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『架空の歴史ノート-1 帝国史 分裂大戦編』詳説

数日前に、この作品がネット上で話題になりました。


架空の歴史ノート-1 帝国史 分裂大戦編

架空の歴史ノート-1 帝国史 分裂大戦編


上の画像やリンク先をご覧戴ければ判るように、キャンパスノートに手書きで書かれたものです。そのままの販売は困難なため、kindle 版での販売となっています。
作者は設楽陸氏。美術系の方ですな。
ご本人のサイト、ならびに「架空の歴史ノート」についてのページはこちらになります。


このノート、既に10冊くらい書かれているようですね。
そのうちの最初の1冊が、『帝国史 分裂戦争編』になります。
今回は、この『架空の歴史ノート-1 帝国史 分裂大戦編』の感想みたいなものを、可能な限り事細かに書いてみようかと思います。折角なので、『架空の歴史ノート』についての架空の論考的な体裁を取ってみようかと。




【概略】


『架空の歴史ノート-1 帝国史 分裂大戦編』(以下『ノート』)全体のページ構成は以下のとおりとなる。
正式な名称ではなく、便宜的に要約したものであることを付け加えておく。

  • 1ページ:表紙
  • 3ページ:人類王朝初代皇帝・開帝クラストフによる王朝創設の詔
  • 4ページ:人類王朝・幕庭盟朝命麗盟朝(独立大深土帝国)概説
  • 5ページ:天帝説(このページは後に削除されている)
  • 6〜7ページ:人類王朝統治体制・相関図
  • 8ページ:詳細不明のイラスト。7ページに記載された「帝院(国政機関)」の様子?
  • 9ページ:「神聖大州洋同盟(後の第三世界連合)」「正テラ教会」のシンボル
  • 10〜11ページ:世界地図、或いは人類王朝・神聖大州洋同盟・新世界連合王国の位置関係
  • 12ページ:大陸常駐軍「ミリオンフォース」解説
  • 13〜15ページ:各国の兵装図説
  • 16ページ:攻城兵器図説
  • 17ページ:聖地紛争における人類帝国進軍経路
  • 18ページ:「動乱のエピローグ*1 聖地紛争」解説
  • 19ページ:詳細不明のイラスト。人類帝国皇帝バルバロサと、テラ教大主教カトランティとの間に結ばれた協定の模様か?
  • 21ページ:「聖地封鎖」解説
  • 22ページ:「ダーガー事件」解説
  • 23ページ:大深土帝国皇帝清義明肖像画
  • 24ページ:エルゼノ帝国女帝ダン・テレジアならびに皇太子ビン・ホーン肖像画
  • 25ページ:「ダーガー事件」解説(22ページの続き)
  • 26〜27ページ:大国の思惑
  • 28ページ:人類帝国からの分離独立を目的とする「神聖大州洋同盟」の設立、帝国への宣戦布告(光庭宣言)
  • 29ページ:人類皇帝肖像画
  • 30ページ:人類王朝統治制度(支配構造)
  • 31〜32ページ:帝国戦争史年表(新生暦429〜439年)
  • 33〜35ページ:「サナの戦い」イラスト(新生暦437年)
  • 37〜39ページ:帝国戦争史年表(新生暦440〜445年)
  • 40ページ:終戦(新生暦445年)時における帝国・同盟国勢力図
  • 41ページ:「ゴート独立戦争における帝国軍・同盟軍進軍経路
  • 42〜43ページ:「湾中海大会戦」(新生暦443年)図説
  • 44〜45ページ:各国軍船図解
  • 46ページ:「分裂戦争」死傷者数報告
  • 47〜48ページ:「3年間の安堵」年表(新生暦445〜447年)
  • 49ページ:第27代人類皇帝ノヴァ即位式(継承の儀)イラスト
  • 51ページ:帝国戦争史年表(新生暦448〜452年)
  • 52ページ:「ミリオンズ」出陣イラスト
  • 53ページ:「三国の密約」イラスト
  • 54ページ:「独立紛争」ラフスケッチ
  • 55ページ:「第2回幕庭本土遠征」進軍経路
  • 56ページ:人類帝国・同盟国・連合国勢力図
  • 57ページ:新大陸連合王国軍・大深土帝国軍の激戦を描いたイラスト
  • 58ページ:制海権を巡る海戦を描いたイラスト
  • 59ページ:「竜飛兵」図説
  • 60〜61ページ:マスケット兵」図説
  • 62ページ:帝国戦争史年表(新生暦453〜456年)
  • 63〜65ページ:「ミリオンズ大会戦」図説(新生暦455年)
  • 66ページ:帝国戦争史年表(新生暦456年)及び「バークーの戦い」(同年)図説
  • 67〜69ページ:「ミリオンズ」創設に至るまでの解説・イラスト(新生暦447年)
  • 70ページ:七代文明の成立・エル民族の大移動についての図説(旧暦3000〜2000年)
  • 71ページ:征服王朝の誕生についての図説(旧暦2000〜800年)
  • 72ページ:ヴァ帝国の拡大についての図説(旧暦800〜500年)
  • 73〜77ページ:ヴァ帝国帝都・不沈都市トノスについての図説
  • 78ページ:ヌーキー大戦進軍経路(旧暦500〜200年)
  • 79ページ:ヌーキー大帝国及び盟朝制度についての解説
  • 80〜81ページ:人類王朝成立に至るまでの図説(旧暦200〜新生暦元年)
  • 82ページ:巨万都市グエスタノーイエスのイラスト
  • 83ページ:チャリオット財閥・正テラ教会・グエスタノーイエスの関係についての解説
  • 84ページ:大老会の設置と、その仕組についての解説
  • 85ページ:エル民族の大移動〜人類王朝設立までの概史(旧暦3000〜新生暦元年)
  • 86ページ:コンスタンツァ戦争大遠征エノジア戦争帝国政治闘争についての解説
  • 87ページ:人類王朝の統治機構に関しての図説
  • 88〜91ページ:帝国のスーパーゴールデンエイジについての解説(新生暦元年〜400年頃まで)、及びミリオンフォースについての解説
  • 92〜93ページ:正テラ教の成立、及び教義についての解説
  • 94〜95ページ:帝国による世界統治への疑問、ならびに民主化への動きについての解説
  • 96〜97ページ:思想家ドラゴの思想、及び活動についての解説
  • 98ページ:歴史家モオによる後書き
  • 99ページ:人類帝国皇帝ノヴァ乱心の様子を描いたイラスト
  • 100〜101ページ:帝都攻略戦の図説、ならびにフリズン列城のイラスト
  • 102〜103ページ:帝国戦争史年表(新生暦457〜458年)及び図説
  • 104ページ:帝都進攻時の進軍経路
  • 105ページ:グリーンベレーの反乱の様子を描いたイラスト
  • 106ページ:帝国戦争史年表(新生暦459年6月〜10月)
  • 107〜109ページ:グリーンベレー族の体格、及び戦闘の様子を描いたイラスト
  • 111ページ:トノス砲撃戦の図説
  • 112〜114ページ:トノス市街戦のイラスト、ならびに進軍経路
  • 115ページ:連合王国軍・帝国軍最後の交渉(ロルポの交渉)についての解説
  • 116〜117ページ:交渉決裂による攻撃再開と、人類皇帝の敗北を描いたイラスト
  • 118〜119ページ:人類帝国解体・新興国家の台頭についての図説
  • 120ページ:帝国軍事裁判の解説
  • 121ページ:人類帝国皇帝ノヴァ最期の言葉
  • 122ページ:新興国家・エルゼナ神聖帝国の成立と、ルシャン教文化の誕生についての解説
  • 123ページ:法帝庁の勢力拡大についての解説・イラスト
  • 124〜125ページ:新興国家・新華帝国の様子を描いたイラスト、及び国力についての図説
  • 126ページ:三大陸貿易の図説
  • 127ページ:重商主義についての解説
  • 128〜129ページ:新生暦500年以降の世界における勢力図
  • 130ページ:次章予告

【『ノート』の位置付け】


人類王朝の分裂ならびに滅亡を軸に、旧暦3000年〜新生暦500年までの歴史が詳細に記述されている。『ノート』の記述は支配制度から戦争時の進軍経路、思想に至るまで広範に及ぶ。
また多数のイラストが収められており、時には鮮やかな着色が施されたものも存在する。当時の戦争の様子、或いは社会情勢・風俗を理解または研究するうえで重要な史料となることは疑問の余地がない。



【問題点】


編纂上の問題点を挙げることができる。『ノート』は史料を集めた順番にまとめていった可能性が高く、事件・出来事が年代順に並べられていない箇所が散見される。70〜98ページで記述された、七代文明〜人類王朝成立までの記述はその最たるものと言える。
多数収録された図解・イラストに関しても、各種解説の前に唐突に挿入されているケースが見受けられ、後の解説でその図解の意味が判明する箇所が縷々存在する。収集者(著者)の大きな関心がそちらへと向けられていたことに起因するものと推測される。
個々の出来事が詳細に語られる反面、歴史の全体像が摑みづらくなっている傾向は窺える。
テキストの異同という問題もある。恐らくは筆写の際に生じたのであろう誤字、或いは紙の劣化により読み取りが困難となっている箇所も存在する。
また、これも上述の収集者の関心に因るものと考えられるが、戦史・政治史の充実に比べ、社会史・生活史・文化史的な側面の記述は少ない。当時の兵隊以外の人々がどのような生活を送ったか、何を食べていたのか、どのような美術・文学作品が存在したか、『ノート』からそれらを知ることは難しい。


これらの問題点に関しては、記述の少ない分野の更なる調査・文献学的研究が期待されると共に、それらも踏まえた上で編纂し直した史書の執筆が求められる。



【評価】


幾つかの問題を持ちつつも、七代文明〜人類王朝滅亡までの3000年以上に及ぶ詳細な歴史記述は圧巻と言う他なく、資料的価値はどれほどの時を経ても衰えるものではないと確信する。




と、こんな感じでしょうか。
意図的に堅苦しく書いてみましたが、実際に読んでみればお判りのように、誰もが大なり小なり経験はあるだろう、若気の至り的な妄想を具現化した内容です。それでいながら『ファイブスター物語』を彷彿とさせるかのような壮大なスケール感。ここまで書けてしまうのは才能なのだろうな、と。
思わず叫びたくなってしまうような何かがあると思います。(´ω`)


ご興味のある方は是非。
といったところで、本日はこのあたりにて。

*1:原文ママ。ほんらいはプロローグが正しいと思われます。