マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

今年のマンガを振り返る対談(独りで)・本編その3

序論・ならびに本編その1本論その2の続きになります。


m:それでは続き、オヤジ向と4コマへと移りましょう。まずはオヤジ向から。何を挙げましょう?
k:まず挙げておかなければならないのは、何と言っても星野茂樹・石井さだよしさんによる『解体屋ゲン』。あとこれは単行本買ってないので入れるべきかどうか迷ったんだが、やはり天王寺大渡辺みちおさんの『白竜LEGEND』は入れておきたい。オヤジ向枠なのかどうかで迷ったけれども、ラズウェル細木さんの『う』もだな。


解体屋ゲン 1(危機一髪爆破解体編) (芳文社マイパルコミックス)

解体屋ゲン 1(危機一髪爆破解体編) (芳文社マイパルコミックス)

う(3) (モーニング KC)

う(3) (モーニング KC)


m:『解体屋ゲン』は、今年遂に花開いたという感がありますね。コンビニ版とはいえ単行本が連続で刊行され、特設サイトも開設されて、更にはトークライブ開催と。
k:曳家のエピソードに代表される、実在の方を起用したセミ・ドキュメンタリー的な作品とか、実に意欲的な試みも多かった。特設サイトや twitter を見ると判るけど、読者との交流も実に密接に行っている。
m:ファンサービスが徹底していますよね。単行本出た際に感想書いた人をモデルにした名前やtwitterアイコンを作中に登場させたり。かく言う自分も・・・。
k:自慢はそのくらいにして、『白竜LEGEND』に移るか。先程の『解体屋ゲン』にもある程度通じるというか、こちらはフィクションではあるけれども、実際に日本で起こった大企業絡みの汚職・事件類を丹念に取材して、それを元に良質なエンターテインメントに仕上げる手腕は見事だよ。昨年の震災のときに電力会社を題材にした話が打ち切られてしまったのが話題になったが、その後に書かれているエピソード、何れも読ませる。ベテランの技が冴え渡っている。
m:『う』も凄いですよね。うなぎ限定ですよ。最新号で遂に最終回となりましたが、100回もうなぎだけで連載できるものなのかと感嘆しました。賞与も入ったので、近くうなぎ食べに行こうかなと思っています。誰か一緒に行ってくれる人いないかな?
k:独りで対談記事書いている人間の台詞ではないよな。



m:では4コマに移りますか。因みに今、4コママンガレビューサイト素晴らしい日々管理人の八戸さんが「4コマオブザイヤー2012」という企画を行っていますので、それへの参加も兼ねて選んでみようと思います。


k:4コマには疎いだろうに、良い度胸しているな。確か「新刊部門」と「既刊部門」あったよな。どれを選ぶんだ?
m:「新刊部門」では椿いづみさんの『月刊少女野崎くん』とカラスヤサトシさんの『カラスヤサトシの日本びっくりカレー』、「既刊部門」では三上小又さんの『ゆゆ式』と双見酔さんの『セカイ魔王』を挙げたいと思います。


【新刊部門】

月刊少女野崎くん(1) (ガンガンコミックスONLINE)

月刊少女野崎くん(1) (ガンガンコミックスONLINE)

【既刊部門】

ゆゆ式 (4) (まんがタイムKRコミックス)

ゆゆ式 (4) (まんがタイムKRコミックス)

セカイ魔王 (2) (まんがタイムKRコミックス)

セカイ魔王 (2) (まんがタイムKRコミックス)


k:『月刊少女野崎くん』はギャグにキレがあって面白かったな。登場キャラクターが皆個性的で、キャラが立っているんだよ。男キャラクターが乙女ちっくだったり、逆に女性キャラクターが凶暴だったり(同性に)モテモテだったりと、ジェンダー的にひっくり返っているのがまた面白みを出しているんだよな。
m:『カラスヤサトシの日本びっくりカレー』も、基本的にはカレー食べているだけなんですが面白かったですね。死ぬほど辛いカレー食った瞬間の苦悶の表情とか実に良い。あとはカレー・スパイスの蘊蓄や、カラスヤサトシさんのカレーに対するこだわりを滔々と語るところ。カレーへの愛がビシバシと伝わってきました。
k:『ゆゆ式』は、この面白さをどう伝えたら良いのか、なかなか巧い言葉が見つからないんだが・・・。何というか癖になる。「間」の取り方・伸ばし方が絶妙なのかな。台詞も味わいがあるんだ。語句の選択が秀逸だと思う。
m:あとは『セカイ魔王』ですか。これ、前回の記事でも触れた『まおゆう』の系譜に位置づけられる作品だと思うのですよ。勇者と魔王が寄り添うかたちで、二人の関係が描かれる。この作品では勇者は魔王の正体をまだ知らないですけどね。こういった関係性を題材にした作品、ネット上のSSとかライトノベル、コミックスでも増えてきている。そんな中で『セカイ魔王』は、「魔王とは、そして勇者とは何なのか、何故存在するのか」という、世界のシステムみたいなものへ踏み込んでいるところが面白いです。基本的にとぼけた日常が描かれる中で、そういった箇所がキラリと光りますね。




k:・・・まだまだ面白いマンガはたくさんあるけど、とりあえずこのあたりで一区切りとするか。
m:そうですね。折角だから挙げたマンガをリストにしておきますか。本編から、挙げた順でこんな感じですね。


k:40作品くらい挙げたのか?
m:全然足りないですけどね。書き忘れも実はかなりありますが、時間の都合で今回は割愛とさせて戴きます。
k:お疲れさん。さて、マンガ買いに行くかな。
m:お疲れさまでした。素晴らしい作品との出逢いがあると良いですね。長くなりましたが今年のマンガを振り返る対談はこのあたりで終了とさせて戴きます。