マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

偉大なるロリコンの話

最近注目されているマンガ雑誌のひとつに『COMIC LO』があります。
成人向、早い話がエロマンガです。そしてロリコン専門です。
注目される要素としては、単なる性描写とは一線を画した深い内容を持つ作品が少なくない点だとか、表現規制に対する編集部の姿勢であるとか、たかみち氏の描く尋常ではなく美麗な表紙とか、いろいろあると思います。僕がよく拝見するサイトだと、たまごまごごはんさんとか犬の本棚さんとかが頻繁に取り上げてますね。


実をいうと僕はロリ指向があまり強くないので*1あまり「LO」の作家さんとかを熱く語ったりができません。
そんな訳で今日は、ロリコン性癖を持っていたとある人物をご紹介させて戴こうかと思います。知っておられる方は知っていると思いますが、知らない方も増えてきているかと思いますのでね。


その人物の名前は、杉本五郎(1924〜1987)といいます。
生涯独身・童貞を貫いたらしいです。中学一年の少女に求婚したこともあるとか。その少女を含め、8人の少女に結婚の申し込みをしているとのことです。その求婚はすべて流れてしまったとのことですが婚約まで進んだこともあり、そして普段から杉本氏の周りには女の子数人がいて仲良くしている光景が見られたそうです。少女たちから嫌われていたということはなく、むしろ慕われていたようです。
読売アンデパンダン展に女の子たちの裸体画を出品したりもしています。そして仲良くなった少女たちをモデルにして自ら撮影をした数千枚のヌード写真を所蔵していたとのことです。杉本氏の死後、写真集も出版されています。*2


そして杉本氏は、世界的フィルムコレクターとしても知られています。
戦前からコレクションを始め、最も多い際は約20000本のフィルムを所蔵していたそうです。杉本氏の主な収入源は、記録映画やニュースフィルムをテレビ局やプロダクションに貸し出すことだったとのこと。また、アニドウというアニメーター団体の顧問も務めました。アニドウは設立された1967年から現在に至るまで定期的にアニメ上映会を催していますが、その多くが杉本氏所蔵のコレクションから提供されています。名作と名高い『やぶにらみの暴君』*3もそのひとつです。


1971(昭和46)年に自宅が火災となり、少女たちのヌード写真と共にフィルムの大半も焼失してしまったのですが、その後5000本くらいまで復元することはできたそうです。そして自宅と隣り合わせていた、自らが経営する貸本屋*4も全焼してしまいました。貸本マンガもまた、殆ど全てが存在したのではないかと言われるほどのコレクションであったそうです。
この火災は、戦後の文化史上最大級の損失であったと思います。
先日、故・米澤嘉博さんの蔵書を収容したマンガ図書館の構想が発表されました。ここ何年かでようやくマンガやアニメの価値が認知されてきたように感じますが、僕が生まれる以前に起こったこの火災に思いを巡らすと、些か遅きに失した感は否めません。


1987年6月13日に杉本氏は亡くなりました。
死因は再生不良性貧血
杉本氏はフィルムを集めるために衣食住の殆どを切り詰めていました。食事はカップラーメンしか食べなかったという話もあります。フィルムの重さで床が抜けていたそうです。ソファーや冷蔵庫は拾い物だとか。そのような生活が病気をもたらしたとも言われます。しかし写真に写っている、自宅でフィルムに囲まれている氏の顔は非常に幸せそうに見えます。


現在のオタクをめぐる諸状況にも大きな足跡を残している(少なくとも僕はそう思っています)、ロリコン性癖を持つ偉大な人物の話でした。


そして最後にひとつだけ。
杉本五郎氏は、上に挙げた以外にも小説を書いたり自主制作アニメを作ったり、活動は多岐にわたります。
貸本マンガも別名で描いているのです。つゆき・サブローという名前です。
つまり杉本氏は、数日前に書いた記事(47年前のトレースマンガ)で紹介した『寄生人』の作者さんなのです。


【参考文献】

*1:好みの絵柄が天野雨乃さん・LINDAさん・TANAさんとか言えば判る方は判るかな。肉感の強いほうが好みなのです。

*2:『アンティック少女写真館』(さーくる社)。絶版。

*3:監督ポール・グリモーにとっては満足のいかないまま公開された作品らしく、その後作り直したうえで『王と鳥』と改題して公開しています。以降はこちらのみオリジナルと認めているとか。高畑勲監督が大きな影響を受けた作品としても知られ、『漫画映画の志 「やぶにらみの暴君」と「王と鳥」』(徳間書店)という本まで書いています。

*4:杉本氏は貸本屋に来る女の子たちと喋ったり、勉強を教えてあげたりして仲良くなったそうです。