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時折マンガの話をします。

『放課後プレイ2』を読んでみた

今日書店を散策したところ、黒咲練導さんの『放課後プレイ2』が発売されていました。



早速読んでみたので、感想っぽい駄文をしたためてみようかと思います。


まずは前作も含めて、概略のようなものを。
放課後プレイ』ならびに『放課後プレイ2』は「電撃PlayStation」別冊付録の「電撃4コマ」に掲載された作品です。
何でも単行本になる以前から「電撃4コマ」を読んでいる方たちには話題になっていたようで、前作は単行本になると同時に書店から一斉に消えてしまうような事態になり、ネット上でもけっこうな話題になったことを憶えている方も少なくないかと思います。



内容はと言いますと、表紙になっている女の子がヒロインで、その女の子と付き合っている少年が何かゲームをしながら延々と喋っている、といったところです。
話題になった理由としては、まぁ何と言いますか、読者の妄想力を著しく喚起させる各種表現とでも言いましょうか。直接的ではない(むしろそれ故の、と言うべきでしょうか)濃密なエロスが満ち溢れていたと思います。
そういえば前作のときも、こんな記事を書いていました。


で、今回の『放課後プレイ2』です。
『2』は前作と幾分趣を異にしているという印象を受けました。前作が外側の描写を濃密に描いているとしたら、『2』では内面を濃密に描いているように感じます。本の帯に



「いやいや今回はただの自己嫌悪ですから」*1と書かれているのは、それを韜晦したものと言えると思います。


『2』も基本的なフォーマットは前作を踏襲しています。
表紙のメガネの女の子がヒロインで、やはり少年と部室*2で喋っているというかたちです。
前作に比べ、ゲームの話は濃いめになっている気もしますね。第3話の「魔法・呪文の古今東西」を延々と続ける場面を始め、伏字の箇所が多数あるんですが、自分がここ10年近くゲームから離れ気味なせいもあってか、判らないものも少なからずありました。


さて、フォーマットは同じなのですが、主役となる2人の関係には差異があります。
前作では最初から付き合っている状態でしたが、『2』ではそうじゃないんですね。
ヒロインの女の子、単行本の表紙では判らないのですが、そばかすが特徴となっています。



黒咲練導放課後プレイ2』9ページ。)


で、そのそばかすを含め、自分の容貌・身体に強い劣等感を抱いているのです。
それも影響しているのでしょうか、幽霊部員ばかりの漫研で黙々とマンガを描く日々を送っている訳です。



(同書4ページ。)


そしてこのコマの左側にいるのが『2』のもうひとりの主役となります。
この少年が漫研に入部してきて、それ以降この2人が会話を続けることになる訳ですね。つまりヒロインは先輩に当たります。
因みに右側にいるのは前作の少年。友人という設定で、最初の「アペンド版」にのみ登場します。


そしてこの2人、お互いに好意は持っている訳です。
それで少年のほうは、遠回しではありながらアプローチを掛けてくるのですよ。ゲームの話を振ったりしてくるのもその一貫なのですね。しかし先に述べたように、ヒロインの女の子は強い劣等感を抱いている訳でして、もう一歩を踏み出すことができないのです。それでいながらも、別の女の子と電話をしている様子に心穏やかにはいられずにいたり。


第8話では、そのような複雑に絡み合った心情を、全編台詞なしで描くんですよ。
ずっとマンガを描き続けている描写が延々と続くんですが、仕草とかだけでその焦燥感を表現するのです。『放課後プレイ2』の白眉とも言える1話だと思います。


さてこの2人のぎこちない恋模様、どうなるのかは是非とも現物を見てお確かめください。
という訳で今回はこのあたりにて。

*1:「自己嫌悪」には「せつなさみだれうち」とルビが振られています。そして裏表紙には本の帯を題材にした4コマも掲載。4コマ目が帯で隠れているのがポイントです。

*2:前作では少年の家がメインでしたか。