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時折マンガの話をします。

表紙の奇麗なマンガ・その3


さて続きを。5つばかりご紹介してみます。短い解説付きです。
まずはこちら。



加藤新吉さんの『国民クイズ』です。
国家のあらゆる意思決定をクイズで決定することが憲法で定められた、近未来(?)の日本を舞台とする群像劇です。
クイズの参加者は様々な要望を持って国民クイズに参加します。それは肉食の禁止だったり全国民の骨髄ドナー登録だったり、果ては「エッフェル塔が欲しい」だったり。
そしてクイズで目標とする点数を獲得すれば、それが国家の名のもとに行われる。


絵柄に非常にクセがあるので読む人を選ぶかもしれませんが、異様なテンションと迫力を備えた作品です。



ここから3つほど文庫を。まずは由貴香織里さんの『天使禁猟区』です。
天使と悪魔との永きに亘る戦いや輪廻転生を縦軸、兄妹での恋愛という禁忌を横軸として、壮大なドラマが展開されます。
読んだことがある方は誰もが認めるところでしょうが、由貴香織里さんの描くキャラクターは驚異的なまでに繊細・且つ流麗です。この表紙でもその画力は遺憾なく発揮されています。


新書版でもそれは堪能できますが、花とゆめコミックスには表紙に制約があります。
最上部がトリコロール柄、その下に極太赤字ゴシック体(更に白抜き)でタイトル、作者名と続いて、その下に正方形の枠が設けられていて、基本的にはその枠内に何らかの絵柄(主に登場キャラクター)が描かれます。

夏目友人帳 6 (花とゆめCOMICS)

夏目友人帳 6 (花とゆめCOMICS)

(判りやすい例として、アニメも好調な『夏目友人帳』を。)


文庫版はその制約がないので、より自由なレイアウトが可能になっています。
やはりこの繊細な絵柄には、細めの明朝体のほうが合っている気がしますね。



続けてご紹介するのは、故・たかもちげんさんの『祝福王』です。
只ならぬ迫力を感じませんか?実際これは、稀に見る傑作です。題材となっているのは「宗教」です。
受け売りになりますが「宗教そのものを描いている」んですよね。
どう例えるといいのですかね、ほらキリスト教の『新約聖書』って、イエスの死後に使徒を中心として成立したものですよね。聖典というのですかな。
『祝福王』主人公の吉見正平は「正平閣」という新興宗教団体を興すんですけど、この作品自体が正平閣にとっての聖典みたいな内容なんですよ。新約聖書でイエスの数々の奇蹟が描かれるように、この作品においては吉見正平がもたらす数々の奇蹟が描かれます。


とりわけ文庫版3巻で描かれる、正平の煉獄巡りは凄まじいです。機会があれば是非とも読んで戴きたい作品です。


・・・だらだら続けるのは気が引けるものの、やっぱり長くなってしまったので一区切り。
続きはこちらから。