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時折マンガの話をします。

ジャンプ黄金期の、裏側をゆるく振り返ってみる

昨晩、Twitterをやっていて「ジャンプ」の話でちょっと盛り上がりました。
DRAGON BALL』をリアルタイムで読んだのはいつ頃かとか、そういう話です。幅広い年代に読まれていながらも、世代ごとにいろいろと違いが出てきて面白いですね。


その話の中で、いわゆる「ジャンプ黄金期」の話が出てきました。
だいたい1990〜1995年あたりになるのでしょうか。『DRAGON BALL』『SLAM DUNK』『幽☆遊☆白書』が同時に連載されていて、その他にも『ジョジョ』もやっていて、他に挙げられるのは『ジャングルの王者ターちゃん』『燃える!! お兄さん』『ろくでなしBLUES』『まじかる☆タルるートくん』『ダイの大冒険』etc・・・。思い返してみて、確かに驚異的なラインナップだと思います。600万部という、今考えると冗談としか思えないような数字を叩き出したのも頷けるというものです。


ドラゴンボール 完全版 (1)   ジャンプコミックス

ドラゴンボール 完全版 (1) ジャンプコミックス

Slam dunk―完全版 (#1) (ジャンプ・コミックスデラックス)

Slam dunk―完全版 (#1) (ジャンプ・コミックスデラックス)

幽☆遊☆白書―完全版 (1) (ジャンプ・コミックス)

幽☆遊☆白書―完全版 (1) (ジャンプ・コミックス)


僕はいわゆるこの黄金期をリアルタイムで経験しているのですが、ただですね、よくよく考えてみるとそう単純な話ではないのです。光ある場所には影と言いますか、水面を優雅に進んでいる白鳥が実は水面下では必死に足をバタつかせている感じと言いますか、そういうものが垣間見えるのです。


この時期は、打切(が言い過ぎなら、短期での連載終了)作品の数も多いです。


考えてみれば必然とも言えます。人気作品が固まっている以上、それを押しのけて生き残るのは困難です。限られた枠の奪い合いみたいになる訳ですから、下位の回転率は現在よりも激しかったかもしれません。
そして黄金期の人気作品が強く印象に残る故に、早々に終わった作品は余計に顧みられない気がします。
そんな訳で今回は、ジャンプ黄金期のもうひとつの側面、数々の短期終了作品をサルベージしてみようと思います。


あと予め書いておきますと、自分自身うろ憶えです。細部にはかなり間違いがあるかもしれない点をご了承ください。


SILENT KNIGHT翔 1 (ジャンプコミックス)

SILENT KNIGHT翔 1 (ジャンプコミックス)


車田正美先生が『聖闘士星矢』の次に描いた作品ですね。1992年作品、全2巻。
正直、『聖闘士星矢』を薄くしたような内容だったという印象です。終わり方としては、「俺たちの闘いはこれからだ!」です。その終わり方にしても、車田先生には伝説の『男坂』があるだけに印象は薄くならざるを得ません。



巻来功士さんが『ゴッドサイダー』の後に描いた作品になります。1989〜1990年作品、全3巻。
墜落した飛行機に乗っていて行方不明になった娘夫婦(息子夫婦だったかも)と孫を捜すためにアマゾンに赴いたおじいさんが、そこで生き抜いていた孫と再会し、娘夫婦はジャングルの木と半ば一体化してミケランジェロのフレスコ画みたいになってしまっていて、その両親に育てられた(?)孫の蘭妙広樹は植物と意思の疎通が図れて自由自在に操ることができて・・・みたいな話です。そして広樹は日本に行くことになって、そこで何やら悪者と闘うことになるんですが、その黒幕が遺伝子操作か何かで怪物みたいになり、最終的にはぬりかべみたいな姿になっていました。


  • 梅澤勇人『酒呑☆ドージ』

酒呑☆ドージ 1 (ジャンプコミックス)

酒呑☆ドージ 1 (ジャンプコミックス)


『SWORD BREAKER』や『LIVE』『BOY』や『カウンタック』で知られる梅澤春人先生のデビュー作です。
デビュー当初は地味に別名義でした。1990年作品、全2巻。
酒呑童子の霊が乗り移っただったか生まれ変わりだったか、まぁ正直憶えていないのですが、酒を呑んでパワーアップして悪者を倒すお話です。早々に終わってしまった原因の一つとしては、背中からバットを出さなかったことがあるのではと推測しています。


  • 小畑健『力人伝説 〜鬼を継ぐもの〜』

力人伝説 1―鬼を継ぐ者 継承戦 (ジャンプコミックス)

力人伝説 1―鬼を継ぐ者 継承戦 (ジャンプコミックス)


今や最も有名なマンガ家の一人、小畑健先生の初期作品です。*11993年作品、全3巻。
題材は相撲です。若貴兄弟が主役です。これが連載されていたころの若貴兄弟、まだ若花田・貴花田だった頃だと思いますが、それはそれは大変なブームでしたよ。
そしてこの作品で描かれるのは、1960年代アメリカンホームドラマがたじろぐ程の家族愛、厳しくも真っ直ぐに息子たちに向き合う父の愛、そして揺るぎなき兄弟愛です。最早プロパガンダの域に達しています。
後年の二子山部屋の騒動を知っていると、何やら不思議な感情に襲われること請け合いです。



現在ではエロマンガ(というよりは官能劇画でしょうか)で知られる、鬼窪浩久先生の作品です。*21991年作品、全2巻。
タイトルどおり、アイルトン・セナの伝記的な内容です。鬼窪先生は荒木飛呂彦先生のアシスタントを勤めていた時期があり、荒木先生が原作を担当した伝記マンガの作画*3も担当していますね。
この作品が描かれた3年後にセナが事故死してしまい、復刊とかも難しいのかもしれません。
それにしてもこの時期は、こういう実在の人物を主役にした話がけっこうあった気がします。上の『力人伝説』もそうですし、岸大武郎てんぎゃん』とかもありました。あと、読切作品で『0の宇宙』という、宇宙論を題材にした作品までありました。こういった作品を描ける余地が、最近のジャンプにはなくなっているのかなぁと少々寂しくも感じます。



よろしくメカドック』等で知られる、次原隆二さんの作品です。因みに上に挙げた『0の宇宙』も次原隆二さんです。1989〜1990年作品、全2巻。
タイトルからも判るとおり、ゴルフマンガです。この作品で最も印象に残っているのは、全17話だったという点です。せめてあと1話・・・と思わずにはいられませんが、容赦なく連載を終了させるところに、ジャンプシステムの強固さを垣間みることができる気がします。


  • 真倉翔『天外君の華麗なる悩み』


1992年作品、全2巻。
真倉翔さんはどちらかというと、『地獄先生ぬ〜べ〜』やスピンオフ作品『霊媒師いずな』の原作者として知られていますね。
主役の天外君は、ヒゲに角刈り・学ラン姿で筋骨隆々。自ら「俺は硬派に生きたい」と語る漢です。しかし彼は特殊な体質でして、女性を惹き付けるフェロモンを常に異常分泌しています。その為、如何なる時も女の子が寄り付いて来てしまい、硬派から最も程遠い生き方になる。そしてそのことが自らの悩みという訳です。まったくもってけしからん話です。
この設定は、昨今隆盛(?)のハーレムもの、或いは「何故かモテる主人公」の初期の例として、強引にオタク史的な位置付けを行うことができるかもしれませんな。
因みにいつの間にか終わっていたので、どういう結末だったのかは判りません。



さて、随分長くなってしまいました。
他にも『セコンド』とか『不可思議堂綺譚』とか色々あるのですが、今回はこのあたりにて。

*1:原作:宮崎まさる。

*2:原作:西村幸祐

*3:ニコラ・テスラのやつ。『変人偏屈列伝』に収録。