように思います。
誰がどの場所にいるか、どのような行動をするか、といったことですね。この作品では既に何名かが命を落としているのですが、これ以上誰の命も失うことなくあの結末に向かうためには、これ以外の描写はないのではと感じます。



「あの結末」というのはこちらになります。



水上悟志惑星のさみだれ』9巻196〜197ページ。)


まさしく結末箇所でタイトルを出すという演出がまた心憎いですね。
そしてアニマがアニムスを刺し貫いた槍と、槍に絡み付いている鎖とマントは、ブルースドライブモンスター*3内部で夕日が拾い上げた、夕日自身の心が結晶化したものです。

そうだな 恋がしたい


こいー?


ああ
私にも本気の戦意が必要だ
己が片割れを殺そうとしているのだから


アニムスのハンマーを見て なお希望を持てる者達がいて
私が生きて欲しいと思う男がいて


・・・そしたら終わりにしよう


(同書61〜62ページ。)


という、夢の中でのアニマと幼少期さみだれのやりとりを踏まえると、より感慨深いものとなりますね。


で、この結末に至るにはアニマス無防備な状態で空中に投げ出されている必要があります。
如何にしてその状態に至ったかと言えば、南雲さんによる一撃です。
その一撃を放つ直前の描写がまた身震いしますね。



(同書192〜193ページ。)


決して南雲さんを背中に乗せようとしなかったダンス(馬の名前です)が、遂に彼を背に乗せた瞬間です。
これまで半ば掛け合い漫才の如く、乗せろ断ると言い続けてきた2人(1人と1頭ですか)が描かれ続けてきた訳ですが、ここで遂にその伏線が回収されるのですよ。痺れてしまいますね。


で、南雲さんとダンスがいる場所ですが、これは風巻が造り出した13体目の泥人形、「未来(ツークンフト)」の左腕です。
巨大な風巻の姿をしています。そしてその左腕(正確に書けば左腕が作られる場所)に最も近いところにいるのが南雲さんです。
そういう箇所も抜かりなく描かれているのです。



(同書187ページ。)


非常に小さく描かれているうえにこの画像では判別困難かもしれませんが、*4いちばん右側に描かれています。
因みに最も手前にいるのがアニムス、やや右前方にいるのが三日月・太陽・花子、最も左側にいるのが昴と雪待、風巻型泥人形の右腕を挟んで風巻本人、風巻と南雲の間にいるのが白道さんです。


その次の2ページで描かれる攻防の密度が凄い。
アニムスは渾身の一撃を、恐らく全員にとって致命傷になるであろう一振りを放ちます。
その瞬間、花子は「勇者の剣」を放つことでアニムスの右腕を断ち切り、その威力を減じさせます。最も至近距離にいる三日月は太陽と花子を身を挺して守り、昴と雪待は「無敵の盾」を三日月たちに使います。そして風巻は泥人形の右腕で壁を作り、手前の3人以外を守ります。
そして恐らくそれと同時に左腕を造り出し、アニムスの攻撃を凌いだと同時にその左腕で攻撃を行います。それに合わせるかたちで南雲さんとダンスは左腕へと移動しているのです。


誰に指示されるでもなく、当り前のように互いを助け合うことで、アニムスの攻撃を防ぎ抜く。
騎士たちの見事な連携が、ここに描かれています。


さてここで重要なのは、南雲さんは最初別の場所にいるという点です。



(同書171ページ。)


アニムスが本気を出し、禍々しいオーラを身にまといつつ攻撃に移ろうとしている場面ですが、南雲さんはアニムスの真正面にいますね。そして風巻が右、白道さんが左にいます。
アニムスの最後の攻撃の時とでは、白道さんと場所が入れ替わっていますね。そして左側にいないと、最後の一撃を入れることも難しくなる。
それに対する答え(?)も、しっかりと描かれています。上の画像の直後、アニムスは広範囲攻撃を行い、戦場全体が砂煙に覆われます。そして、



(同書174ページ。)


砂煙にまぎれて、アニムスが南雲さんに襲いかかってくるのですね。
そしてそれは左前方からです。そしてその攻撃に対し、南雲さんは後ろに避けることなく、逆にアニムスに飛び蹴りを喰らわせます。つまり、左側に大きく移動することになる訳です。
そして直後に白道さんが煙を吹き飛ばすと、



(同書176ページ。)


この場所に移動しているという訳です。
これで、その後の攻防〜結末に至るまでのお膳立てが整ったという訳ですね。
僕は最初に「周到に考え抜かれたうえで描かれている」ように思う、と書きましたが、そう思った訳がある程度お判り戴けたのではないかと。


時系列を遡るような書き方で大層判りづらい内容だったかと思いますが、アニマとアニムスも時間を遡りながら戦いを続けていたということでご容赦戴ければと思います。



感想なのかどうかもよく判らないものとなってしまいましたが、今回はこのあたりにて。
次が最終巻とのこと。期待を胸を焦がしつつ待つことにします。

*1:実は自分の手で地球を破壊したいと考えています。

*2:さみだれの思惑を知っているのは、物語開始時点では主役の雨宮夕日のみ。

*3:ビスケットハンマー対抗兵器としてアニマが造り上げたものです。

*4:スキャンではなく写真撮って上げているので、どうしてもページのノド部分は見づらくなってしまいます。ご容赦のほどを。