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時折マンガの話をします。

桑田次郎『カメレオン』

さて引き続きコミケにて購入した同人誌の感想を。
今回はこちらです。

桑田次郎『カメレオン』の復刻同人誌です。
まとまって出版されるのは初めてかと思われるので、「復刻」という表現は不適切かもしれませんが。
桑田次郎さんと言えばやはり真っ先に思い出されるのは『8マン』になるかと思われますが、カメレオンの造形もまた8マンを思い起こさせるものがありますね。

以下、少々概略とか感想とかを。
幾分ネタバレありなのでご注意を。


主人公・マタベエは普段は何故か囚人として刑務所に服役しているのですが、近藤警部の依頼があると怪人・カメレオンとなって与えられた任務を果たすことになっている。
カメレオンとして活躍するために必要なカメレオンスーツを開発したのは、同じく刑務所に服役している本河内博士。博士は嘗て実験中に大事故を起こした関係で刑務所に入る身となったが、その科学力を評価する政府によって刑務所内に研究所を与えられている。
カメレオンスーツはその名のとおり周囲の背景に自分を同化させる能力を持ち、それ以外にも戦闘・偵察等に役に立つ数々の能力を備えている。

そしてカメレオンと敵対することになるのが、死の商人の秘密結社・スパイダーの参謀のドクター・デッドである。


と、概略は大雑把に言うとこんな感じです。
この作品は、ドクター・デッドの存在感が際立っているように思います。
死の商人だけあっていろいろと武器を考案したり造ったりする訳ですが、その内容に先進性が感じられると言いましょうか。

人間爆弾とか造るんですよ。

人間爆弾と言えば、やはり有名なのは『無敵超人ザンボット3』ですが、『カメレオン』で人間爆弾が描かれたのは『ザンボット』の放映より前なのですよ。(『ザンボット』の放映期間は1977年10月〜1978年3月、『カメレオン』が雑誌掲載されたのは1976年末〜1977年初頭。)

他にも、ドクター・デッドは機能を停止した人工衛星にレーザー光線砲を取り付けて地上から操作したりするのですが、これって戦略防衛構想(通称スター・ウォーズ計画)そのままではありませんか。*1
桑田次郎さんの先見性・想像力に感じ入ると共に、フィクションとして考えだされた設定と同じことを現実に行おうとするアメリカの突き抜けた発想にも驚かされるばかりです。

ちょっと横道に逸れてしまいました。
この作品、3話完結の小品ではありますが読む価値はありますよ。


もう1作品、簡単に。
『カメレオン』に同時収録されている『かがやける人類』という作品です。
桑田次郎さんって、後年は宗教・精神世界方面の作品を描くようになっていくんですが、この作品はその典型的なものであろうと考えられます。

『カメレオン』に収録されているのは雑誌に掲載されたバージョンですが、雑誌未掲載だった部分が存在するとのことで、そちらも収録した完全版が最初に挙げた写真の右側の同人誌に掲載されています。
その未掲載箇所では主に神父と子供の「自殺」についての問答があるんですが、これがかなり凄い。桑田次郎さんの宗教観・死生観が如実に表れているのではないかと思います。
もしかすると、相当にペシミスティックな一面を持つ方なのかもしれません。


これは一読の価値ありです。
機会があれば是非とも読んでみることをお薦めしますよ。

さて今回はこのくらいにて。次回以降は評論同人誌に移ります。

*1:因みに戦略防衛構想については、詳しくはこちらをご参照ください。(Wikipedia「戦略防衛構想」の項目)