『たいようのいえ』における文字の演出
先日、『たいようのいえ』5巻を購入しました。
- 作者: タアモ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/02/13
- メディア: コミック
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「家族」或いは「家」の在り方を問いかける、重い一面を物語の背景に据えつつも、登場キャラクターの恋愛模様がタアモさんの柔らかな筆致で実に甘酸っぱく、そして時にほろ苦く描かれています。ヒロインの真魚や親友のちーちゃん等の、狼狽えた際の表情とかが実に素晴らしいですね。
真魚が居候している幼馴染み・基の家も少しずつ嘗ての姿に戻りつつある気配を見せつつ、それでいて新たな問題を多数抱えつつあるようで・・・と、相変わらず今後の展開に目が離せない状況です。
さて、そんな『たいようのいえ』ですが、5巻でちょっと気になる表現というか、演出みたいなものを見掛けました。こちらになります。
第17話「男の子の気持ち」における、夏祭り・花火大会の場面になります。この回では、基や真魚・ちーちゃんたちが、様々な要因で自分の想いをそのまま伝えることができない様子が描かれます。そしてこの作品における主要キャラクターを描きつつ、ほぼ全員に共通するかのような心情がモノローグ的なかたちで添えられています。
そして、上で引用した画像の一番下のコマに注目してください。
モノローグ「願ってるんだ」の「だ」の部分だけ黒地に白抜き文字になっているのが判るかと思います。
これは、明確な意図があります。
真魚は作中で、実体験に基づいたケータイ小説を書いているという設定なので、それを踏まえた演出なのですね。
この一連のモノローグをちょっと引用させて戴きます。
こんなに
人が
たくさんいるのに
本当に一緒にいたい人は
たった1人だけで
その裏側で泣くことになっても
その人の幸せを
願ってるんだ
(同書14〜15ページ。)
一つのコマにつき1〜2行、大きく隙間を空けてこの一連のモノローグは配置されています。そしてこれは全て横書きで書かれています。
横書きで、且つ短い文章で改行を多く用いる、ケータイ小説そのものの文体である訳です。そしてそのような演出であることが、モノローグを読み進めた最後の一文字で判る。
さりげないながらも、実に巧い演出であると思いますね。
という訳で、簡単ながら今回はこのあたりにて。