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時折マンガの話をします。

『同人王』小ネタ集

少し前に、『同人王』の感想を書きました。


リンク先の感想は比較的直球で書いたものですが、今回は変化球というか、小ネタっぽいものを幾つか取り上げてみようかと思います。



【消えた余白について】


まずはこちらの写真をご覧ください。



『同人王』の小口部分です。
右側が、他と比べて妙に黒っぽいのが判るかと思います。具体的には47〜208ページ(第3話後半〜第11話まで)となります。該当ページは何故か、小口側に余白がない(間白で仕切られず、コマがページの端まで行っている)ケースが殆どなのです。



(牛帝『同人王』63ページ。)


これは同人誌即売会にて、タケオがあまりにも自分の同人誌が売れないために、タダにしてでも捌いてしまおうとしている場面です。「バン」というオノマトペに注目して戴きたいのですが、文字が僅かに断ち切れてしまっているのが判るかと思います。
これは作品を発表した媒体・フォーマットが何か影響しているのか、製本時に何かあったのか。
まぁ、読む際には特に気にならない筈ですのでご安心ください。



【元ネタについて】


この作品じたいが「同人界の王になる」という内容故と言いますか、当然の如くパロディネタが幾つも出てきます。幾つかご紹介してみます。



(同書31ページ。)


タケオの親友(後のライバル)・真一が、タケオと共にエロ同人の頂点に立つことを決意する場面です。半ば説明不要かもしれませんが、この邪悪な笑みは、藤田和日郎さんの大傑作『うしおととら』の宿敵・白面の者のパロディですな(アニメ史上屈指の名作『ガンバの冒険』のボス、ノロイにも似ているかな、とも)。



(同書182ページ。)


こちらこそ、説明不要ですかね。どれほどの作品でパロディとして用いられたか。
余談になりますが、姉も使ったことがあります。
因みにこの場面、画力を上げる練習(模写)をしている場面ですが、模写の対象としてタケオが選んだのが西岸良平さん。選択が渋いです。



(同書183ページ。)


練習の休憩時間に、Eカード→焼き土下座のコンボ。
これも非常に判り易いですね。



(同書59ページ。)

同人誌即売会にて、目的の同人誌・サークルに向かって突撃する参加者。
因みにこの作品世界では、即売会会場内は全裸です。
これは『皇国の守護者』(マンガ版)の1コマからになりますね。この「突撃」の構図は使い易いのでありましょう、終盤でも用いられています。


そして、同人誌即売会開場直後の突進は作中で都合3回用いられるのですが、残り1回がこちら。



(同書266ページ。)


これは元ネタ作品を持っている方が比較的少ないと思われますので、画像を挙げておきます。



(原作:宮崎惇、劇画:ふくしま政美聖マッスル太田出版、110〜111ページ。)


女犯坊』でも知られる劇画家、ふくしま政美先生によるカルト的作品『聖マッスル』のパロディなのですな。この作品をざっくりと説明すると、全裸で目を醒ました肉体美溢れる青年が自らの記憶が無いことに気付き、自らが何者かを知るために全裸で放浪する物語です。
因みに上の画像は、青年(全裸)が旅を続けて訪れた街で、人口調節(口減らし)目的で行われている「死のマラソン」の一場面。
全裸率が無闇に高いこの作品、即売会内では全裸という『同人王』との親和性は高いかもしれませんね。
そしてこの作品、『同人王』が掲載された「電脳マヴォ」の責任編集・竹熊健太郎さんが絶賛している作品でもあります。
太田出版で最初に復刻された『聖マッスル』(QJマンガ選書)の解説も執筆されています。もしかすると、執筆(加筆修正)の際に何かアドバイス的なものはあったかもしれませんね。出版社も同じ太田出版ですし。


そして竹熊健太郎さん関連でもうひとつ。



(牛帝『同人王』356ページ。)


肉便器先生が野球のユニフォームを身に纏いつつエロマンガ指南をする場面ですが、



相原コージ竹熊健太郎サルまん サルでも描けるまんが教室21世紀愛蔵版』上巻40ページ。)


サルまん』で描かれた野球選手(?)のポーズに似ている気もしますね。
案外、これを見ながら描いたのかもしれませんね。『サルまん』の次のページ(41ページ)でも「見て描きゃいいんだ!! 見て描きゃ!! ほらっ!!」と言っていますし。


といったところで、小ネタ集でした。