マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

今年のマンガを振り返る、独りサルベージ座談会・後編(長文)


前編こちら。
中編こちらです。


そして個人的なランキングはこちら。


それでは続きをどうぞ。参加者は以下のとおりです。

  • きくち:僕です。
  • A:司会進行役。
  • B:コメント担当。


 そういえば「モーニング」で岡野玲子さんが『イナンナ』っていう作品を月イチ連載していますよね?
A はいはい。『陰陽師』の次ということで期待していたら、いろいろな意味で驚かされました。マンガと読んでいいのかどうか、かなり境界線上に位置している作品ですね。確か雑誌連載の惹句でも「絵巻」という表現を使っていたことがあった筈です。担当者も困ったのではないかと邪推しています。
 あれってウェブ連載に向いているのではないかなぁ、と。横スクロールさせていくと話が展開していく、みたいなかたちにすれば。技術的な知識が皆無なので単なる思いつきなんですけどね。現時点では「ウェブの特性を利用したマンガ」っていうのは少ないと思う訳です。面白い作品は多いのですが、ネット上にマンガを掲載する必然性は必ずしもないのでは、と。あくまで予想ですが、ウェブ連載の理由としては制作コストの削減・作品発表の場の提供が最たる理由ではないかと考える次第です。
B あ、まだウェブ連載の話をしてたのか。てっきり女性向けの話に移っているかと思ったよ。
 中編では言いそびれてしまったので、この場で語らせて戴きました。
A あまり引き摺るのも何なので、少女マンガとかの話に移りましょう。



【実はそんなにたくさんは読んでいないので・・・】


A いきなり困った見出しですね。
 偽らざる心情です。実際にランキングに入れた作品以外となると、ほんとうに限られてきます。読んだものをそのまま挙げるのに近いのですが、幾つか挙げると『町でうわさの天狗の子』、『悪魔とラブソング』、『星は歌う』かな。

町でうわさの天狗の子 2 (フラワーコミックスアルファ)

町でうわさの天狗の子 2 (フラワーコミックスアルファ)

悪魔とラブソング 5 (マーガレットコミックス)

悪魔とラブソング 5 (マーガレットコミックス)

星は歌う 第1巻 (花とゆめCOMICS)

星は歌う 第1巻 (花とゆめCOMICS)


 『町でうわさの〜』はヒロインが天狗と人間のハーフという特異な設定でありながら、それがごく当り前の日常のひとつとして描かれているのが面白いですよね。ランキングを作る際も、『雨無村〜』とどちらを選ぶか迷いました。『悪魔とラブソング』は本心を覆い隠して振る舞っている登場キャラクターが、マリアの発言で隠している部分を剥き出しにされてしまう。でもそこからマリアの影響を受け始めていく様子に心温まります。『星は歌う』は、作者の高屋奈月さんの盤石さを感じます。常にテーマが一貫していますよね。
B ヒロインは常に明るく振る舞っているけど、重い過去を持っていて心に傷を負っているんだよな。それを救うのが・・・。
A 未読の方もいらっしゃるかもしれませんので、ネタバレは控えておきましょう。ところで他にはありませんか?
 これは少女マンガ・女性向に分類していいのか迷ったのですが、掲載誌が「ZERO-SUM」で購読層には女性が多いと思われるので挙げておきましょう。『Landreaall』です。


Landreaall 13 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

Landreaall 13 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)


 これは素晴らしかったです。とりわけアカデミーに入学してからが圧巻ですね。貴族ならではの独特の倫理・或いは論理、それに基づいたやり取りや言い回し、複雑に絡み合う人間模様、どれを取っても見事です。
B あンた、もしかしてそれも Something Orangeid:kaien さんの影響受けまくりだったりしないかい?
 いちおう作品の存在だけはマイミクさんを通じて知ってはいたのですが、確かにあちらのブログでの熱過ぎる語りが決定打となって読み始めましたね。あのレベルの高度な読みは僕にはできませんが。・・・あと『eensy-weensy モンスター』も入れて大丈夫でしょうか?


eensy-weensyモンスター 2

eensy-weensyモンスター 2


A 2巻の発売日が1月なので大丈夫です。
 長さも全2巻と短めで非常に読みやすい、少女マンガ入門編としても最適な1冊だと思います。葉月と七花という二人の恋模様が温かく描かれるんですが、その二人それぞれの視点による認識のズレが非常に面白いんです。・・・なんてことを漠然と考えていたら、今年の5月ですか、ピアノ・ファイアid:izumino さんが出した同人誌『漫画をめくる冒険』にこれ以上有り得ないくらい詳細に「視点」のことが論じられていました。衝撃的でしたね。どうすればあのような読みができるようになるのか、不思議でなりません。
A 『漫画をめくる冒険』は確かに凄過ぎる内容でしたね。異論の付けようがないと言いますか。読み終えたとき思ったのは、この人は評論の分野における「昴」だなというものでした。
B ところであンた、今「漠然と考えていた」と言ってたけど本当?後付けで「実はオレも」の類だったりしないの?
 いちおう今年の1月7日に記事を書いていますよ。(『eensy-weensy モンスター』完結
B それにしたところで、後から編集とか幾らでもできる訳だし。
 まぁそれを言われると証明することはできないので「信じてください」と言うしかできませんね。そうだ、毎日何も書かない記事を作成し続けて、何か事件みたいなものがあったらそれより前の日の記事を編集して事件のことを書き込めば、あたかも予言書のようになりますよね。
B 『エスパー魔美』のパクリじゃねェか!*1
A まだまだ語りたいことはあるでしょうが、皆さん他にもやることがあるかと思います。オチらしきものもいちおう付いたので、このあたりで締めと致しましょう。
B オチたのかね?
 あまり喋り過ぎるとネタ切れも起きますからね。それでは皆さんお疲れさまでした。このような駄文にお付き合いくださった皆様にも御礼申し上げます。



・・・さすがに独りで書くのは大変でした。という訳でこのあたりにて。(´ω`)

*1:エスパー魔美』の自称超能力者が出てくる話で、毎日自分宛に(鉛筆書きで宛名を書いた)ハガキを送り、何か事件が起きたらその日より前の消印が付いたハガキにその事件のことを書き、あとは直接相手の家のポストに投函するというトリックが描かれていました。さすがは藤子先生です。