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時折マンガの話をします。

このマンガ「も」すごい!:今年のマンガを個人的に振り返ってみる(その1)


仕事とかで忙しい時期が続き、気が付けば2週間ほど更新が滞っていました。
その間にあったことのひとつに、マンガ好きにとっては恒例と言えるでしょう、『このマンガがすごい!』『このマンガを読め!』といった、いわゆる「今年面白かったマンガランキング」の発表があります。


このマンガがすごい! 2011

このマンガがすごい! 2011

フリースタイル14 特集:THE BEST MANGA 2011 このマンガを読め!

フリースタイル14 特集:THE BEST MANGA 2011 このマンガを読め!


「読め!」のほうは今日あたり発売なのでしょうか、まだ自分は見掛けておらず、どのような順位になったのかは判りません。見付け次第読んでみようと思っています。で、「すごい!」のほうですが、あぁなるほどこれが来たか!とかまさかあの作品が!とかいろいろと考えつつ、愉しく読むことができました。


そうなると、やはり自分でもやってみたくなる訳でして。
あと自分の嗜好に偏りがあるためか、「これは凄い!」と思っているにも関わらずこういったランキングには顔が出づらい作品も少なからずあります。
まぁ、あまり順位を付けるのは好みではないので、今年「これは面白い!」と思った作品をいろいろと振り返ってみようかと思います。


※以下、インタビュー形式で書いています。
理由は「何となく書きやすい気がしたから」です。深い意味はありません。
ある程度のネタバレを含みますので、読み進める際はご注意ください。






―それでは早速ですが、今年のマンガで面白かったものを挙げてもらえればと思います。


そうですね、まずは諸星大二郎さんの西遊妖猿伝 西域篇』を挙げてみましょうか。


西遊妖猿伝 西域篇(2) (モーニング KC)

西遊妖猿伝 西域篇(2) (モーニング KC)


―いきなりそこからですか。


いや、しかし何故この作品が取り上げらないのか、正直不思議に感じます。絵柄が昨今の流行とは違うということかもしれませんが、あの絵柄、慣れると「やっぱりこの絵柄じゃないとダメだよな」というふうになる、独特の魅力があると思います。非常に読みやすいのですよ。まぁ絵柄云々ということを言えば、今年非常に高い評価を受けた『進撃の巨人』も決して巧いという訳ではないと思いますので、絵がダメと言っている人がいるとすればそれは単に食わず嫌いではないのかな、と考えています。
作中の至る処から、諸星大二郎さんの学識の深さが感じられますね。『西遊記』をベースにしつつ、『水滸伝』を始め数々の古典文学作品から着想を取り入れ、換骨奪胎して壮大なストーリーに磨き上げていく手腕は見事という他ありません。そういう元ネタ(或いは原典)をもっと読んでいれば更に面白く読めるのでしょうが、何かと忙しくてそれができずにいるのが辛いところです。


さて、次に挙げるのは、久慈光久さんの狼の口 ヴォルフスムント』です。


狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)

狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)

狼の口 ヴォルフスムント 2巻 (ビームコミックス)

狼の口 ヴォルフスムント 2巻 (ビームコミックス)


この容赦のない物語、素晴らしいですね。荒々しい筆致もこの世界観を表現する際に一役買っているように思います。


―でもきくちさん、あなたこれまで『狼の口』の感想とか特に書いていませんよね?何か唐突に出てきた印象があるんですが。


・・・いや書く予定はあるのですよ?と言うか、どういう切り口で感想を書くかも既に決めているのですよ?誰かに先を越されはしないかとビクビクしているのですよ?この時期、というか僕の職場は年から年中忙しいのですが、ここ最近はとりわけ忙しいのでなかなか更新できずに・・・(以下、言い訳が続くので省略)
狼の口』については近日公開予定の記事に詳細を譲るとして、今年トップクラスの印象的な作品でありながら、とある懐かしさも感じる作品であった、とだけ書いておきます。


では次。上野顕太郎さんの『さよならもいわずに』です。


さよならもいわずに (ビームコミックス)

さよならもいわずに (ビームコミックス)


この作品については、以前長文の感想記事を書いているので、そちらをご参照戴ければ幸いです。


―この作品は、『このマンガがすごい!』でも非常に高い評価を受けていましたね。そういえばこの作品に関連して、何か思うところがあるいう話を窺いました。詳しく聞かせて戴けますでしょうか?


はい。私事になりますが、このブログのアクセス数、1日あたりの数ですね、今月の2日あたりから着実に減少していた訳ですよ。まぁ先程から書いてますように更新が滞り気味ですから、ごく当り前の現象です。
それがですね、今月10日に突然アクセスが増えたんですね。前回の更新が6日で、それも簡単な感想を書いただけだったので、如何にも不自然な上昇でした。それで調べてみたところ、殆どの人が「さよならもいわずに」で検索をかけていたのですよ。
つまり『このマンガがすごい!』が発売されて、結果を知った方が、どんな作品なのか調べようと「さよならもいわずに」をネットで検索して、僕のブログに来てくださったということです。で、それにしてもこの数の増え方は奇妙だなと思って、試しに自分でも Google検索かけてみたんです。


そうしたらですね、Amazon の次に自分のブログがあるのですよ。上から2〜3番目。これを書いている20日の時点でもその状態です。


―?自慢ですか?


いやいやそうではなくてですね、まぁ確かにありがたいことではあるのですが、俺ごときのブログ記事が検索でトップに来てしまう状況は如何なものかと。要はネット上でこの作品について書いている人が極端に少ないということですよね。こういうランキングとネット上の話題というのは、場合によっては相当に乖離しているのだな、と改めて感じたりもしました。


と、些か脱線が過ぎたので、本筋に戻しましょう。印象的だったマンガの話です。次に挙げるのは・・・そうですね、高橋のぼるさんの『阿呆鳥の唄』です。


阿呆鳥の唄 1 (ヤングジャンプコミックス BJ)

阿呆鳥の唄 1 (ヤングジャンプコミックス BJ)

阿呆鳥の唄 2 (ヤングジャンプコミックス BJ)

阿呆鳥の唄 2 (ヤングジャンプコミックス BJ)


これに関しても、以前感想記事を書いているので詳細はそちらをご覧戴ければと。


このエロネタ的な何か(決してエロそのものではない)と破天荒さ、実に素晴らしい。更なるエキセントリックなキャラクターやホールの登場・もはや芸の域に達している竹虎鉄生の今後の言動に期待せざるを得ません。


さて、やや特殊な作品が占める率が高かったので、1つくらいはメジャーどころを入れておきましょう。荒川弘さんの『鋼の錬金術師』です。


鋼の錬金術師 27 (ガンガンコミックス)

鋼の錬金術師 27 (ガンガンコミックス)


―確か、10月あたりに一気読みしていましたよね?


ええ、何年か前に実家に帰省したとき、姉が買っていた単行本を9巻あたりまで読んで「これは凄い!」と思ったんですが、何故か続きを買わずにいたんです。そして単行本20巻を超えたあたりからですか、ネット上での話題も相当凄くなってきて、盛り上がりがヤバいというのも聞き及んでいたのですが、それでも買わずにいた。ネタバレ回避に必死でしたよ。しかし完結巻はリアルタイムで読みたいと思いまして、思い立ったが吉日と一気に買い集めました。
失敗したと思いましたよ。何でもっと早く読んでいなかったのかと。


これは凄い作品だ、単なるファンタジーとは違うという確信を得たのは、やはりニーナとアレキサンダーのエピソードですね。


―あれは衝撃でした。


そして最終話、「全てを取り戻す旅」を終えたエドとアルの二人が、新たなる旅へ向かおうとする。その際のアルの台詞を読んだ際の感動たるや。

僕達が
助けられなかった
女の子がいます


その子を
ずっと
忘れる事が
できません


荒川弘鋼の錬金術師』27巻177ページ。


これは読者の思いですよ。少なくとも『鋼の錬金術師』を読んでいて、僕が長く抱いていた思いです。この台詞が最後に出てきた。序盤で描かれたあのエピソードが、物語の「その後」を示唆する台詞として回収される。見事でありました。そして最後の最後、あの描き下ろしがですね、こう、沁み入ってくるのですよ。


と、長くなってきたので、一旦区切り。
その2に続きます。