マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

マンガ

珠玉の名篇。志村志保子『林檎の木を植える』

幼馴染みが、バスの事故で死んだ。 乗る理由がない筈のバスに乗って。 「話したいことがある」という言葉を遺したまま。 彼女はそのバスで、どこに向かっていたのか。 彼女はいったい、何を伝えようとしていたのか。 先日、志村志保子さんの新作『林檎の木を…

微笑ましくも痛々しい「食通」たちの饗宴:いのうえさきこ『私のご飯がまずいのはお前が隣にいるからだ』

ここ2〜3年の流れでしょうか、「食」にまつわるマンガが注目を集めているように感じます。 大ロングセラーにしてドラマ版の完成度も非常に高い『孤独のグルメ』を筆頭に、ドラマ化された作品としては他にも『めしばな刑事タチバナ』や『たべるダケ』、まぁ『…

『JOJOVELLER』は期待に違わぬ素晴らしい内容だった

先日、遂に荒木飛呂彦先生の3冊目となる画集『JOJOVELLER』完全限定版が我が家に届きました。 JOJOVELLER完全限定版 (マルチメディア)作者: 荒木飛呂彦出版社/メーカー: 集英社発売日: 2013/09/19メディア: コミック クリック: 1,650回この商品を含むブログ …

『囚人リク』に登場する革命の闘士・田中一郎について

先日、『囚人リク』の最新刊を購入しました。 囚人リク 13 (少年チャンピオン・コミックス)作者: 瀬口忍出版社/メーカー: 秋田書店発売日: 2013/09/06メディア: コミックこの商品を含むブログ (2件) を見る 既に13巻まで刊行されている訳ですが、作品の熱量…

料理で繋がる父と娘、料理で繋がる教師と生徒(そして生徒は黒髪ロング):雨隠ギド『甘々と稲妻』

昨日、雨隠ギドさんの新作『甘々と稲妻』を購入しました。 甘々と稲妻(1) (アフタヌーンKC)作者: 雨隠ギド出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/09/06メディア: コミックこの商品を含むブログ (46件) を見る 雨隠ギドさんは、これまでは「ウイングス」とかで…

『スピリットサークル』における主観の描写について

既に1ヶ月ほど経ちますが、水上悟志さんの『スピリットサークル』2巻を読みました。 スピリットサークル 02―魂環 (ヤングキングコミックス)作者: 水上悟志出版社/メーカー: 少年画報社発売日: 2013/07/30メディア: コミックこの商品を含むブログ (24件) を見…

自らの人生に向き合い、周りの人たちに支えられつつ、未来へと向かう。武田一義『さよならタマちゃん』

先日、武田一義さんの処女単行本『さよならタマちゃん』を読みました。 さよならタマちゃん (イブニングKC)作者: 武田一義出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/08/23メディア: コミックこの商品を含むブログ (22件) を見る これは、素晴らしい作品でした。 …

小学館ビルの落書きを見てきた

数日前に、近々取り壊される小学館ビルの「落書き」が話題になりました。 小学館ビル取り壊し大落書き大会(togetter) ちょうど今日が休みだったので、これは実際に見ておかねばなるまいと、小学館ビルまで行ってきました。写真もそれなりに撮ってきたので…

市川春子『宝石の国』と、作中の構図について

先月下旬に、今年最大の注目作のひとつ『宝石の国』の単行本1巻が発売されました。 宝石の国(1) (アフタヌーンKC)作者: 市川春子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/07/23メディア: コミックこの商品を含むブログ (53件) を見る これまでに短編集2冊、『虫…

『同人王』小ネタ集

少し前に、『同人王』の感想を書きました。 当該記事:救済の物語:牛帝『同人王』 リンク先の感想は比較的直球で書いたものですが、今回は変化球というか、小ネタっぽいものを幾つか取り上げてみようかと思います。 【消えた余白について】 まずはこちらの…

救済の物語:牛帝『同人王』

7月17日に、『同人王』の書籍版が発売されました。 同人王作者: 牛帝,株式会社ホップ・ロウ出版社/メーカー: 太田出版発売日: 2013/07/17メディア: コミックこの商品を含むブログ (9件) を見る 元々はWeb上で発表されていた作品です。2006年に連載が開始され…

『ハイスコアガール』:たった1つの単語に込められた、小春のあまりにも一途な想い

押切蓮介さんの『ハイスコアガール』が面白い。 最新刊4巻で、物語は更なる盛り上がりを見せてきた。 ハイスコアガール(4) (ビッグガンガンコミックススーパー)作者:押切 蓮介発売日: 2013/06/25メディア: コミック まず、作品の概略に触れておく。 内容にか…

文字・オノマトペが実体を伴っている作品例

1つ前の記事で、津田雅美さんの『ヒノコ』において「文字が実体として描かれている」ような例を出しました。 当該記事:文字には力がある。津田雅美『ヒノコ』の世界と文字表現 しかしながら、当然のことではありますが、こういった表現にも先例はあります。…

文字には力がある。津田雅美『ヒノコ』の世界と文字表現

ネット上だとあまり名前を見掛けない印象もあるのですが、津田雅美さんの『ヒノコ』ってどのくらいの方が読まれているのでしょうか? ヒノコ 第1巻 (花とゆめCOMICS)作者: 津田雅美出版社/メーカー: 白泉社発売日: 2012/10/05メディア: コミック購入: 2人 ク…

「漫画家使用画材アンケート」分析

先日、「季刊エス」最新号を購入しました。 季刊 S (エス) 2013年 07月号 [雑誌]出版社/メーカー: 飛鳥新社発売日: 2013/06/15メディア: 雑誌この商品を含むブログ (3件) を見る この2013年7月号(43号)の目玉と言える特集が、10周年特別企画として行われた…

マンガにおける「田舎」の描写:ユートピアとディストピアのあいだ

自分の出身が岩手県だからでしょうか、マンガを読んでいると「田舎の描写」が気になります。 ひとことで「田舎」と言っても、言うまでもなく作品によって、その描かれ方は千差万別です。のどかな生活が描かれることもあれば、あまりにも息苦しい日常が描かれ…

『さよならソルシエ』は、装丁・デザインが緻密に計算されている

もう1ヶ月近く前になりますが、穂積さんの新作『さよならソルシエ』の1巻が発売されました。 さよならソルシエ 1 (フラワーコミックスアルファ)作者: 穂積出版社/メーカー: 小学館発売日: 2013/05/10メディア: コミックこの商品を含むブログ (51件) を見る …

遂に刊行開始。資料的価値も計り知れない決定版、『水木しげる漫画大全集』

6月3日から、遂に待望の『水木しげる漫画大全集』の刊行が開始されました。 「忍法秘話」掲載作品〔全〕 (水木しげる漫画大全集)作者: 水木しげる出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/06/03メディア: コミックこの商品を含むブログ (7件) を見るゲゲゲの鬼…

『囚人リク』における加藤看守の描写について

瀬口忍さんの『囚人リク』、面白いですね。 現在「チャンピオン」で連載している作品のなかでも、トップクラスの熱さを持った作品だと思います。 囚人リク 11 (少年チャンピオン・コミックス)作者: 瀬口忍出版社/メーカー: 秋田書店発売日: 2013/05/08メディ…

水木しげるセンセイの元ネタについて+α

何日か前に、水木しげるセンセイ作品の「元ネタ」に関してちょっと盛り上がっていた模様。 水木しげる絵の元ネタ(togetter) 水木しげる先生の妖怪絵がパクリだらけでボクのなかで水木しげる株つるべ落とし状態(デジタルマガジン) 上のまとめ記事は、純粋…

『鬱ごはん』の黒猫

少し前のことになりますが、施川ユウキさんの新刊『鬱ごはん』を読みました。 鬱ごはん(1) (ヤングチャンピオン烈コミックス)作者: 施川ユウキ出版社/メーカー: 秋田書店発売日: 2013/04/19メディア: コミックこの商品を含むブログ (32件) を見る 食事を題材…

横書きは、視線移動とそこまで密接ではないのでは仮説

タイトルにはやや誇張が含まれています。 先月、マンガの縦書き・横書き、右開き・左開きに関して twitter 上でずいぶんと激論が交わされましたが、さすがに落ち着きましたね。 まぁしかし、こういった問題をあれこれ考えてみるのも悪くないだろうと思います…

Kindleで『アフタヌーン四季賞CHRONICLE』が発売されていた

マンガの新人賞ってやつ、規模の大小はあるにしろ、だいたいの出版社で開催されています。有名どころでは、「手塚賞」「赤塚賞」「ちばてつや賞」「白泉社アテナ新人大賞」とか。 そんな数ある新人賞でも、とりわけ高い知名度を持つ賞のひとつに、「アフタヌ…

横書き左開き議論について緩く考えてみる

ここ数日、以下の話題について白熱した議論が交わされていますね。 日本マンガ・アニメの海外普及について 日本マンガ・アニメの海外普及について その2 竹熊健太郎氏 『業界関係者が横書きに反対する理由』 日本漫画の海外普及について 竹熊健太郎氏 『なぜ…

未完の『orange』、そして新連載(追記あり)

唐突ですが、『orange』っていうマンガをご存知でしょうか? orange 1 (マーガレットコミックス)作者: 高野苺出版社/メーカー: 集英社発売日: 2012/07/25メディア: コミック クリック: 19回この商品を含むブログ (9件) を見るorange 2 (マーガレットコミック…

遠くて近い、2つの『惡の華』

4月に入って、アニメの新番組を幾つか観ています。 その中でとりわけ話題を集めているのが、押見修造さん原作の『惡の華』であろうと思います。賛否両論渦巻いている、という印象ですね。 アニメ「惡の華」公式サイト ネット上では既に繰り返し書かれている…

三条友美の異様な世界:或いは前提が歪んだグロテスクな純愛ホラー

些か遅きに失したという感もありますが、この作品について触れておこうと思います。 三条友美先生のホラー作品集『寄生少女』です。*1 購入したのは発売直後ですが、いろいろと立て込んでいてこんな時期にまで感想?を書くのがずれ込んでしまいました。不徳…

平野耕太『ドリフターズ』の、「化物」の文字を解読する

先日、待望の『ドリフターズ』3巻が発売されました。 ドリフターズ 3 (ヤングキングコミックス)作者: 平野耕太出版社/メーカー: 少年画報社発売日: 2013/03/18メディア: コミック購入: 9人 クリック: 71回この商品を含むブログ (120件) を見る 「漂流者(ド…

九井諒子作品の技巧について

先日、九井諒子さんの最新刊となる『ひきだしにテラリウム』が発売されました。 ひきだしにテラリウム作者: 九井諒子出版社/メーカー: イースト・プレス発売日: 2013/03/16メディア: コミック購入: 1人 クリック: 46回この商品を含むブログ (68件) を見る 各…

「季刊エス」42号に矢吹先生インタビューが収録されている

自分が定期購読している数少ない雑誌、「季刊エス」の最新42号(2013年4月号)が発売されていました。 季刊 S (エス) 2013年 04月号 [雑誌]出版社/メーカー: 飛鳥新社発売日: 2013/03/15メディア: 雑誌購入: 2人 クリック: 25回この商品を含むブログ (2件) …