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待望の復活。中村明日美子『鉄道少女漫画』

鉄道少女漫画

鉄道少女漫画

中村明日美子さんの、待望の新刊になります。
体調を崩されて昨年夏から休筆していましたが、この単行本には描き下ろし(つまり新作)が収録されています。そして単行本巻末の広告によると、来月末発売の「楽園」にも新作が掲載されるとのこと。この単行本によって復活の狼煙をあげる、いや汽笛を鳴らすといったところでしょうか。何はともあれ、無理だけはせずに描き続けて欲しいと思います。


まず表紙が素晴らしい。
タイトルが、駅ホームの案内板(?正式名称が判りません)を模したデザインとなっています。実に洒落ているではありませんか。描かれている人物も、表情や仕草(歩く際の背中の曲げ具合とか、座っている時に足を投げ出していたり、逆に膝をしっかりと閉じていたり)が描き分けられていて、それぞれの性格が見えてくるようではありませんか。


収録されているのは、「メロディ」ならびに「楽園」に掲載された読切6作品+描き下ろし短編1作。因みに収録作『青と白のリーム』は『立体交差の駅』の後日談となっていますが、それぞれ独立した短編となっています。
これら独立した作品を繋いでいるのは、単行本タイトルからも判るとおり「鉄道」です。全ての作品が、小田急線沿線の街・或いは駅構内・また或いは電車内が舞台となります。


そしてそこで描かれるのは、男女の行き違いから生まれる物語であったり、時には女性同士であったり。縺れ絡まったあげく最後は奇麗に収まったり、そこから新しい始まりが生まれたり、または切ない余韻を残す幕切れがあったりと、実に千変万化の内容となっています。また中村明日美子さんの官能的な筆致が、実に良い雰囲気を造り出しているのですなぁ。
個人的には、とある会社員が妻に秘密を持つ『木曜日のサバラン』がお気に入りです。そしてそれらの短編をひとつなぎにまとめた描き下ろし掌編『ある休日』が、爽やかな読後感を残してくれます。


お薦めの1冊です。