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時折マンガの話をします。

マンガのトリミング・リメイクの事例

皆さん「水木しげる漫画大全集」は全て購入しているかとは思いますが、今月(2015年3月)の配本は『ゲゲゲの鬼太郎』4巻と『昭和史』2巻でした。


昭和史(2) (水木しげる漫画大全集)

昭和史(2) (水木しげる漫画大全集)


このうち、『ゲゲゲの鬼太郎』4巻のほうには、「マガジン」版の『ゲゲゲの鬼太郎』に加え、単行本初収録となる「たのしい幼稚園」版『ゲゲゲの鬼太郎』が収録されています。当然自分も初めて目にする作品でしたが、内容的にも興味深いものでした。
たのしい幼稚園版、読んでみると判るのですが、マガジン版をトリミングして再構成したものなんですよね。


現物の一部分をご覧戴きましょう。
同じ単行本に収録されいる「姑獲鳥」(マガジン版)と、「ようかいどり うぶめ」(たのしい幼稚園版)の比較です。



水木しげる水木しげる漫画大全集032 ゲゲゲの鬼太郎4』51ページ。)



(同書449ページ。)


上がマガジン版、下がたのしい幼稚園版です。初出はそれぞれ、「週刊少年マガジン」1968年第26号と、「たのしい幼稚園」1969年2月増刊号。ページ数はマガジン版16ページ、たのしい幼稚園版7ページです。


画像は共にねずみ男が少年をたぶらかして姑獲鳥を復活させる手伝いをさせ、その後二人とも行方不明になってしまうという箇所になります。
たのしい幼稚園版は全体的にコマが大きく、フキダシ内の台詞は簡略化され、且つすべて平仮名で書かれています。それに伴い、少年の同級生で、性格の悪い優等生に関係するエピソードはすべて削られています(マガジン版のコマ、左側に描かれている少年です)。


過去作品の一部分を別作品に使う、という手法は『昭和史』でも用いられている訳ですが、水木しげるセンセイに限らず、昔(1960年代あたり)の作品では時折確認することができます。
一例として、石ノ森章太郎(当時は石森章太郎)さんの『サイボーグ009』から。



石ノ森章太郎サイボーグ009』秋田文庫版12巻217ページ。)


(同書秋田文庫版10巻263ページ。)


上は「サイボーグ戦士」と題されたエピソードの一部分、下は「上成博士救出作戦」というエピソードの一部分になります。この作品、初出の記載が単行本にない*1のですが、展開的に考えると、「サイボーグ戦士」をベースにトリミング・再構成したのが「上成博士救出作戦」と考えられます。


ただ、この時代には同様の作品がどの程度あったのか、正直よく判らないのですな。いつかちゃんと調べたいところではありますね。
また、現在はどうなのか、というのも気になるところではあります。こういう作り方が可能な作品は(当時もでしょうが)限られると思いますし。キャラクターの魅力が高く、あまり長くないエピソードを重ねるような作品がやりやすいと思いますので、現在やるとすれば、ポケットモンスターとか妖怪ウォッチあたりでしょうかな。


といったところで、本日はこのあたりにて。

*1:この『サイボーグ009』文庫版が刊行されたのは1996年頃なのですが、この時期の単行本・文庫には初出が記載されないケースが大多数でした。