マンガ版『紅 kure-nai』の制作過程が興味深い
現在、「ジャンプスクエア」で『紅』のマンガ版が連載されています。
今月初めに単行本2巻が発売されたばかりですね。
- 作者: 片山憲太郎,子安秀明,山本ヤマト,降矢大輔
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/06/04
- メディア: コミック
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このマンガ版『紅』、興味深い点があります。単行本を持っている方なら既に気付いておられるかもしれませんが、
背表紙がやたらと窮屈なんですよね。
一般的には背表紙には作者名のみ、原作者とかプロダクション名、或いは企業名が併記されている場合もありますが*1、個人名が4つ表記されているのはかなり珍しいです。
僕はロリ嗜好は殆どないのですが、紫は可愛いですよね!( ゚∀゚)
・・・と、個人的な感想はさておいて、表紙にも同様に4つの名前が表記されています。そしてあまり見掛けることがないのが下2つ。「脚本」と「コンテ構成」です。
因みに脚本担当の子安秀明さんはSATZ*2に所属するライターで、『Mr.FULLSWING』や『いちご100%』のノベライズも執筆しておられるようです。
コンテ構成担当の降矢大輔さんはマンガ家で、週刊少年ジャンプ増刊「GAG Special 2005」にて『猫又マサムネ』という作品を描いておられるとのこと(残念ながら未読)。
あくまで予想ですが、制作過程の流れとしては以下のような感じでしょうか。
【STEP1:脚本】
原作の世界観を損なわないかたちで脚本作成。
これまた予想に過ぎませんが、こんな感じかな?
九鳳院紫:(崩月夕乃を真っ直ぐ見据えつつ、強い調子で)よかろう。裏の連中の家がどんなものか興味がある。
夕乃:(穏やかな調子で)お待ちしてます。(紅真九郎に向かって)ではもう遅いですし、今日は帰ります。
真九郎:(戸惑い気味に)え・・・食べていかないんですか?せっかく作ってくれたのに・・・
夕乃:私がいては紫ちゃんが気疲れしてしまうでしょうから。今夜はお二人で召し上がってください。それでは真九郎さん、(威圧的な雰囲気を出しつつ)明日・・・待ってますから。(夕乃、真九郎の部屋を退出)
真九郎:(内的独白。緊張した様子で)やばい・・・夕乃さん怒ってるよ・・・。
紫:(空腹ではあるが、夕乃が作った食事を信用することができず手を付けられずにいる)・・・・・・。(淡々とした調子で)おい真九郎。毒味をしろ。
真九郎:(呆れながら)・・・あのな。
で、脚本が完成したら原作者の片山憲太郎さんのチェックを受け、OKが出たらコンテへ。
【STEP2:コンテ】
脚本を元に、コマ割り・構図のコンテを作成。
出来上がったら子安さんのチェックを受け、OKが出たらペン入れへ。
【STEP3:ペン入れ】
降矢さんのコンテを元に、山本ヤマトさんがペン入れ→完成。
繰り返しますが、あくまで大雑把な予想ですよ。
仮にある程度合っているとして、このような手順を踏んでいる理由としては幾つか考えられます。山本ヤマトさんはあくまで本業がイラストレーターですから、脚本や構図等まで考えるのはどちらかと言うと不得手なのかもしれません。或いは純粋に多忙を極めていて、そちらにまで手を出せないということかもしれませんね。『紅』以外にも、
- 作者: 葉山透,山本ヤマト
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2003/09
- メディア: 文庫
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- 作者: 多崎礼,山本ヤマト
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/06
- メディア: 新書
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いろいろと担当していますし。(『〈本の姫〉は謳う』の3巻を貼ったのは、表紙が個人的にお気に入りだからです。)
ただひとつ言えそうなのは、マンガ制作の在り方・捉え方に(一部分で)変化が出てきているのかな、と。
この制作過程じたいは、アメコミとかプロダクションのつくり方とほぼ同じだと思います。
しかしそれらの場合、トップの人の名前以外は殆ど表に出て来ないですよね。
判りやすい例で言うとさいとう・たかをプロですか。つい最近まで『ゴルゴ13』の作画を担当していたのは石川フミヤスさんでしたが*3、「ゴルゴ描いているの誰?」と質問すれば十中八九「さいとう・たかを」という答えが返ってくる筈。
白土三平さんの赤目プロにしても、『カムイ伝』の後半は小島剛夕さんが描いていますが、単行本の作者名は「白土三平」となっていますね*4。
それらに比べると、『紅』での脚本・コンテの扱いは破格と言っていい。
これはやはり、どれが欠けても作品が成立し得ないという点と、プロダクション内で完結していないという点が大きいのかなと推測します。映画で喩えれば、自社制作と共同製作みたいな感じでしょうか?
これまでマンガはどうしても個人の資質に注目される傾向が強かった訳ですが、今後はこういった作られ方(或いはそれについての表記)が増えていくのかもしれませんね*5。
また『紅 kure-nai』はマンガとライトノベルの中間的な位置付けかもしれないなとか、ライトノベルとイラストの関係云々とかも考えてみたいところですが、随分長くなってしまったのでこのあたりにて。
あと気になるのは原稿料の配分とかですが、さすがにそれは判らないですね。(´ω`)