先日(8月9日)、秋葉原UDXビルにて開催された「大まん祭」のトークイベントを拝聴してきました。
今日は秋葉原UDXで開催されていた大まん祭の資料性博覧会行って何冊か本を買ったり、川勝徳重さんのトークショーを拝聴したりとんかつ茶漬け食ったりしてきた
— きくち (@m_kikuchi_) 2024年8月10日
戦前〜戦中刊行のナカムラ・マンガ・ライブラリーを時期ごとに区分しつつ縦横無尽に語り尽くす刺激的なトークだった pic.twitter.com/vtsWeG5t6K
戦前〜戦中期に刊行された「ナカムラ・マンガ・ライブラリー」ならびに「ナカムラ繪叢書」全100冊をすべて読んで解説する、という空前絶後の連載『夢と重力』を完結させた、マンガ家の川勝徳重さんによるトークショーです。
これがまた実に面白かったのですが、拝聴していて強く感じたのが、この時代のマンガを知るうえで、1938(昭和13)年10月に内務省により通達された「児童読物改善ニ関スル指示要綱」について理解しておくことが重要なのだな、という点です。
この指示要項に基づき、「ナカムラ・マンガ・ライブラリー」は「ナカムラ繪叢書」に名称変更を行い、描かれるマンガの内容もかなり大きな方向転換が為される。
ではその指示要項、どのような内容なのだろうか?と思い、国立国会図書館デジタルコレクションを利用して読んでみたところ、それほど長いものでもない。
なので、自分の理解にも繋がるかと思い、書き起こしをしてみました。*1
旧字体も可能な限りそのまま再現することに努めましたが、間違いがあるかもしれませんのでその点はご容赦のほどを。
あとインデントというのですか、改行諸々をPC準拠で行ったので、スマートフォンで読むとかなり改行がおかしくなっていますので予めご了承戴ければと。
廢止スベキ事項
一、活 字
(1)六號及ビ八ポイント以下ノ活字ノ使用ー但シ幼兒向ノモノニアリテハ十二ポイ
ント以上タルコト
(2)振假名ノ使用ー但シ特殊ノモノ、固有名詞ハコノ限リニ非ズ
(注意)
(1)右ノ廢止に因リ行間ヲ詰メルコトナキヤウ注意スルコト
(2)色刷ノ上ニ印刷スル場合ニ於テハ特ニ活字ノ大キサ、色彩ノ配合ヲ注意スル
コト
一、懸 賞
何等實質的内容ヲ有セズ、専ラ營業政策上ニ利用セルモノ
一、廣 告
(1)誇大ナル自家廣告ノ掲載
(2)宮家献上又ハ御買上の記事ノ掲載
(3)顧問、賛助員ノ列記
(4)誇大ナル豫告ノ掲載
(イ)次號豫告
(ロ)連載豫告 等
一、附録(オマケ)
一、卑猥ナル挿畫
一、卑猥俗惡ナル漫畫及ビ用語ー赤本漫畫及ビコノ種程度ノモノ一切
一、極端ニ粗惡ナル繪本ー實物ト餘リニカケ離レタルモノ、餘リニ粗惡ナル色彩ノモ
ノ等
一、内容ノ野卑、陰惨、獵奇的ニ渉ル讀物
一、過度に感傷的ナルモノ、病的ナルモノ
其ノ他小説ノ戀愛描寫ハ回避シ、「驅け落ち者」等ノ言葉ハ少年少女の小説ヨリ
排スルコト
編輯上ノ注意事項
一、教訓的タラズシテ教育的タルコト
一、年齢ニ依リソノ教化及用語ノ程度ヲ考慮スルコト
(1)五、六才前後ノモノー(イ)繪ハ極メテ健全ナルモノタルコト
(ロ)童話ハ題材ヲ自然ノ凡ユルモノニ求メテ、空想的
ニシテ詩情豐カナルモノ
特ニ母性愛ノ現ハレタルモノタルコト
十才以上ノモノー將來ノ人格ノ基礎ガ作ラレル最モ大切ナル時代ナルヲ以テ、
敬神、忠孝、奉仕、正直、誠實、謙譲、勇氣、愛情等日本
精神ノ確立ニ資スルモノタルコト
又生産ノ知識、科學知識(空想デ有ツテハナラナイ)ヲ
興ヘルモノヲ取入ルコト
(2)用語ハ年齢ニ從ツテ漢字ヲ用ヒ、教科書の範圍ヲ出デザルコト
一、編輯ノ單純化ヲ図ルコトー例ヘバ活字ノ配合、色彩ノ單純化、記事面ト廣告面ノ
區別等
一、掲載記事ニ對シテ比例制度を確立スルコトー漫畫、小説、記事等ノ割合
一、假作物語ヲ制限スルコトー現在ノ半數以下ニ減ジ、且ツソノ假作物語中ノ時代小
説ノ幾篇カヲ小國民ノ生活ニ近イ物語又ハ日本國民史ヨリノ建設的ナル部分ニ取
材セルモノト代ヘ又冒險小説の幾篇カヲ探險譚、發見譚ノ如キモノニ代ヘルコト
ヲ考慮スルコト
尚コノ減頁ニ依ツテ得タル頁ヲ左ノ如キ記事ニ充ツルコト
(イ)科學的知識ニ關スルモノー從來ノ自然科學ソノモノヲ誠實ニ興味深ク述ベ
タモノ以外ニ科學的知識ヲ啓發スル藝術作品ヲ取上グルコト(例ヘバ、爆
彈、タンク、飛行機等ノ如キモノニシテモ、ソレ等ノモノノ持ツ機能ヤ本
質ニ觸レ得ルテーマノモトニ取扱フコト)
以上ノ他、地理、風俗等ニ關スルモノモ取入ルルコト
(ロ)歴史的知識ニ關スルモノー忠臣、孝子、節婦等ノ傳記モノハモトヨリ國民
全體又ハ一ツノ集團ノ困難、奮闘、發展等ヲ叙シタルモノ、即チ國民史的
記事ヲ取上グルコト
(ハ)古典ヲ平易ニ解説セルモノヲ取上グルコトー但シ兒童ノ讀物ニ適スルモノ
タルコト
一、漫畫ノ量ヲ減ズルコトー特ニ長篇漫畫ヲ減ズルコト
一、記事ハ可及的ニ専門家ヲ動員スルコトー科學記事ハ科學者ニ、基礎的經濟思想
(經濟知識ニ非ズ)ハ經濟學者、實業家ニ等
一、華美ナル消費面ノ偏重を避ケ、生産面、文化ノ活躍面ヲ取入ルルコト
一、子供ノ質疑ヲ本格的ニ取扱ヒ生活化スル工夫ヲ計ルコト
一、幼年雜誌及ビ繪本ニ「母の頁」ヲ設ケ、「讀ませ方」「讀んだ後の指導法」等ヲ
解説スルコト
一、事變記事ノ扱ヒ方ハ、單ニ戰爭美談ノミナラズ、例ヘバ「支那の子供は如何なる
遊びをするか」「支那の子供は如何なるおやつを喰べるか」等支那ノ子供ノ生活
ニ關スルモノ又ハ支那ノ風物ニ關スルモノ等子供ノ關心ノ對象トナルベキモノヲ
取上ゲ、子供ニ支那ニ關スル知識ヲ興ヘ以テ日支ノ提携ヲ積極的ニ強調スルヤウ
取計ラフコト。從ツテ皇軍ノ勇猛果敢ナルコトヲ強調スルノ餘リ、支那兵ヲ非常
識ニ戯畫化シ、或ハ敵慨心ヲ唆ル餘リ支那人ヲ侮辱スル所謂「チャンコロ」等ニ
類スル言葉ヲ使用スルコトハ一切排スルコト
一、挿畫漫畫ニハ責任者ノ名ヲ明記スルコト
以上ハ子供雜誌ヲ基準トシテ立案セルモノナルガ、單行本、漫畫専門雜誌等ニ就テモ右ノ方針ニ準ジテ取扱フコト