マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

エロマンガの断面図についての話、とか

本日の話はエロ寄りですので、続きは折り畳んでおきます。
18歳以上で、そういう話題を許容できる方は先にお進みください。




昨日(7日)、酔拳の王 だんげの方の管理人だんげさんが開催した飲み会に参加しました。
エロマンガの話をし続けるという趣旨です。


因みにこの日は僕の誕生日でした。いったい僕は何をやっているんでしょうね。(´ω`)


僕の誕生日のことはさておいて、まぁとにかく濃い飲み会でした。
参加者の皆さんは紛うことなき変態でしたよ(褒め言葉ですよ、もちろん)。


参加なさった方々にはエロマンガのレビューを積極的に行っておられる方も多く、たいへん興味深い話も数多く拝聴させて戴きました。皆さん、明確な目的意識に基づいてエロマンガの紹介・考察を行っておられるという印象です。
で、いろいろ話を聞いたなかから、エロマンガの「断面図」の描写について少々書いてみようかと思います。


断面図描写と言えば、ジョン・K・ペー太さんが有名です。この人の描写がきっかけとなって、断面図描写が広く受け入れられて(?)いったと考えて構わないと思います。
僕が大意を曲解していなければ、参加者の方が仰っていたのは「断面図描写はそれ以前からあるが、なぜある時期に広まったのかがよく判らない」というものであったかと。


確かに断面図描写というのは、かなり長い歴史を持っているのですよね。
僕が確認した限りでは、1982年には既に存在しています。



それがこちら。
山上たつひこさんの『青春山脈』という短篇です。
漫画アクション」増刊、「スーパーフィクション12」1982年11月9日号に掲載されました。現在は短編集『能登の白クマうらみのはり手』に収録されています。(上掲写真は同短編集43ページ。)



因みにこの話、イボグリ君という卑劣漢が主役です。イボグリ君が当り前のように漬物石を女性の頭に投げ付けて、気を失ったところを犯してしまうという。その際の描写なのですね、この断面図は。・・・おっと、言い忘れていましたが、ギャグマンガですよ。かなりブラック且つアナーキーな内容ですけどね。


このコマ、マンガ評論における記念碑的な作品、『マンガの読み方』でも言及されています。


マンガの読み方 (別冊宝島EX)

マンガの読み方 (別冊宝島EX)

(絶版なんですよね・・・。別冊宝島のムックだから、復刻・文庫化も難しいのかな。)


たけくまメモ竹熊健太郎さんが執筆した『マンガは「性器」をどう表現してきたか?』というコラム(前掲書120〜124ページ)にて取り上げられています。そしてそれによると、

大昔のエロ本には、よく「医学図解」としてこういった図が掲載されていた。医学記事ならズバリを掲載してもかまわないという、苦肉の策であった。


(『マンガの読み方』124ページ。)


とあります。
このくだりに、興味深い点が幾つかありますね。



【それ以前にも断面図が存在していた、ということ】


「大昔のエロ本には〜」という箇所ですね。
大昔というのがいつ頃を指しているのかは不明瞭ですが、戦後間もない時期のカストリ雑誌とかにもあったのでしょうか。これは現物に当たらない限り判らないので*1、専門の方々の調査に期待したいところですね。



【元来、断面図は苦肉の策であった、ということ】


苦肉の策だった訳ですよ、断面図は。
より激しいエロ描写をしたいものの、直接的な描写は厳しく規制されているので描くことはできない。それでも描くためには・・・と試行錯誤したうえでの抜け道的な描き方だったということですね。少なくとも1982年の時点ではそうだったと考えられます。
そしてジョン・K・ペー太さんが注目されるのは2004〜2005年頃でしょうか。20年と少々の年月が経過しています。そしてこのあたりでは、断面図がエロ表現の一形態として認知されている感があります。
いつ頃、如何にしてこのような価値の逆転が起こったのか、というのは気になるところですよね。*2


2005年に出版された『ジョン・K・ペー太の世界』には対談記事とか伊藤剛さんのコラムとかも収録されているようなのでそのあたりにも言及があるのかもしれませんが、出版社が倒産したため入手困難なんですよね・・・。買っておくんだったなぁ。



と、今日はこんなところで。

*1:山本明『カストリ雑誌研究』や北原童夢・早乙女宏美『「奇譚クラブ」の人々』とかも調べてみましたが、断面図は転載されていませんでした。

*2:この点に関しては、エロ描写(とりわけ性器の描写)の規制が緩くなってきているのと相関関係なのかも。性器の描写よりも過激で、目新しい表現としての断面図といった具合。