マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

独断と偏見に基づく、漫画文庫発刊の出版社別傾向(その2)

前回の記事の続きです。


今回は、中堅どころを中心に書いていきます。



双葉社


双葉社が発行しているマンガ雑誌というと、「アクション」になります。
なので、やはりそこで掲載された作品が中心になります。『じゃりン子チエ』や『ルパン三世』が看板作品でしょうか。福本伸行先生の『銀と金』もありますね。


じゃりン子チエ (1) (双葉文庫―名作シリーズ)

じゃりン子チエ (1) (双葉文庫―名作シリーズ)

ルパン三世 (1) (双葉文庫―名作シリーズ)

ルパン三世 (1) (双葉文庫―名作シリーズ)

銀と金 (1) (双葉文庫―名作シリーズ)

銀と金 (1) (双葉文庫―名作シリーズ)


ただそれ以外にも、時折意表を突くようなかたちで名作を復刊したりするのが侮れません。
石ノ森章太郎さんが自らのオカルト的なものへの関心を前面に押し出した(と個人的に考えている)最初期の作品『少年同盟』を唐突に出してみたり、それと同時期に連載していた『気ンなるやつら』や『虹の子』を出したりもしています。水野英子さんの代表作に数えられながら諸事情あってなかなか復刊されなかった『ブロードウェイの星』や『ハニー・ハニーのすてきな冒険』も双葉文庫ですね。



ただ困ったことに、双葉文庫は殆ど増刷が掛かりません。
これはと思ったものがあったなら、早めに入手することをお薦めします。



【幻冬舍】


幻冬舍で発行している「コミックバーズ」は、前身となったのがスコラで発行されていた「コミックバーガー」で、スコラ倒産後にソニー・マガジンズに移籍してそこもコミックスから撤退した後に幻冬舍が引き継いだ、という経緯があります。
そして、スコラやソニー・マガジンズの時期に掲載していた作品とかを少しずつ文庫にしています。年4回ペースですね。最近は本数を絞って毎月だしているのかな?


隣人13号 1 (幻冬舎コミックス漫画文庫 い 1-1)

隣人13号 1 (幻冬舎コミックス漫画文庫 い 1-1)

(『天才ファミリー・カンパニー』はソニー・マガジンズの「きみとぼく」ですね。)


一方で、これまでに雑誌とはあまり関係なさそうな作品もけっこう出ているのも特徴。編集者さんとかの繋がりなのでしょうか?


恋人プレイ 1 (幻冬舎コミックス漫画文庫 た 1-1)

恋人プレイ 1 (幻冬舎コミックス漫画文庫 た 1-1)

(『恋人プレイ』は講談社の「アッパーズ」掲載で、素晴らしくエロい作品でした。玉置勉強さんは現在「バーズ」にて連載中。)


幻冬舍漫画文庫は、全体的に白を基調とした装丁で、タイトルは明朝体で統一されています。変にゴテゴテしている背表紙が多いなか、逆に目に付く印象が強いですね。


あと、マンガではない幻冬舍文庫でも幾つかマンガを出しています。こちらも注目。
ジョージ秋山先生の『銭ゲバ』『アシュラ』、よしりんの『おぼっちゃまくん』、ならやたかしさんの『ケンペーくん』等。*1


アシュラ (上) (幻冬舎文庫 (し-20-2))

アシュラ (上) (幻冬舎文庫 (し-20-2))

おぼっちゃまくん (1) (幻冬舎文庫)

おぼっちゃまくん (1) (幻冬舎文庫)

ケンペーくん (幻冬舎アウトロー文庫)

ケンペーくん (幻冬舎アウトロー文庫)


刺激的なラインナップです。できればアウトロー文庫とかから石ノ森版『家畜人ヤプー』を出して欲しいところですが・・・。江川版?はて何のことでしょうか。(´ω`)



竹書房


竹書房といえば麻雀と4コマです。
やはり文庫でもそれを引き継いでいるのは言うまでもありません。


スーパーヅガン―豊臣くん (1) (竹書房文庫)

スーパーヅガン―豊臣くん (1) (竹書房文庫)

自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)


ただそれだけかというとそうではなく、突然「リュウ三部作」と『ギルガメッシュ』を出したりもしました。経緯はよく判りません。


ギルガメッシュ (1) (竹書房文庫)

ギルガメッシュ (1) (竹書房文庫)


これが出たのは折しも20世紀末で、リュウの道』文庫版1巻の解説は『ノストラダムスの大予言』の五島勉氏が書いたりしていました。意図は判らなくもないですが、ちょっと苦笑いをしつつ読んだりしたものです。
それにしてもさっきから石ノ森先生のことばかり書いている気が・・・。(´ω`;)



メディアファクトリー


MF文庫の特徴は、傾向がまったく掴めないところです。
それでいて、かなりの数の名作を出してくるから侮れません。いや別にどこかの出版社を侮っている訳ではないのですがね。


紅い牙 (1) (MF文庫)

紅い牙 (1) (MF文庫)

マップス (1) (MF文庫)

マップス (1) (MF文庫)

東京探偵団 (1) (MF文庫)

東京探偵団 (1) (MF文庫)

鉄鍋のジャン (1) (MF文庫)

鉄鍋のジャン (1) (MF文庫)


上から最初の出版が集英社(後に白泉社)、学研、小学館秋田書店主婦の友社*2バラバラです。鉄鍋のジャン』に至っては何故秋田文庫から出なかったのか未だに意味不明です。新書版は新刊では入手困難で『R』は何事もなかったかのようにチャンピオンコミックスから出ていたり、いったい何なのでしょうね。
文庫版を出す権利を他社から買ってきているのだとは思いますが・・・。


そしてMF文庫、良い作品を数多く出すのですが、やはり版を重ねない傾向が強いのが困りものです。
さべあのま全集も途中まで買ってその後見掛けなくなりましたし、山田ミネコさんの「最終戦争シリーズ」も同様。('A`)
気になる作品はお早めに。
あと最近は、文庫にあまり力を入れていない印象があるのが残念なところ。



ぶんか社


そして個人的に最近注目しているのがぶんか社文庫
最近だと、望月三起也さんの作品を精力的に出していますね。全集の様相を呈しつつあります。



そして特徴的なのが、他の出版社で絶版(?)になっていた文庫作品を新たに出す点です。


望月三起也さんの『秘密探偵JA』もそうですし*3、MF文庫から出ていた名作『祝福王』も最近刊行が始まりました。


秘密探偵JA (1) (ホーム社漫画文庫)

秘密探偵JA (1) (ホーム社漫画文庫)

秘密探偵JA 1 (ぶんか社コミック文庫)

秘密探偵JA 1 (ぶんか社コミック文庫)

祝福王 (1) (MF文庫)

祝福王 (1) (MF文庫)

祝福王 1 (ぶんか社コミック文庫)

祝福王 1 (ぶんか社コミック文庫)

(画像がないですが、個人的には『祝福王』はMF文庫版表紙のほうが好きですね。)


ホラー系やレディース系の文庫版もちょくちょく出していて、これがまた粒ぞろいだったりします。


ゾンビ屋れい子 1 百合川サキ 編 (ホラーMコミック文庫)

ゾンビ屋れい子 1 百合川サキ 編 (ホラーMコミック文庫)



他にもエンターブレインとか少年画報社とかリイド社とか、朝日新聞出版とか中央公論新社とかも出していますが、ちょっと疲れたので割愛します。
また予想以上に長くなったのでこのあたりで一区切り。次はよりマイナー(?)な出版社に移ります。

*1:『ケンペーくん』は残念ながら絶版。増補新装版がブッキングから復刊していますね。

*2:さべあのまさんの作品は全集として出ています。他にも奇想天外社とか朝日ソノラマとか。

*3:最初の文庫版は集英社系列のホーム社文庫。