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「実際に確かめてみる」ことの重要さ:『封印されたミッキーマウス』

先程、『封印されたミッキーマウス』を読み終えました。
ルポルタージュ封印作品の謎』の作者、安藤健二さんの新刊です。

各種雑誌に発表した文章を1冊の本にまとめたものとなっています。
とりあえず目次を引用してみます。

はじめに
01:人気マンガのパロディが思わぬ事態に 『コミックビーム』の回収騒動
02:" NEVADA ちゃん " の憂鬱 ネットアイドル化する殺人少女
03:”私、実は男なんです " に抗議殺到! 美少女ゲームにみるオタク最前線
04:あの「主人公」は今
05:知られざる封印作品の世界
06:なぜ作品は封印されるのか?
07:宮崎勤と『ウルトラセブン』 第一二話をつなぐミステリー
08:未完の巨大建造プロジェクト
09:核兵器が封じられた魔の洞窟 小笠原・父島の怪伝説の闇
10:捏造された日本人差別 タイタニック生還者が美談になるまで
11:ミッキーマウスのタブー 大津市プール事件と著作権問題
12:「フランス語を日本の公用語にせよ!」 志賀直哉の爆弾発言を追って

以下、簡単な感想を。

正直なところ、前半部分には物足りなさを感じました。
というのも、それ以前の著作『封印作品の謎』『封印作品の謎2』(文庫版だと『2』のほうは『封印作品の闇』と改題されています)と重複する箇所が少なからずあるからです。
05・06はこれら2作品のダイジェスト的なものとなっています。

発表された媒体ゆえの字数の制約もあったのでしょう、取材対象の掘り下げが不充分に感じました。
個人的には綿密な調査・対象の掘り下げ・それと並行しての深い自己省察といった点が作者の安藤健二さんの持ち味だと思っているので、どうしても食い足りない印象を受けてしまった訳です。
それでも宮粼勤のエピソードを筆頭に初めて知ることも多々あり、興味深く読めました。

しかし後半部分こそが本書の白眉です。
割り当てられるページ数が増えてきて、そのぶん持ち味が出てくるのですよ。
とりわけ興味深く読めたのは後ろ3章。10・11章ではよく知られる事件・エピソードを丹念に追跡調査して、それまで一般に流布していた説とはまったく異なる一面を読者に示してくれます。
そして12章における志賀直哉の珍妙な発言と、そこから浮かび上がってくる非常に不可解な、矛盾に満ちた文豪の姿。


安藤健二さんの本を読む度に感じるのが、自分が(何らかの対象について)持っている情報・抱いているイメージはどれだけ不確実なものであるかということと、情報を確認する(裏を取る)ことの重要さです。
タイタニック号沈没による「被害者」のような人を出さないためにも必要なことかと思います。
・・・とは言っても、自分もこの本での主張を半ば鵜呑みにしてしまっている訳ですが。(´ω`;)

いろいろと考えさせてくれる本ですよ。
より深い考察を読みたい場合は『封印作品の謎』や『闇』のほうを。

封印作品の謎―ウルトラセブンからブラック・ジャックまで (だいわ文庫)

封印作品の謎―ウルトラセブンからブラック・ジャックまで (だいわ文庫)

封印作品の闇―キャンディ・キャンディからオバQまで (だいわ文庫)

封印作品の闇―キャンディ・キャンディからオバQまで (だいわ文庫)