マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

『エニックスマンガ100』と『エニックスマンガ+60』

数日前に、以下の記事を連続して書きました。


ほんらいこの記事を書いたのは、そこに含まれていない出版社について書くためです。それが自分の予想より長文になってしまったという次第。
で、その出版社がどこかと言いますと、スクウェア・エニックスアスキー・メディアワークスですね。実際には他にもありますが。*1


これらの出版社が文庫を出さない理由についてはいろいろ考えられます。コンテンツ数が充分ではない、他ジャンル(アニメ・ライトノベル・ゲーム等)との連動作品の割合が高く「旬」が過ぎてしまっている(リアルタイムで、且つ他ジャンルの知識がないと面白さが理解されづらい傾向が高い)、等々。


ただ、それに加えて特殊な事情が絡んでいる(と考えられる)のがスクウェア・エニックスです。


つまり、2000年頃に起こった「エニックスお家騒動」ですね。
雑誌の方向性についてエニックス編集部内で対立が起こり、雑誌の方向転換に反撥した編集者の方々がマンガ家さんと一緒に会社を離脱してしまった一連の流れです。そして離脱した方々が設立したのがマッグガーデンな訳です。
詳細については、以下のサイト・記事に詳しく書かれています。


このお家騒動に伴い、嘗てエニックスから出版されていた作品が新装版としてマッグガーデンから出たりすることがあります。
天野こずえさんの作品とかが良い例ですね。


浪漫倶楽部 1 (BLADE COMICS)

浪漫倶楽部 1 (BLADE COMICS)

Aqua 1 (BLADE COMICS)

Aqua 1 (BLADE COMICS)


元々は「ガンガン」や「ステンシル」で連載されていましたが、現在はブレイドコミックスです。
ステンシル版『AQUA』とかはプレミアが付いてしまったりもしています。


裏を返して考えれば、新装版が出た作品はエニックス(現スクウェア・エニックス)で再び出ることはまずないという訳ですね。
つまりスクウェア・エニックスマッグガーデン間(もしかすると一迅社もか?)での、大人の事情が複雑に絡み合っている。作品の権利に関しては作者さんが権利を持つが、単純にそれのみならず出版社や編集者さんとの関係もあり・・・と。まぁこのあたりになると自分のような、いちマンガ好きに過ぎない人間の推測の域を出ませんがね。


そういった事情も関係しているのでしょう、お家騒動以前のガンガンコミックスは(新刊では)総じて入手困難です。古書店で捜すのが最もオーソドックスな手段となっています。
これまで読んでなかったけど、昔のガンガン作品を・・・という場合、ちょっと敷居が高くなってしまっていると言えます。


まぁ amazonマーケットプレイスとかを使えば比較的容易に入手できるのも確かですが、スクエニは実に多数の雑誌を出しており、且つ厚みがあるのが特徴と言えます。つまり作品数(単行本の数)はかなり多い。自分のようにこれまであまり手を出して来なかった人間が新たに手を出そうとした場合、どこから手を出したらいいものか判断が付きかねるという点もあります。絨毯爆撃をするほどの資金源も僕は持ち合わせてはいない訳でして。


と、ようやく長い前フリが終了しました。
今回ご紹介するのは、エニックスのマンガのレビューを行っている同人誌です。



  • 写真左:『たかひろ的研究館アーカイブ「第一書庫」』
  • 写真中:エニックスマンガ+60 Additional Edition』
  • 写真右:エニックスマンガ100 〜たかひろ的研究館オフライン〜』


上記リンク先、たかひろ的研究館さんが出した同人誌です。
主に取り上げるのは右側2冊、『エニックスマンガ〜』のほうです。


右2冊では、数あるスクエニのマンガ作品から厳選して選んだ名作・良作をレビューしています。とは言えその数は合計して160。作品によっては巻数が非常に多いものもあり、*2その労力に圧倒されるばかりです。


本の構成・レイアウトも非常に丁寧で、且つ内容的にも非常に凝縮されています。
1作品につき1ページという構成になっており、その限られた字数(約800字)の中で作品の位置付け・作者と経歴の紹介・作品の概略・連載時期ごとのレビューを全て行っています。それを全作品に対してやっている。


「レビュー」とはこういうものだよな、と感じ入りました。
僕もマンガに関するブログを書いている訳ですが、読み返してみるとレビューらしいものは殆ど書いていないなと痛感します。


そしてこの同人誌を読み進めていくと、如何に「お家騒動」がエニックスマンガに甚大な傷痕を残していったのかが浮かび上がってきます。
お家騒動時に勢いが急速に失われてそのまま終了とか、唐突な打切に見舞われたとか、その手の類のレビューが次から次へと出てくるのですよ。


その終わり方に対しての無念が滲み出たコメントを読むと、たかひろさんのスクエニマンガに対する熱い想いが伝わってきます。僕などはかなり無節操かつ断片的な(系統立ってない)読み方をしているので、特定のジャンルへの熱を持った文章を書くのが苦手なのですね。


優れたレビュー集であり、ブックガイドとしても一級品。
今回あまり触れないでしまった『アーカイブ』には、更に深い考察が収録されています。何れもお薦めです。
これを参考にしつつ、今後はより積極的にスクエニ系の作品にも手を出していきたいですね。

*1:ジャイブとかソフトバンククリエイティブとか。

*2:最も巻数が多いのは『ハーメルンのバイオリン弾き』の37巻かな?