高野文子『ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事』
- 作者: 高野文子
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 1998/02/01
- メディア: 単行本
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1987年に刊行された同名作の新装版。
新装版の初版は1998年になります。
大富豪の娘、ダリヤ=ポポーンズのメイドとして働いているラッキー=ランタンタンはデパートが大好き。ダリヤのふりをしてデパートで買物をしたり食事をしたりすることも。しかしそのことがダリヤにバレてしまい、メイドをクビになってしまいます。これからどうするか途方に暮れていたラッキーでしたが、その日出掛けていたリッチデパートの支配人に気に入られ、従業員として働かないかとの誘いも受けていたラッキーは、リッチデパートで働くことを決めます。しかしこのリッチデパート、何やらたいへんな秘密があるらしく・・・。
何と言いますか、フランス映画のような匂いを感じさせる、実に小粋な作品となっています。
元気な女性がヒロインのドタバタ模様が描かれるのかと思いきや、デパートの乗っ取り劇、そして一国の命運を握る事態にまで発展するという、ミステリー・サスペンス的な展開となっています。いや正確にはヒロインのドタバタアクションが描かれつつ、というべきでしょうか。
ドレス売り場担当の従業員・タンチー=オルタンス(上記の「一国の命運を握る事態」に大きく関わっており、それにラッキーを引き込んだ人物でもあります)とラッキーのロマンスも織り交ぜられ、全1巻でありながら実に読み応えのある、密度の濃い作品となっているように感じます。それでいて実に洒脱な雰囲気が全篇に立ち籠めている。
あと、高野文子さんは実に構図の取り方・或いは視点の設置が巧い、と思います。まぁ既に指摘はされているでしょうけどね。
187〜194ページにかけてのエスカレーターのシーンとか、実に読んでいて心地良い。
そして最後は謎が奇麗に回収され大団円。
新作とかばかりではなく、たまにはこういう作品を読んでみるのも良いものです。
まだ高野文子さんの他の作品をあまり読んでいないので、いろいろと手を出してみようかとも思う今日この頃です。