マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

エロマンガ家の生の声と、エロマンガ市場の最前線。『エロマンガノゲンバ vol.3』

コミケで入手した同人誌の紹介を続けます。
評論同人誌ではありますが18禁なので、以下の文章は収納しておきます。18歳未満の方はご遠慮くださいな。










今回ご紹介するのはこちらです。



エロマンガノゲンバ vol.3』(サークル:フラクタル次元)


えろまんがけんきゅう管理人、稀見理都さんのサークルです。
エロマンガ家さんへのインタビューを核とするこのシリーズも3冊目となります。
vol.1 の感想も書いたことがありますので、よろしければそちらもご参照戴ければと。


今回の vol.3 では、以下の方々のインタビューが収録されています。
作者さんのブログや twitter も併せて載せておきます。


毎回感じることですが、凄い顔触れです。
にったじゅん先生に関してはメディア露出が殆ど存在せず、秘密のヴェールに覆われているという印象です。それだけにこのインタビューは貴重な証言になっていると思いますよ。
因みにこれらインタビューに関しては、「えろまんがけんきゅう」でも公開されています。


公開されているなら買う必要はないのでは・・・とか考えたならそれは大間違いというものです。サイトで公開されているインタビューには未収録の箇所も少なからず存在している訳でして、それらを大幅に追加した「完全版」が、『エロマンガノゲンバ』に収録されているのです。*1


さてそのインタビューの内容なのですが、エロマンガを描くきっかけ、デビューに至る経緯、影響を受けた作家や趣味について、作者さんにとって重要な位置付けを持つ作品について、*2作品の制作過程について等、詳細に聞き出され、また作者さんも饒舌に語っていきます。「作者さんも饒舌に」というのがキモですね。
これは理想的なインタビューのかたちと言っていいのではないかと思います。TVのインタビューとかで聞く側が「始めから結論ありき」のインタビューで云々という話を度々見掛けたりすることがありますが、『エロマンガノゲンバ』のインタビューはそういったものとは対極に位置しています。これはやはり稀見理都さんの情熱が為せる業と言いましょうか。インタビューを敢行する前には必ず作者さんの全作品リスト*3を作成して事に臨むそうですからね。*4・・・むしろそのリストもまとめて同人誌にして欲しいです。必ず買います。(´ω`)
少々脱線しましたが、師走の翁先生インタビューの冒頭の、

先生にインタビューのオファーを行ったのは、コミケ(C77)。直接先生のサークルスペースにお邪魔し、直々にお願いしたのだが、こんな訳のわからない同人誌企画故に、断られるのを覚悟していた私にとって耳を疑うお返事をいただけた。「いや〜待ってましたよ!(*゚▽゚)ノ」
なんと、存在を知っていてくれたという事だけでも天にも昇る気持ちだというのに、先生自身がこの企画に呼ばれるのを待ち望んでいてくれたとは!! オレはなんて幸せな男なんだ〜〜(T△T)



(『エロマンガノゲンバ vol.3』009ページ。*5


というくだりは、稀見理都さんが如何にエロマンガ家さんの信頼を勝ち得ているかを示すものでありましょう。それ故にインタビューの内容も濃い、充実した内容になるのだと思います。


そしてインタビューの際には他のエロマンガ家さんも同席して戴くようでして、その方々によるレポートマンガも収録されています。サイトではごく一部のみしか公開されていないので、是非買うべきですよ。どのレポートもお薦めですが、個人的に最も強く推したいのは岡田コウ先生インタビューに同席したゴージャス宝田先生のレポートマンガ「天にかわってセクはらすっ!!」です。最早レポートなのかどうかも判然としない、魂の咆哮が読み手の心を強く揺さぶります。(; ゚∀゚)



そして更に!(何か通販番組みたいになっていますがご了承の程を。)
同人誌にしか収録されていない企画もあります。「ホンセイサクノゲンバ」「ケイタイノゲンバ」「ノウホンノゲンバ」の3つ。


「ホンセイサクノゲンバ」では、ティーアネット編集部全面協力のもと、赤月みゅうと先生の初単行本『イノセント』が実際に書店に並ぶまでの過程を密着取材しています。


イノセント ~少女メモリア~ (MUJIN COMICS)イノセント ~少女メモリア~ (MUJIN COMICS)
赤月 みゅうと

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構成からタイトル・表紙の選定、製版校正・色校正、印刷工場での製本過程を経て書店に並ぶまでの、4ヶ月に及ぶ長期取材となっています。これを読むと、単行本が世に送り出されるまでには実に多くの方々による、大変な努力が集積されているのだということが実感できます。「ネットでタダで手に入る」とか考える人間はこれを読んで猛省すべきでありましょう。
因みにこの記事のダイジェスト版的なものは、「えろまんがけんきゅう」に掲載されています。ただかなり別物になっているので是非同人誌のほうも読んで戴きたいところです。


「ケイタイノゲンバ」では、成人向け携帯コミック市場について取材しています。
取材先は、アダルト携帯コミックのコンテンツも配信している、株式会社宝島ワンダーネットさん。


自分もそうですし、稀見理都さんもそのようなのですが、「マンガが好きだ」という人間はやはり紙媒体に愛着を感じる傾向が強いようです(あくまで傾向ですし、案外自分の周りだけなのかもしれないですが)。マンガを出している出版社が正式に配信しているもの*6ですらあまり読まない、或いは本になってからという自分にとって、携帯コミックというのはまぁ未知の領域です。
ただ凄く読まれているという話は朧げながら聞きますし、最近は携帯コミックと思われるバナー広告を非常によく目にします。気になる領域であるのは確かなのですね。


そのような秘境的イメージの携帯コミック市場に切り込んだ「ケイタイノゲンバ」。
どのようなジャンル(コンテンツ)が読まれているのか、割合はどのくらいか、どのように読まれるのか、電子書籍に対してはどのような所見を持っているのか、携帯コミックの表現規制について等、実に興味深い内容が多数語られています。とりわけ修正基準とかは、あまりにも不可解な基準が面白過ぎます。1箇所だけ引用させて戴こうかと。

SMは面白いんですよ。SMの道具とかあるじゃないですか?縄とかムチとか・・・。でも、縛るにしても縄や手錠で縛るのはNGなんですが、かわいいピンク色の水玉模様のリボンとかだとOKなんです(笑)


(『エロマンガノゲンバ vol.3』113ページ。)


何でしょうこの謎の基準は。(´ω`)
他の基準とかを併せ読むと、NGの描写というものがあって、それを喚起させる図像の基準があって、その図像を使っていないからOK!みたいな感じかなという印象もありますが(上の例だと「縄で縛るのはSMだからNG!」→「これはリボンだよね?縄使ってないからSMじゃないからOK!」みたいな感じ。)、やはり謎ですね。
規制を躱して表現したものがより強いエロを醸し出す場合もあるのですが、規制する側としては表層の部分のみが重要なのかなとか思ったりもします。

(随分前に書いた記事ですが、いちおう参考までに。)


「ケイタイノゲンバ」は(他に比べて)決して長いインタビューではありませんが、必読と言って差し支えない内容です。エロマンガのみならず、マンガ産業全般に興味がある方や純粋にマンガ好きの方、表現関連に興味のある方にもお薦めです。



「ノウホンノゲンバ」は、国会図書館に同人誌やエロマンガを納本しに行った際のレポートです。国会図書館内部の様子や独特の制度についても詳細に説明されています。
エロマンガノゲンバ』も納本済みとのことで、早速調べてみました。


国立国会図書館の『エロマンガノゲンバ』書誌情報はこちら。vol.3はまだ登録されていないようですが、ちゃんと納本されています。かなり簡単に納本はできることのことなので、興味のある方は試してみるのもいいかもしれませんね。



と、随分長くなったのでこのあたりにしておきます。
この同人誌はお薦めなので、是非読んで戴きたいです(18歳以上限定で)。

*1:僕も両方読み比べてみたのですが、印象ではそれぞれのインタビューが1.5〜2倍くらいの分量になっています。また未収録だった箇所が面白いのですよ。

*2:師走の翁先生の場合は『シャイニング娘。』、にったじゅん先生の場合は「キモーイガールズ」が登場した『PAY BACK』といった具合。

*3:作者さんがいちばん欲しがるとのこと。

*4:【8月22日追記】正確には「時系列に並べ替えたリスト」です。描かれた順番が大事だから、とのご指摘。ペンタッチや作風の変化・変遷とかを追うためは、時系列で辿ることが必須ですからね。

*5:このくだりはサイト上でのインタビューでも収録されています。

*6:クラブサンデーとかガンガンONLINEとかWebスピカとか。