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『あかとき星レジデンス』で描かれていないとある事実

本日の記事は、犬上すくねさんの新刊『あかとき星レジデンス』のネタバレを含みます。
ネタバレが苦手な方はこの先を読むのはご遠慮ください。




『あかとき星レジデンス』の舞台となるのはタイトルと同名の公団住宅。その公団住宅には、地球の調査目的でやってきた異星人が地球人として生活しています(調査員は記憶操作等を受けていて、基本的にお互いが異星人であるということを知らない、というケースが殆どです)。「あかとき星レジデンス」は調査報告の集積地でもあるという訳ですな。


そこに集う人たち(時に異星人と地球人、時に異星人同士)の恋愛模様が、時に優しく時に切なく描かれています。


さて本題に入ります。この記事タイトルで挙げた「描かれていないある事実」についてです。
まずはこちらの画像をご覧下さい。



犬上すくね『あかとき星レジデンス』178ページ。)


こちらは最終話の「その後」を描いた箇所です。あかとき星に住む、ある複雑な家庭事情を持つ父娘と、その隣人である姉弟の交流を描いたエピソード。そして最後に明かされるある事実と彼らの結末。心地よい余韻を残す内容となっています。


結末を書いてしまいますが、磯山卯月(父)と早河夏美(姉)が結婚をするところで終わります。そしてその3年後を描いたのが、上で引用した箇所になる訳ですが、まそら(娘)が夏生(弟)に好意を寄せていることが示唆され、読者をニヤケさせること請け合いです。そしてその様子を、卯月と夏美が(子供を抱きかかえつつ)眺めているという場面です。


新しい家族となった4人に、更に新しい家族が増えている訳ですが、ここで「描かれていないある事実」。
恐らく上のコマに描かれた赤ちゃんは、2人目の子供です。



何故そのようなことが言えるのか、ささやかながら検討してみます。
まずはこちらの画像を。



(同書158ページ。)


このあたりは最終回のまさしくクライマックス、卯月が夏美に結婚を申し込む直前の箇所になります。着ている服とかから察するに、春先といったところでしょうか。
では次の画像。



(同書190ページ。)


こちらは「特別編」で描かれた、彼らのその後。夏美は妊娠しています。
恐らくは158ページと同じ年の、初秋(恐らく10月になるかどうか)といった時期ではないかと思います。根拠として、夏生とまそらの身長差がほぼ同じである点、まそらの髪型が同じである点、服装といったところを挙げておきましょう。


結婚して程なく妊娠であれば6〜7ヶ月、次のページには「年末ごろになりそうです」という台詞もあることから、時期的にも符合するかと思います。
そして再び最初に挙げた、178ページに戻って戴きたい。夏美は赤ちゃんを抱えていますね。流して読めばその際に産まれた子供がその赤ん坊と捉えるのが自然かもしれません。
しかしそのページは、158ページでのエピソードの更に3年後なのです。178ページの冒頭には「さらに3年後」と書かれているので、それは確実です。


もし190ページで妊娠していた夏美が産んだ子供がその赤ちゃんだったとしたなら、178ページに描かれた子供は3歳近い(2歳半くらい?)年齢ということになります。さすがにそうは見えないですね。生後1年前後ではないかという印象です。


もし190ページに描かれたのが158ページのエピソードの2年くらい後ということであれば、妊娠していた際の子供=178ページに描かれた赤ん坊という図式も成り立つ訳ですが、その場合まそらの成長があまりにも急激であり、それはそれで不自然であります。


つまり178ページで描かれた赤ん坊は、最初の子供が産まれてから1年〜1年半くらい後に産まれた子供である、と考えるのが最も自然である訳です。最初の子供は単にコマから外れていたという訳です。



と、まぁ半分くらいは自分の妄想に過ぎない訳ですが、こういったことをあれこれ考えるのもマンガを読む愉しみのひとつではないかと考える今日この頃です。


という訳で、本日はこのあたりにて。


【追記】このようなコメントを頂戴しました。感動しています。
http://twitter.com/#!/sukuneinugami/status/120188117973090305