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時折マンガの話をします。

やはり紙の本は良い。伊図透『銃座のウルナ』の装丁

先日、良いコミックさんによる年1回の恒例記事、「この装丁がすごい!」2015年版が公開されました。


今年もたいへんな力作で、読んでいて圧倒されました。
取り上げられる作品の量もさることながら、ジャンルの幅広さも驚異的でして、新規開拓をしようとする際にも実に参考になる企画でもあると思います。「装丁」という視点を軸とした解説も秀逸で、かなりの長文であるにも関わらず惹き込まれてしまいます。


という訳で、と言いますか何と言いますか、ちょっと自分も何か書いてみたくなったので、尻馬に乗るようなかたちで装丁が面白いなと感じた作品を紹介してみようかと思います。



その作品が記事タイトルでも触れた、伊図透さんの『銃座のウルナ』です。


銃座のウルナ 1 (ビームコミックス)

銃座のウルナ 1 (ビームコミックス)


『銃座のウルナ』は「コミックビーム」で連載されているSF作品です。


舞台となるのは、風雪吹き荒ぶ島・リズル。その島に狙撃兵としてウルナ(♀)が赴任するところから、物語は始まります。
ウルナが生まれ育った国・レズモアは、隣国エコールと交戦状態にあります。ある理由から、ウルナはレズモア・エコール間の最前線への赴任を強く望みますが、送られた場所はそことは大きく隔絶したリズル島。そこにはヅードという蛮族が生息しており、その蛮族との紛争も発生している。
もうひとつの最前線とも言えるその島で、ヅードとの戦いを通じてウルナが見たものとは...という筋立てとなっています。


作者の伊図透さんは、これまでに『ミツバチのキス』や『エイス』といった作品を描いていますが、個人的な印象では、独特のイマジネーションに溢れる「異形」の描写が見事だな、と思っています。
『銃座のウルナ』におけるヅードの造型とか、ちょっと只事ではないですよ。今後の展開も含め非常に気になる作品なので、ご興味のある方はご一読を。


そしてこの本の装丁が、実に独特なんですね。
上の画像を見て、気づかれた方はいるでしょうか。Amazon の画像で、帯付のものってけっこう珍しくないでしょうか?



『銃座のウルナ』の画像が帯付なのはちゃんと理由がありまして、一言で答えてしまえば「これは帯ではない」んですね。
何を訳の判らぬことを、と思われるかもしれませんが、実際にご覧戴くのが判りやすいかと。



こちらが現物。
これだとちょっと判りづらいので、近くに寄った写真を見てみましょう。



隙間があるのがお判りでしょうか?
最初にシュリンクを破いて手に取ったとき、あれ?天地両方に帯が付いているのか?とか思ったのですが、ちょっとカバーを手に取ってみると、それも違うということが理解できるのですね。



カバー折り返し部分。
繋がっているのです。帯に見えたものは、1枚のカバーの天地部分を折っている部分なのですね。喩えるなら、「書店で掛けてもらうブックカバーの裏表を逆にした状態のもの」が単行本カバーになっているとでも言いますか。


そしてこのカバー、広げてみると...



イラストの全体像が現れる、という仕掛け。



裏側はこんな感じ。
「銃座の」と「ウルナ」が反対側になっているのが判るかと思います。これを折り返して巻き付けることで、Amazon の画像・或いは最初に上げた写真のようになる訳です。
単行本のカバーは裏表で紙質が違うと言いますか、基本的に表紙側のみ加工されていますので、実際に本を手に取ったときの手触りが、天地部分(タイトルが記載されている箇所)と真ん中のイラスト部分では違う。この感触の違いも面白いなと感じたりします。



最近は家の中を本が圧迫しつつあり、電子書籍への移行もちょっと本格的に考えないといかんなと思っていまして、少しずつ進めている最中です。
やはり場所を取らないのは電子書籍の大きな利点なのですが、こういうのがあるから、紙の本は完全には捨てられないなとも思ったりしています。


といったところで、本日はこのあたりにて。