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時折マンガの話をします。

水木しげる『[怪異 貸本・短編名作選] 墓の町』


貸本時代や、週刊誌とかに移った時期に描かれた膨大な短編の中から、「怪異」というテーマに添って集めた作品集です。
やはり水木センセイの作品は面白いですね。


表題作『墓の町』での「入れ替わり」という題材や、『地獄の水』における「意思を持った水が人を襲い始める」というストーリーは、他の短編・長編でも複数回にわたって描いています。言わば自覚的に再生産を行っている訳ですが、同じ題材を用いても作品ごとに違った味わいを見せるのが水木センセイの魅力(の、少なくとも一つ)と言える気がします。


個人的なお気に入りは長編『化烏』。
ムー大陸に題材を求めつつ、独自の世界観が展開しています。主要登場人物の福田博士と助手の清水が漂着した島に群生する、キノコの造型が秀逸です。
また、「形がある音楽」というアイデアも見事ですね。是非とも実際に確かめて戴きたいところです。この作品以前で同じアイデアを用いているのは『虎よ!虎よ!』くらいですかな?