マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

過去記事がコンビニ本に勝手に使われていたうえ、雑なコピペが原因で恥ずかしい文章になっていた

昨晩 twitter のTLに、このようなツイートが RTで流れてきました。


添付されている写真から判断すると、水木しげるセンセイ作品にこのような元ネタが...的な本らしいというのが判ります。そして恐らくはツッコミどころ満載な内容なのだろうという予測もできる。
自分も水木センセイファンの端くれとして、どれどれどのような内容か...と写真を拝見してみたところ、2枚目の写真に既視感を感じたのです。


はて、この写真下部にある文章どこかで...と思った訳ですが、


俺の過去記事だ ٩( 'ω' )و


まぁ偶然かもしれない。
これは比較検証してみる必要があるだろう、と思いましたので、



買ってきました。(^ω^ )
鉄人社から出ている、『人気マンガ・アニメの怖い元ネタ』という本になります。いわゆるコンビニ本というやつですね。
「この作品には実はこのような元ネタが...」というのを集めた内容となっています。


冒頭のツイートにあった該当箇所は、「第四章 あの名作の知られざるネタ元」の最初を飾る、「水木しげるが生んだすごい妖怪たちの元ネタ」という項になります。126〜129ページがその項にあたります。
そして既視感を感じた文章は以下のくだりになります。

 そもそも、水木しげるは元ネタが多い作風で有名だった。
 たとえば、「鬼太郎ベトナム戦記のラストシーンはプドフキン監督の映画「母」を参考にしたものだし、戦争マンガの傑作「幽霊艦長」のエンディングは、1958年の映画「灰とダイヤモンド」と同じだ。「ゲゲゲの鬼太郎」だけでなく、様々なソースから引用をしているわけだ。
(『人気マンガ・アニメの怖い元ネタ』128ページ。)

実はこの引用箇所じたいにかなり恥ずかしい間違いがあったりするのですが、それに関しては追って触れます。
では、自分の過去記事を参照してみることにします。


m-kikuchi.hatenablog.com



4年ほど前に書いたものになりますね。
詳細はリンク先をご参照戴ければと思いますが、該当箇所を引用しておきます。

水木センセイの作品には少なからず元ネタがある、というのはそれなりに有名な話です。これは何も妖怪絵に限った話ではないのですね。実例を挙げてみましょう。



水木しげる『幽霊艦長』ちくま文庫版、287ページ。)


この画像は、『白い旗』という作品のクライマックスです。水木センセイは戦記マンガも多数描かれていますが、数ある作品の中でも有名な、戦記ものの代表作のひとつと言えるでしょう。
硫黄島での玉砕で僅かに生き残った部下の命を救うため、砲弾が飛び交う中でひたすらに白旗を降り続けた隊長が、一人残らず死に絶えるまで抗戦するべしと考える別の日本軍将校の命令で射殺されてしまう場面。戦争の理不尽・無意味さが淡々と、しかし静かに燃えるように描かれる名編です。
そしてこの場面の元ネタがこちら。


灰とダイヤモンド [DVD]

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ポーランド映画界の巨匠、アンジェイ・ワイダ監督の代表作『灰とダイヤモンド』。
第二次大戦後のポーランドレジスタンスグループの対立(自由主義側とソ連側)を背景に、テロリズムに走ることになる青年の悲劇を描いた名作です。そのラストシーンが、上の画像です。
これ以外にも、『鬼太郎ベトナム戦記』のラストシーンは、旧ソ連を代表する映画監督の一人、フセヴォロド・プドフキン監督の代表作『母』が元ネタだったりもしますね。


母 [DVD]

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やはり俺の過去記事を元に書いている、と思わざるを得ないですな。٩( 'ω' )و
先ほど触れた「かなり恥ずかしい間違い」も傍証のひとつとなっています。灰とダイヤモンド』のラストシーンを元にしている作品、『幽霊艦長』じゃないんですよ。『白い旗』です。


自分の過去記事の引用箇所、ちょっと説明不足だったかもしれませんが、『白い旗』という作品は、ちくま文庫版『幽霊艦長』に収録されている短編のひとつなのですね。戦記マンガを集めた短編集なのですが、タイトルとなったのはその中のひとつ『幽霊艦長』であるということです。
なので引用した画像の出典には「水木しげる『幽霊艦長』ちくま文庫版、287ページ。」と書いた訳です。
しかしながら『人気マンガ・アニメの〜』の執筆者氏はそれに気付かず、出典箇所のみ読んで『幽霊艦長』のラストシーンの元ネタが『灰とダイヤモンド』だと判断してしまった模様。


画像の直後に「この画像は、『白い旗』という作品のクライマックスです。」と書いたのですが、どうやら伝わらなかったようで、自らの説明力不足を嘆かねばならないのでありましょう。
まぁ、『幽霊艦長』ならびに『白い旗』をちゃんと読んでいれば、間違えようがない筈なのですが。
(^ω^ )


『人気マンガ・アニメの怖い元ネタ』には元ネタ(自分の過去記事)が存在して、且つそれを誤読して勘違いをしたまま出版するという、体を張ったギャグなのかなと感じた次第です。
他の箇所はどうなのかも気になるところではありますね。


といったところで、本日はこのあたりにて。