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高橋葉介『もののけ草紙』3巻

もののけ草紙 参 (ぶんか社コミックス)

もののけ草紙 参 (ぶんか社コミックス)


『夢幻紳士【逢魔篇】』に登場した、先見の力を持つ御座敷芸人「手の目」。
彼女がヒロインとして活躍するスピンオフ作であるこの作品も、既に3巻。代表作のひとつと言っても差し支えないでしょう。


1巻では『夢幻紳士』に登場時同様年若い少女だった「手の目」も、成長し妖艶さを身に纏い、更には先見の力のみならず妖を退ける幻術の類に通暁するまでになっています。夢幻魔実也に近い位置付けと言えましょう。嘗ての狂言回し的な役回りは押掛け弟子の小兎(シャオツー)に譲り、大人の落ち着きも備えるようになっています。
あとこれは2巻の中盤あたりからですが、太平洋戦争時に生まれた怨念とか妄執とかを引き受けるような立場が増えつつありますな。それと時期を同じくして漆黒の服を主に身に纏うようになるのも興味深い。何か喪服のようにも思える。


3巻でも高橋葉介さんが得意とする、(作品内での)現実と虚構・幻想が入り交じりつつ二転三転し、作中のキャラクターのみならず読者をも欺こうとしているかのような展開は健在です。とは言え2巻までに比べると幾分「戦争」関連の描写に重きを置いているかもしれません。
あとがきで「本当に私の漫画のキャラクター達は全く私の言う事を聞いてくれないのです。」*1と書いてあるのですが、それも影響しているのだろうか、と考えたりしています。

*1:高橋葉介もののけ草紙』3巻159ページ。