マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

漫画ナツ100詳細:その2【39〜76】

さてそれでは続きです。


39.谷口ジロー『「坊っちゃん」の時代』

坊ちゃんの時代―凛冽たり近代なお生彩あり明治人 (アクションコミックス)


近代国家・軍国主義への道を邁進していく明治期を駆け抜けた文豪・政治家・活動家・無政府主義者・その他数多くの人たち。彼らと日本そのものの(つまり戦争へと突き進んでいく)行く末が、虚実ないまぜにしつつダイナミックに描かれます。
幕末期も悪くないですが、この時期も実に面白いのです。



40.田丸浩史最近のヒロシ。

最近のヒロシ。 (角川コミックス・エース・エクストラ)


田丸先生のダメな日常(褒め言葉ですよ)
このまま突き進んで欲しいです。



41.地下沢中也『預言者ピッピ』

預言者ピッピ (1)


連載再開が最も待ち望まれる一冊。
災害予測目的で作られた人型スーパーコンピューター・ピッピはある事件をきっかけとして、本来の目的を大きく逸脱した行動を取り始める。そしてピッピは「地球の未来を完全に予測した」と言い、ある人物に対し、彼が90日後に死ぬことを予言する。
完全に未来が決定しているなかで、人間の自由意志は存在し得るのか。
実にいいところで中断しています。どの雑誌でもいいから、再開してくれないかなぁ。



42.手塚治虫火の鳥 未来編』(文庫版)

火の鳥 (2) (角川文庫)


火の鳥』は名編が幾つもありますが、いちばん内容が深いのはこれかな、と。
マンガ史上、ここまで過酷な運命を背負った主人公はいないのではないでしょうか。
あと、「神」が誕生する過程が実に自然に描かれているのが凄いですね。



43.手塚治虫火の鳥 鳳凰編』(文庫版)

火の鳥 (4) (角川文庫)


物語的な面白さで言えばこちら。
しかし『火の鳥』、登場人物皆が皆、重過ぎる宿命を背負っていますね。
最後に描かれる筈だった「現代編」では、救済は為される予定だったのでしょうか。



44.とよ田みのるFLIP-FLAP

FLIP-FLAP (アフタヌーンKC)


高校卒業の日に同級生の女の子に告白した主人公。
彼女が突き付けてきた条件は、ピンボールのハイスコアを出すこと。そして最初は付き合うために始めたピンボールに、次第に主人公はのめり込んでいく。
恐らく史上初のピンボールブコメピンボールをする姿が生半可ではない熱量で描かれます。真っ直ぐな姿がいいんですよね。



45.永井豪デビルマン』(文庫版)

デビルマン (1) (講談社漫画文庫)


やっぱり読んでおいたほうがいいです。
後半の展開は衝撃的です。不動明の絶望と哀しみ、それが転じた怒りがビシバシと伝わってきます。
・・・映画版?何の話をしているのかまったく判りませんね!( ゚∀゚)



46.萩尾望都ポーの一族』(文庫版)

ポーの一族 (1) (小学館文庫)


それまで描かれていた「吸血鬼」は、一方的に人間に襲いかかる、敵としての存在が殆どだと思います。
この作品に登場するエドガーとアランは正反対です。2人は永遠に少年の姿を保ち続ける。嘗て可愛がっていた幼い女の子も、次第に彼らより成長し、年老いていく。孤独を耐えながら、寄り添うように生きていく2人。
そこに描かれるのは、あまりにも哀しい宿命を背負い続ける吸血鬼の姿です。



47.萩尾望都残酷な神が支配する』(文庫版)

残酷な神が支配する (1) (小学館文庫)


主人公・ジェルミの母親が再婚することになった。その相手・グレッグは心の底から母親を愛している。
しかしある時、グレッグは牙を剥く。ジェルミは苛烈な性的虐待を受け始める。
母親は元々精神的に不安定で、且つグレッグを完全に信頼している。更には母親への虐待を仄めかしてきたため、ジェルミは誰にもその事実を明かすことができず、虐待を受け続けることになる。そしてジェルミは次第に精神の均衡を欠いていく・・・。


秀逸なサイコ・サスペンスです。人間心理の把握も見事。
序盤〜中盤の、息が苦しくなるような展開は圧巻です。終盤少々だれているのが残念。



48.萩尾望都『11人いる!』(文庫版)

11人いる! (小学館文庫)


宇宙大学での最終試験として、10人の受験生が宇宙船へと向かう。
しかしそこには11人いた。「11人目」は誰なのか?そしてその目的は?
試験内容は、その船が漂流したと仮定して53日間を受験生同士で過ごすこと。そして疑惑を残したまま、試験は開始される。
ミステリーの要素を加えた、名作SFです。



49.長谷川裕一マップス』(文庫版)

マップス (1) (MF文庫)


全銀河系の命運を賭けた戦いが繰り広げられる!
その圧倒的なスケール。数々の奇抜な、しかし魅力溢れるキャラクターたち。
読み終えたときには爽やかな、しかし深い感動が待っている筈です。日本のスペース・オペラの最高峰。



50.長谷川裕一クロノアイズ

クロノアイズ (1)


こちらはタイムトラベルSF。
とりわけ後半の怒濤の展開には驚かされるばかり。
タイム・パラドックスの解釈には痺れたなぁ。



51.平田弘史血だるま剣法・おのれらに告ぐ』

血だるま剣法・おのれらに告ぐ


時代劇劇画の巨匠・平田弘史先生の、伝説的作品。
表現上の問題から40年以上出版ができない幻の一作だったのですが、数年前に(伏せ字等の処置をしたうえで)奇蹟の復刻を遂げました。只ならぬ迫力に満ちている、壮絶な復讐譚です。



52.平田弘史『大地獄城・血だるま力士』

大地獄城,血だるま力士


血だるま剣法』と並んで幻の作品だったのが『復讐つんではくずし』。
貸本時代劇として描かれたそれを、平田先生自ら改作したのが『大地獄城』です。
冒頭の城攻めの圧倒的な迫力。そこからなだれ込む、長い期間を掛けた巌窟王張りの復讐劇。言葉を失うこと必至です。
ほんとうはオリジナル版復刻も読みたいのですが、25000円は高過ぎるのではないかなぁ。(´ω`;)



53.藤子・F・不二雄大長編ドラえもん のび太の宇宙開拓史』

大長編ドラえもん (Vol.2) (てんとう虫コミックス)


ここから大長編ドラえもんを3作。
個人的に最高傑作だと思っているのがこれです。マンガを読んで泣いた、初めての作品。
藤子先生が若い頃夢中になって観た、西部劇映画への最大級のオマージュでもあるのですよね。



54.藤子・F・不二雄大長編ドラえもん のび太の海底鬼岩城』

大長編ドラえもん (Vol.4) (てんとう虫コミックス)


数ある大長編でも、最大の危機に陥ったのはこれではないでしょうか。
初めて読んだときは、どうなってしまうのかハラハラしながらページをめくったものです。
クライマックスのバギーの姿は、涙なしでは見られない。



55.藤子・F・不二雄大長編ドラえもん のび太と鉄人兵団

大長編ドラえもん (Vol.7) (てんとう虫コミックス)


リアルタイムで初めて読んだのは、これだったと思う。
鏡面世界に行きたくて堪らなかったことを思い出します。ハムを丸ごと食べてみたいなぁ・・・。
リルルの背負う宿命に胸が締め付けられると同時に、ラストではそれを吹き飛ばす爽やかな感動が待っています。


余談ながら、「コロコロ」連載時と単行本ではラストの描写が異なっているんですよね。決して妥協せずにより強い感動を描こうとする、藤子先生の真摯な姿勢が感じられます。



56.藤崎竜『PSYCHO+』

PSYCHO+ 1  DRIVE A  GAME START   ジャンプコミックス


この美麗な表紙を見てくれよ!と言わずにはいられません。
ゲームソフトから指令が送られてくるという設定も、ファミコン世代の僕にはたまらないものでした。予想以上に早く終わってしまったのが残念です。



57.星野之宣『ブルー・ワールド』(文庫版)

ブルー・ワールド (上) (講談社漫画文庫)


現代世界と太古の時代を直接結ぶ異常磁場、「ブルーホール」。
軍人・科学者の研究グループが結成され、彼らは1億4000万年前のジュラ紀へと向かう。
しかし研究グループが残ったまま、ブルーホールが消滅。彼らのサバイバルが始まる。次々と襲い来る恐竜・未知の生物たち。彼らは現代に戻ることができるのか。


前日談でもある『ブルーホール』を読んでいるとより楽しめるかも。
とは言え独立した話なので、これだけでも充分過ぎるほど楽しめます。



58.星野之宣『ムーン・ロスト』(文庫版)

ムーン・ロスト (講談社漫画文庫 (ほ2-5))


地球に迫る巨大小惑星。その規模は、恐竜を絶滅させた隕石の100倍に及ぶ。
それを回避するために考案された作戦は、人工的に作り出したナノ・ブラックホールによる小惑星の軌道変化。
その作戦は成功したかにみえたが、ナノ・ブラックホールは予想を超えて繁殖し、月までも吸い込み始める。
月の消滅。そしてそれは、地球にも急激な気候変化・地軸変動をもたらす。
地球滅亡を回避するため、世界が採択した手段とは・・・。


驚異的な発想とスケール。必読です。



59.細野不二彦『東京探偵団』(文庫版)

東京探偵団 (1) (MF文庫)
東京探偵団 (1) (MF文庫)(画像なし)


実は細野不二彦さんって、かなり変態性の強い作家さんだと思うんですよね。
ギャラリーフェイク』とかでもその面は時折顔を見せていましたが、それが最も濃縮されているのがこの作品。
雑誌連載されていたのは80年代ですが、その時期(つまりバブル期)の空気も伝わってきます。



60.ほりのぶゆき江戸むらさき特急

江戸むらさき特急 1 (1)


爆笑必至。
時代劇ネタだけで、よくここまで描けるものだなぁと思います。
残念ながら最近は入手が難しいかも。ユーズドで。



61.松永豊和『バクネヤング』(完全版)

バクネヤング (ビッグコミックス)


圧倒的暴力描写。エキセントリック過ぎる登場人物たち。
アクの強い絵柄・内容なので好き嫌いは分かれると思いますが、ハマると目が離せなくなります。
ザ・ワールド・イズ・マイン』と併せてどうぞ。胃もたれを起こします。(^ω^)




62.水木しげる『その後のゲゲゲの鬼太郎』(文庫版)

その後のゲゲゲの鬼太郎 (1) (扶桑社文庫)
その後のゲゲゲの鬼太郎 (1) (扶桑社文庫)(画像なし)


最も広く認知されているマガジン版の『ゲゲゲの鬼太郎』の後に、「週刊実話」で連載された『鬼太郎』です。
雑誌の影響か、無闇に鬼太郎が俗っぽいのが特徴です。野球をやったり相撲対決したり、やけにお色気要素が強かったり。この雰囲気が凄く好きなんです。
極めつけは、この鬼太郎はチャンチャンコを着ていません。チャンチャンコをTシャツやセーターに作り替えて着ているんですよ。やっぱり鬼太郎も色気付いてきたのでしょうか。
入手困難ですが、「週刊実話」で掲載された別の話は角川文庫の「水木しげるコレクション」に収録されているので、雰囲気は掴めると思います。



63.水木しげる墓場鬼太郎』(文庫版)

墓場鬼太郎 (1) (角川文庫―貸本まんが復刻版 (み18-7))


このおどろおどろしい空気は、やっぱり貸本版ならではです。
ここから派生・リメイクされた作品も多く存在し、まさしく「原点」と呼ぶに相応しい作品です。
そして寝子さんが人間から猫の姿に変わっていく様子が、妙にエロチック。(^ω^)



64.水樹和佳子イティハーサ』(文庫版)

イティハーサ (1) (ハヤカワ文庫 JA (639))


十数年の年月を掛けて完結させた、入魂の超古代ファンタジー。「亞神」と「威神」という相容れぬ神々同士と、それらに従う人々の戦いが描かれます。
掲載誌から誌面のリニューアルに併せた打切を宣告されるも、納得のいく完結をさせるために最終巻はすべて単行本書き下ろしという異例の決断をするほど、強い思い入れを持って取り組んでいた作品とのことです。
またこの作品、主人公とヒロインが霞んでしまうほど、魅力的なキャラクターに溢れています。



65.水野英子『ハニー・ハニーのすてきな冒険』(文庫版)

ハニー・ハニーのすてきな冒険 (1) (双葉文庫―名作シリーズ)
ハニー・ハニーのすてきな冒険 (1) (双葉文庫―名作シリーズ)(画像なし)


少女マンガ界の大御所、水野英子さんの作品からひとつ。
内容は簡単に言うと、「『八十日間世界一周』と『リオの男』を混ぜて、恋愛要素も加えたドタバタコメディ」*1といったところかな?天真爛漫な少女ハニー・ハニーが何やら陰謀に巻き込まれ、世界中を飛び回ることに。ドタバタぶりが実に楽しいんですよ。
しかし文庫版は絶版、その後復刻した版も出版社の解散で入手困難と、何故か不運が付きまとう作品です。('A`)



66.Moo.念平あまいぞ!男吾』(復刻版)

あまいぞ!男吾 (1) (トラウママンガブックス (第3弾))


ファミコンロッキー』の轟勇気に並んでの僕にとってのヒーローが、男吾なのです。
カッコいいんだよなぁ。敵対していた紅静波を、落ちてきたシャンデリアから庇うところとか。
終盤は年齢的に「コロコロ」を読まなくなっていたので結末を知りませんでした。この復刻版によってようやく、僕にとって『男吾』は完結したのです。10年以上経っても色褪せない名作でした。



67.望月三起也『ジャパッシュ』(復刻版)

ジャパッシュ
ジャパッシュ(画像なし)


類い稀なる容姿とカリスマ性を持った少年が、何も無い状態からその才能を存分に使い権力を掴んでいく。
そして遂には独裁者として日本に君臨する。
その姿はあたかも、ヒトラーの再臨を思わせるものがあります。社会状況分析に仮定が多すぎるのがちと難点かもしれませんが、群集心理の把握とかは唸らせます。また、この作品が「ジャンプ」で連載されていたというのが驚き。70年代初頭というのは、熱い時代だったのだなと思います。



68.森薫『エマ』

エマ (1) (Beam comix)


時には定番タイトルを。
メイドものとしてあまりにも有名な作品ですが、単純な「萌え」とは一線を画している気がします。
描き手の気迫を感じるのですよ。エマがメイド服に着替える描写とか。それ以外の箇所も、大英帝国の息遣いまで甦らせようとしているかのように思えます。
最終巻の、新しい時代の息吹を感じさせる高揚感は良かったですね。



69.山口正人『任侠沈没』

任侠沈没 1巻 (1) (ニチブンコミックス)


昨年(2007年)最大の怪作。
日本沈没」と「任侠」を混ぜ合わせることにより、予想外の反応が起きたようです。

読まない奴はぶった斬る!( ゚Д゚)



70.山田芳裕度胸星』(復刻版)

度胸星 1 (1) (KCデラックス)


人類初となる火星探査において調査隊は謎の物体と遭遇、襲撃を受け地球との通信も途絶えてしまう。
調査隊で唯一生き残ったジャック・スチュアートの、「テセラック」と名付けた謎の物体との孤独な戦い。
そして調査隊を救助するためのミッションに応募した、三河度胸ほか多数の候補者が受ける過酷な選抜試験。
この2つが並行して、物語は進んでいきます。
テセラックの真相が明らかになり、物語が大きく動き出したところで中断。(ノД`) あまりにも惜しい・・・。



71.山本直樹『ありがとう』

ありがとう 上 (1)


長い単身赴任から戻った父が見たのは、崩壊し切った家庭の姿だった。
妻、長女と次女何れもが心に深い傷を負っていた。父親は元の家庭を取り戻そうと奮闘するが・・・。
一度崩壊し切ってしまった家族は、ゆるやかなかたちでしか再生し得ないのかもしれない。そしてそれは以前とは異なる、「家族」のあたらしいかたちなのかもしれない。そんなことを考えさせられる作品です。



72.由貴香織里天使禁猟区』(文庫版)

天使禁猟区 (第1巻) (白泉社文庫)
天使禁猟区 (第1巻) (白泉社文庫)(画像なし)


主人公・無道刹那は、妹の沙羅に対して許されざる感情を抱いている。
そして彼らは、天使と悪魔、更には神に対する戦いに巻き込まれていきます。その原因となるのは刹那の「前世」。
人間界とは異なる天使や悪魔たちの世界、前世に転生と複雑に絡み合う物語が流麗なタッチで描かれる、一大叙事詩です。



73.吉田秋生『ハナコ月記』(文庫版)

ハナコ月記 (ちくま文庫)


ハナコさんとイチローさんの、のんびりとした日常。
BANANA FISH』等のハードアクション路線とも、鎌倉を舞台とする作品群とも異なった、独特の空気が漂っていると思います。



74.吉田戦車伝染るんです。』(文庫版)

伝染(うつ)るんです。 (1) (小学館文庫)


ギャグマンガに「革命」をもたらしたのは、私見では3人います。
赤塚不二夫さん(合掌)、山上たつひこさん、そして吉田戦車さん。
初めて『伝染るんです。』を読んだときは、息ができなくなるまで笑い続けたことを憶えています。
身体は心底苦しいのに、脳内には快楽が満ちているという不思議な体験を是非。



75.羅川真里茂ニューヨーク・ニューヨーク』(文庫版)

ニューヨーク・ニューヨーク (1) (白泉社文庫)


「ゲイ」というものに、真正面から向かい合った作品。
そこには奇麗事だけではない、厳しい現実も数多く存在する。家族との関係、職場や周囲での視線、エイズなど。それらに決して目を背けず真摯に描き続けます。
最終話を読み終えたとき、静かな感動が生まれます。



76.わたなべまさこ『ガラスの城』(文庫版)

ガラスの城 (第1巻) (ホーム社漫画文庫)


規模壮大・絢爛豪華・波瀾万丈のメロドラマです。
マンガ史上屈指の悪女、イザドラ・ミルズ・バーゲンの姿をその目に焼き付けましょう。


ようやく「その2」が終了です。
書いていて楽しいのですが、予想以上に時間が掛かって大変ですね。
続きます。

*1:映画を観ていないと、かえって判り辛い例えですな。(´ω`;)