マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

藤原カムイ『ROOTS』に描かれている「マンガ家樹形図」が凄い

1つ前の記事にも書きましたが、『Jc.com』という雑誌を買いました。



こちら。)


6作品が掲載されています。そのうちのひとつが藤原カムイさんの『ROOTS』。
作者紹介(各作品の前に掲載されています)によると「藤原カムイ版の[まんが道]をやりたい」とのことらしく、*1自伝的な内容になる模様です。
で、その冒頭部にさりげなく描かれているのがこちらです。



(134ページ2コマ目。)


次のページがぶち抜きで扉ページとなっているためそちらに目を奪われがちですが、実はこちらも凄い。
日本のマンガがどのように発展してきたかを示しているのです。
下から上に伸びていくにつれ年代が新しくなっていき、ジャンルも細分化していくのが判ります。


これはたいへんな労作だと思うのですが、非常に文字が小さく更にはローマ字表記なので読むのに一苦労です。
そこで自分用メモを兼ね、リストにしてみようかと思います。


まずは全体を9ブロックに分類。比較的長く伸びているものを対象にしています。左から、

  • 1:少女向け
  • 2:ギャグ(4コマ系ブラック系、或いはホラー要素あり)
  • 3:ギャグ(ストーリー系)
  • 4:少年・青年向け(ギャグ要素重視)
  • 5:少年・青年向け(ストーリー、アクション性重視)
  • 6:アクション劇画
  • 7:アート系ガロ系(ストーリー重視)
  • 8:ガロ系(エッセイ調)
  • 9:劇画


としておきます。あくまで大雑把な目安ですよ。


※【訂正1】読み違えをしていました。分類2を「ブラック系、或いはホラー要素あり」に変更。

※【訂正2】4・5の「青年向け」の表記を削除。「マンガ=子供向け」の図式が崩れてくるのは劇画の影響を受けた、ある程度年代を経てからのことなので。

※【訂正3】7を「アート系」から「ガロ系」に変更。ガロから派生してアート系が出てきた感がありますので。それに伴い8の「ガロ系」に(エッセイ調)を追加。



それではマンガ家の名前を、年代順(つまり図の下から)挙げていきましょう。



【手塚以前】


これらの支流がひとつにまとまり、


となります。
そして手塚治虫から3つに枝分かれします(1、2〜5、6〜9)。まずは1を。



【1:少女向け】


水野英子さんで分岐。左側はデザイン傾向が強い作風かな。上に挙げた中原・高橋両名も左側。
枝の左側に名前が来る人は少なめ。


枝の右側はストーリー重視。


近い年代になると、「3:ギャグ(ストーリー系)」との接近・融合も見られます。


少女マンガの枝はこんな感じ。
続いて真ん中の分岐(2〜5)に移ります。手塚治虫のすぐ後に来るのが、


そしてすぐに2つに分岐しますが、最初の頃はそれらは渾然一体となっています。そのあたりに名前を連ねているのが


杉浦茂のみ、かなり左(つまりギャグ寄り)に記載されています。
そしてギャグが大きく枝分かれするのが、


です。これにより、2と3〜4が分かれます。まずは2のほうを追ってみます。



【2:ギャグ(ブラック系、或いはホラー要素あり)】


2の枝は1回大きめの分岐があります。左側に書かれているのが


純粋ホラーへと向かう指向と言えばよいでしょうか。フォロワーが少ないのでしょう、このお二方のみ。左の枝はあまり伸びていません。そして右の枝にある名前は、


2の枝は比較的長いのですが、名前があるのはやはりこの2名のみ。こちらは分岐した3の枝に併合されていくようなかたちになります。
それでは赤塚不二夫の分岐に戻り、別の流れを見てみましょう。こちらはどちらかと言うとストーリーにも重きを置いているという印象があります。*2この枝も最初は1本ですが、


が出てきてから分岐します。これにより、「3:ギャグ(ストーリー系)」と「4:少年向け(ギャグ要素重視)」が分かれます。どちらも同じじゃねぇかという声も聞こえそうですが、僕も何となく分類したに過ぎないのであまり気にせずに。



【3:ギャグ(ストーリー系)】


まず最初に出てくるのが


の3名。いわゆる不条理系ですかね。上で既に名前が挙げた山上たつひこさんもすぐ近くに位置しています。
不条理系の枝は分岐してすぐに途切れてしまいます。しかしこの影響を受けた方は多いようです(詳しくは後述)。
不条理系の枝が途切れた後も3の枝は伸び続けます。枝の左側には日常系ギャグのマンガ家、枝の右側には不条理系の影響が色濃いシュールな作風のマンガ家の名前が挙げられています。まずは左側。


さくらももこさんあたりからは、「1:少女向け」との区別が殆どなくなりつつあります。そして枝の右側に挙がっているのは、


等々。なお、3と4の丁度中間あたり、年代的には中川いさみ唐沢なをきの間に、


がいます。ではもう一つの分岐のほうを。



【4:少年向け(ギャグ要素重視)】


こちらに名前が挙がっているのは以下のとおり。


4の最先端にある名前は鳥山明さんです。
最近はまったくマンガを描いていないにも関わらず、名前を挙げざるを得ないのはさすがですね。



【5:少年向け(ストーリー、アクション性重視)】


さて再度赤塚不二夫以前の、渾然一体としていた時期に戻ります。
ギャグに特化していない、ストーリーやアクションが重視される分岐のほうを見ていきます。こちらは殆ど一直線で発展をしていきますね。藤子不二雄先生に次いで出てくるのが、


最先端に位置づけているのは浦沢直樹さん。
そして車田正美さんのあたりから、枝の右側にもマンガ家さんの名前が出てきます。劇画の影響がある、写実的な面が強い作家さんですね。


浦沢直樹さんの右側に、井上雄彦さんが位置づけています。
少年向け(後々は青年向けも含む)はこんな感じになっています。それでは手塚治虫のところまで戻って、3つ目の分岐(6〜9)のほうを見てみましょう。まず名前が挙がっているのが、


のお二方。そして辰巳ヨシヒロさんで大きく分岐します。
これにより、「6:アクション劇画」と「9:劇画」の流れができ上がります。7と8が分岐するのはもう少し後。大雑把に分類すると、6がスタイル重視、7・8が内面描写重視、9が娯楽性重視といったところでしょうか。まずは6から見てみましょう。



【6:アクション劇画】


アクション劇画は貸本の衰退と共に衰退したためか、挙げられているのはこの5名のみ。因みに白土三平さんのみ枝の右側に名前があります。内面描写が深いということでしょうか。そんな訳で次は7・8の分岐、内面描写が深い(と考えられる)作家さんのほうに移ってみます。


で、村野守美さんで分岐が出ます。「GARO」の文字が書かれています。
そしてこの分岐で「7:ガロ系(ストーリー重視)」と「8:ガロ系(エッセイ調)」ができ上がります。まずは7のほうを見てみましょう。



【7:ガロ系(ストーリー重視)】


ここで分岐。そのきっかけになる作家が、


です。唯一の海外の作家さん。この影響があるかどうかで分岐が分かれている模様です。
まずは影響があまりないと思われる作家さんを。


ただ、福満しげゆきさんは誰か別の方と間違えて書いたのではないかと。
年代的にも他の方と違いますし、何より8のほうにも名前があったりします。名前が複数ある方は他にいないんですよね。では次に、メビウスの影響を直接的・間接的に受けた作家さんを。


松本大洋さん、寺田克也さんあたりがこの枝の最先端に位置づけています。
それでは次いで、エッセイ系の作家さんに移ってみましょう。



【8:ガロ系(エッセイ調)】


※【訂正4】ねこぢるさんの名前を書き漏らしていたので追記。


改めて書き出してみると「エッセイ調」という表現にも語弊がある気がしますが、あまり深くは考えずに。
フィクション的要素を排除したような傾向、くらいに捉えてもらえればと。
そして最後に、劇画のほうに目を移していきましょう。



【9:劇画】


となっています。そして7と9は次第に接近・融合していくのですが、そこにある名前が

  • TAISUKE ITAGAKI


これは板垣恵介さんの名前を思いっきり書き間違ったのでありましょう。(´ω`)


書き始めて数時間、ようやく書き終わりました。
自分が書くのが遅いというのもありますが、ほんとうにたくさんのマンガ家さんがおられますね。しかもこれでさえほんの一部に過ぎないという。それぞれの作家さんの詳細も書きたかったのですが、さすがに疲れたので断念します。


それにしても、まだ読んでいない作家さんも数多くいます。またマンガが読みたくなってきましたよ。
という訳で、篦棒に長くなりましたがこのあたりにて。

*1:130ページ。

*2:2の枝には「日常の破壊」があるように感じます。