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時折マンガの話をします。

今年のマンガを振り返る、独りサルベージ座談会・前編(長文)

昨日、『このマンガがすごい!2009』の真似事ということで、自分でもランキングを選出してみました。


しかしこういうのをやってみると、どうしても切り捨てられてしまうタイトルが多数あります。実際に回答しておられる方々は、断腸の思いで選んでおられるのでしょうね。
僕が選んでみた各6作品以外にも、「あれも面白かったな」という作品はたくさん存在します。実際のところ順位というのはそれほど重要ではありません。そんな訳で今回は、今年読んだ作品で印象に残っているものを座談会形式で振り返りつつ拾い上げていこうかと思います。参加者は以下のとおり。

  • きくち:僕です。
  • A:司会進行役。
  • B:コメント担当。


A それではまず、いちいちリンク先を辿るのは面倒なのであなたが選んだランキングを書き出してみましょう。掲載誌も併せて書いておきます。
 お手数をかけます。

【オトコ編】


6位:鶴田謙二『おもいでエマノン』(コミックリュウ
5位:篠房六郎百舌谷さん逆上する』(アフタヌーン
4位:高橋葉介もののけ草紙』(ホラーM
3位:長谷川哲也『ナポレオン −獅子の時代−』(ヤングキングアワーズ
2位:安倍夜郎深夜食堂』(ビッグコミックオリジナル
1位:カラスヤサトシ『おのぼり物語』(まんがくらぶ


【オンナ編】


6位:小玉ユキ坂道のアポロン』(flowers)
5位:宇仁田ゆみうさぎドロップ』(フィールヤング
4位:押切蓮介ミスミソウ』(ホラーM
3位:船戸明里Under the Rose』(web スピカ)
2位:岩本ナオ雨無村役場産業課兼観光係』(flowers増刊凛花
1位:末次由紀ちはやふる』(BE・LOVE


A 雑誌もバラバラですね。
 基本は単行本派で、気になったものはジャンル問わず手を出すようにしていますので。おかげで穴あきチーズのような、半端な読み方になっています。
B ところで何で同じ「ホラーM」なのに、『もののけ草紙』はオトコ編で『ミスミソウ』はオンナ編になってるの?
 ・・・何となくこうかな、と。深い意味はないです。



【少年誌作品は、入れるタイミングが難しい】


A 『このマンガが〜』のほうでも同様の言及がありましたけど、少年誌が入っていませんね。
 面白い作品はたくさんありますけどね。最近の少年誌は連載が長期化する傾向が強く、数年にまたがって連載しているケースが珍しくありません。面白いけど何年も前からやっていて、今年入れるのはどうなのか悩むということはあるかと思います。
B 『ONE PIECE』や『HUNTER×HUNTER』が良い例だな。

ONE PIECE 52 (ジャンプコミックス)

ONE PIECE 52 (ジャンプコミックス)

HUNTER X HUNTER26 (ジャンプ・コミックス)

HUNTER X HUNTER26 (ジャンプ・コミックス)


 そうですね。『ONE PIECE』は一時期中だるみしていたかと思いましたが、ここ何ヶ月かでまた目が離せなくなってきました。盛り上げ方と伏線の張り方が神懸かっていますね。でもランキング入りさせる時期かと言われると、チョッパー初登場のあたりとかアラバスタあたりで入るのが最も相応しいような気も。
A なるほど。そんな中で拾い上げたい作品はありますか?
 ジャンプだと『SKET DANCE』に『ダブルアーツ』、SQから『TISTA』と『放課後ウインド・オーケストラ』、チャンピオンでは『弱虫ペダル』あたりは外せないですね。

SKET DANCE 5 (ジャンプコミックス)

SKET DANCE 5 (ジャンプコミックス)

ダブルアーツ 1 (ジャンプコミックス)

ダブルアーツ 1 (ジャンプコミックス)

TISTA 2 (ジャンプコミックス)

TISTA 2 (ジャンプコミックス)

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[rakuten:hyoutan:10012144:detail]


B 『ダブルアーツ』と『TISTA』は打ち切りの匂いがしたけど。
 正直理解に苦しみました。どちらも非常に丁寧な心理描写をしていましたし、とりわけ後者はアクションシーンも非常に格好良かったので。ジャンプ系でアクション要素のある作品を描くためには、人間離れした身体能力が前提になるのでしょうか。
SKET DANCE』は笑いの感覚が非常にツボでした。『放課後〜』と『弱虫ペダル』は部活動にハマりこんでいく様子がいいですね。とりわけ『弱虫ペダル』の熱さは素晴らしいです。
A サンデーとマガジンはどうですか?
 う〜む、最近雑誌も飛ばし読み気味で・・・。『金剛番長』と『月光条例』かな?マガジンが入っていませんが、先程の連載期間との兼ね合いということで。

金剛番長 1 (少年サンデーコミックス)

金剛番長 1 (少年サンデーコミックス)

月光条例 1 (少年サンデーコミックス)

月光条例 1 (少年サンデーコミックス)


B 『金剛番長』は決め台詞の「知ったことかー!」そのままの、理屈抜きの面白さがあるよな。でも『月光条例』に関しては、どうしても『うしおととら』と比べてしまうんだよな。
 単発エピソードが多くて、それ以前の連載に比べると物語の広がりがまだ少ないというのはありますね。でもそこは藤田先生、きっと何かやってくれる筈という期待を持っています。
A では少年誌はこのくらいにして、青年誌のほうに移りましょう。



【萌えるだけでなく、燃え上がるような作品を】


A 青年誌と言っても大量にあるので、とりあえずサルベージしたい作品を挙げてみてもらっていいですか。
 ではまず週刊のものから。ヤングマガジンだと『好色哀歌元バレーボーイズ』に『COPPELION』、スピリッツからは『ギャラクシー銀座』と『ヴィルトゥス』、ヤングジャンプでは『キングダム』あたりを挙げておきます。

COPPELION(1) (ヤンマガKCスペシャル)

COPPELION(1) (ヤンマガKCスペシャル)

ギャラクシー銀座 1 (ビッグコミックススペシャル)

ギャラクシー銀座 1 (ビッグコミックススペシャル)

ヴィルトゥス 1 (ビッグコミックス)

ヴィルトゥス 1 (ビッグコミックス)

キングダム 11 (ヤングジャンプコミックス)

キングダム 11 (ヤングジャンプコミックス)


B またえらく暑苦しいラインナップだな。
 『好色哀歌〜』は、このタイトルに変わってから異様に重苦しい展開になって目が離せないです。凄みがありますよね。『COPPELION』はアウトブレイクものですが、そこに美少女3人組を配置するという妙が実にいい。『ギャラクシー銀座』は、複数のエピソード(?)がひとつに繋がりつつもとにかく訳が判らない展開が凄いですね。『ヴィルトゥス』は何故スピリッツに連載しているのか未だ謎です。異彩を放ち過ぎています。でもあの骨太感はお気に入りです。『キングダム』は、王騎将軍っているでしょう?ああいう、常に不敵な笑みを浮かべているようなオッサンキャラがツボです。
B 例えは古いけど、『蒼天航路』の徐栄みたいな?
 そうですそうです!それだけに呂府に頭を握り潰された時のショックたるや・・・
A 話の腰を折るようで恐縮ですが、『蒼天航路』繋がりということで、モーニングの作品を入れていませんね?本家のランキングではモーニング勢の躍進が目立ちましたが・・・。
 当然素晴らしい作品が多いのは判っていますが、そちらは既に本家のほうで語られているからいいかな、と。


 では月刊誌とかのほうを。ウルトラジャンプから『バイオメガ』、サンデーGXから『神様ドォルズ』、ヤングキングアワーズから『それでも町は廻っている』、アフタヌーンから『FLIP-FLAP』『吉田家のちすじ』を拾い上げてみようかと思います。

BIOMEGA 4 (ヤングジャンプコミックス)

BIOMEGA 4 (ヤングジャンプコミックス)

神様ドォルズ 3 (サンデーGXコミックス)

神様ドォルズ 3 (サンデーGXコミックス)

それでも町は廻っている 4 (ヤングキングコミックス)

それでも町は廻っている 4 (ヤングキングコミックス)

FLIP-FLAP (アフタヌーンKC)

FLIP-FLAP (アフタヌーンKC)

吉田家のちすじ(2) (アフタヌーンKC)

吉田家のちすじ(2) (アフタヌーンKC)


A 『バイオメガ』は圧倒的な画力で魅せてくれますね。
B 作中の独特のフォントとかもいいな。あの世界観を構築するのに欠かせない要素のひとつ。
 弐瓶勉さんの短編集『ブラム学園!』も新境地と言いますか、良い意味で期待を裏切る内容でしたね。時折異様にグロい話があるので読者を選ぶのかもしれませんがね。これもサルベージしましょう。

ブラム学園! アンドソーオン 弐瓶勉作品集 (アフタヌーンKC)

ブラム学園! アンドソーオン 弐瓶勉作品集 (アフタヌーンKC)


 『神様ドォルズ』は匡平と阿幾の過去が(単行本では)語られ、今後更に盛り上がっていくと思われます。田舎の閉鎖的な雰囲気の描写とかも秀逸ですね。
B 『ミスミソウ』の感想でも似たようなこと言ってたな。
 そういう舞台設定に何か心惹かれるんですよ。自分が地方出身なのが影響しているのかも。
A キャラクターの魅力について触れていませんが・・・。
 僕は日々乃さん一択です。
A 以前あなたが書いた記事で、詩緒についていろいろと書いていませんでしたか?(詩緒がヤバい:『神様ドォルズ』3巻
 まあ、人間ですからね。あと『それ町』は間の取り方と台詞回しの妙が冴えていると思います。あの空気は他の人には真似できない、石黒正数さんならではのものだと思います。『FLIP-FLAP』はピンボールという非常に珍しい題材を扱いつつも、そこに情熱を傾ける姿・熱さに引き込まれました。
B さっきから「熱さ」とか「空気」とか、曖昧な表現が多いね。
 表現力の乏しさを痛感します。うまく言葉にできない場合にはよくお世話になっている表現です。で、あとは『吉田家のちすじ』な訳ですが、これは堪らないですね。萌え系にはまず見られない大人の女性の魅力が描かれていましてね、尚且つ強烈なフェティシズムが漂っています。吉田家の男たちはこの世の春を謳歌していると言わざるを得ません。最も印象的な話は2巻に収録されている、多香子さんがワキの処理をうっかり忘れてしまう話がですね・・・
A これ以上は人として問題がありそうなのでお控えください。随分長くなってしまったのでここらへんで一息置くことにしましょう。



後編中編に続きます。更新は3日くらい後になるかも。