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詩緒がヤバい:『神様ドォルズ』3巻

サンデーGX」は、面白いマンガが多く連載されていますね。
単行本で集めているのだと、『ヨルムンガンド』『BLACK LAGOON*1『エンジェル高校』『世界制服』等々。


そんな作品群のひとつに、やまむらはじめさんの『神様ドォルズ』があります。
今回は、つい先頃発売された3巻を中心に、感想のようなものを書いてみようかと思います。


とは言えいきなり3巻の感想だけ書くのも不親切なので、大雑把な概略から。


この物語の主人公(と言っていいのかな?)・枸雅匡平は東京の大学に通っています。
匡平の故郷はたいへん山奥にある空守村という場所で、その村にはとある秘密が存在します。この村では「案山子」と呼ばれる、木で造られた人形が神様として祀られているのですが、その案山子は人間の意思で自由に操ることができるのです。


(複数ある案山子のひとつ、「玖吼理」。読み方は「ククリ」です。1巻36ページ。)


操る能力を持つ人間はごく限られていて、そのような人物は「隻」という役職に就けられ崇められます。


嘗て匡平は隻だったのですが、何らかの理由でその役職からは外れています。そして空守村出身の史場さんという人物に世話になりながら、大学生活を送っています。そして史場さんには、同じ大学に通う日々乃さんという娘がいます。匡平と日々乃さんはお互いまんざらでもないようです。


そしてある日、学部での飲み会で二人は一緒に帰ることになります。
そこで彼らが見たのは惨殺死体。
そして時を同じくして、匡平のもとに現在の「隻」である妹の詩緒がやってきます。詩緒は匡平に、「阿幾が逃げ出した」と告げます。阿幾は何らかの事件を起こし、長い間幽閉されていた少年です。
詩緒の来訪を機に、物語は大きく動き始めていきます。


概略終わり。
匡平が隻から外れ、詩緒が隻になったのは何故なのか、阿幾はいったい何をしたのか、匡平と阿幾には過去に何らかの因縁があるようだがそれは何か、そもそも「案山子」とは何なのか、数々の謎を抱えたまま物語は進行していくのですが、それらの多くが3巻で明らかにされます。非常に重要な巻ですね。


やまむらはじめさんは非常に繊細な、どちらかというと萌え寄りの絵柄です。その反面かなりスケールの大きい物語指向で、凄惨な描写も厭わない。そのギャップがまたいいのですよ。
3巻で語られる「過去編」は、内容的には非常に重いです。匡平と阿幾に決定的な影響を及ぼす、ある女性教師との出逢いとその顛末や、その女性教師が閉鎖的な村の因習によって孤立していく様子、孤立した故に嘗ての過ちを再び犯してしまう経緯等は、読んでいて凹みます。
しかしそういう描写を徹底して描くのは、彼らの振る舞いに説得力を持たせるためには必要なことだと思います。この描写があってこそ、物語に深み・奥行きが出ると思うのですよ。


そういう重さと同時に、キャラクター的・造形的な魅力もある訳ですね。
数々の「案山子」の、流線を基調にした造型もいいですよね。
そして何より、数々の美少女たち!


詩緒や日々乃さんは言うまでもなく、同じ大学に在籍するマッド・サイエンティスト的な空張部長や案山子の修理を行う「器師」の仕事を継いでいる靄子さん等、軒並み魅力的です。
僕的には日々乃さんがクリーンヒットな訳ですが、3巻に関しては詩緒がヤバいですね。


この膨れっ面とか、*2



裾を踏んづけて転んでしまったときの表情とか、*3危うくおじさんが転びそうになりましたよ。


骨太なストーリーが展開する一方で、このようなニヤニヤさせられてしまう描写も多数存在する。これが『神様ドォルズ』の持つ魅力ではないかなと思ったりしています。今後の展開にも期待です。


神様ドォルズ 3 (サンデーGXコミックス)

神様ドォルズ 3 (サンデーGXコミックス)

*1:そろそろ新展開を期待するところですが・・・。

*2:3巻19ページ。

*3:3巻86〜87ページ。