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マンガLOG収蔵庫・別館

本館のバックアップとして使用しています。

『鬱ごはん』の黒猫

マンガ 雑文

少し前のことになりますが、施川ユウキさんの新刊『鬱ごはん』を読みました。



食事を題材にしたマンガは多数ありますが、この『鬱ごはん』はタイトルからも推察できるように、他の作品とは一線を画しています。
この作品の主役は、就職浪人生・鬱野たけし(初登場時22歳)。彼は食への興味が薄い。鬱野たけし自ら、作中で「食事とは大層面倒臭い行為だ」*1「何を食べても美味しく感じられない」*2といった発言をしています。
『鬱ごはん』は、将来の展望も決して明るくはなく、その日暮らしに近い生活を続ける彼が、ネガティヴな思考を延々と綴りながら独りで淡々と、半ば機械的に食事を消化していく様子を詳細に描く作品です。


さて、その『鬱ごはん』ですが、独りで食事をしている最中、別の登場人物(?)も登場します。鬱野は「妖精」と読んでいる黒猫です。関西訛りのこの猫は、鬱野のネガティヴ思考に対してツッコミを入れたり、辛辣な意見を突き付けたりします。先行き不透明な鬱野の精神状態を象徴するキャラクターでもあります。



この黒猫、実は作中以外の箇所にも存在を確認することができます。



施川ユウキ『鬱ごはん』1巻11ページ。)


この作品、欄外も鬱野の心理を反映しているかのような灰色で統一されているのですが、その欄外に、時折このように黒猫が描かれています。奇数ページ(見開き左側)の場合、下に描かれます。*3



(同書14ページ。)


偶数ページ(見開き右側)の場合は、上部に描かれます。こちらも時折、唐突に登場します。
どのページに描かれているか、抜き出してみましょうか。

【奇数ページ】
11、19、27、33、41、49、57、65、73、81、91、99、107、115、123、131、139、147、155、159、163
以上21箇所。


【偶数ページ】
14、22、36、44、52、60、68、76、86、94、102、110、118、126、134、142、150
以上17箇所。


合計39箇所になりますね。
そしてこの黒猫、一定の法則に従って描かれています。
基本的に、奇数ページと、その3ページ後の偶数ページに描かれるのですな。
11ページに描かれたなら、次は14ページ。
19ページに描かれたなら、次は22ページ、という具合です。



ただ、上の記載箇所を見て疑問に思われた方がいるかもしれません。
偶数ページの記載箇所のほうが少ない。155ページ以降が該当しますね。
そしてそれ以外にも1箇所、上記の法則に当てはまらない箇所がある。
しかしこれもまた、別の法則に従っていると言えるのです。次はそれについて説明します。


まず、今挙げた2つの疑問点のうち、後者のほうから書いておきます。
該当箇所は、81ページと86ページですね。
法則に従うのであれば、84ページに黒猫が記載される筈です。しかしこの箇所のみ、5ページの開きがある。
これには理由があります。83・84ページは、本編ではなくイラストカットが掲載されているのですね。コマじたいが存在しないので、欄外に黒猫を描くことはできないのです。それ以前の問題として、描かれているイラストカットじたいが黒猫ということもあります。
このイラストカットのページを含まずに考えれば、奇数ページの3ページ後に描かれている、と捉えることもできる訳です。


そしてもうひとつの疑問点、155ページ以降について。
これには別の法則が関係しています。それは、各話の最初と最後のページに黒猫は描かれない、というものです。例えば、第1話最終ページ(12ページ)と第2話最初のページ(13ページ)には描かれていません。


それを踏まえて、本来黒猫が描かれている筈のページを見てみます。


まずは、158ページ。
このページは、『鬱ごはん』1巻に収録された39話*4のうち、唯一右側(偶数ページ)から始まる話の最初のページなのです。第37話「肝油ドロップ」の1ページ目ですね。ほんらい黒猫が描かれる筈の箇所には、この副題が描かれています。


続いて、162ページ。
こちらは第37話「肝油ドロップ」の最終ページになります。
それに替わるようなかたちで、その次のページ、「あとがき」が記載されている163ページの上部に、黒猫が描かれているのですね。



これが、偶数ページの記載箇所が少なかった理由になります。
この厳密に定められた法則性、何かSFっぽい気もしますね。・・・と、『バーナード嬢曰く。』に強引に繋げてみました。



と、まぁこのようなことを延々と考えていると、それこそ自分の目の前に妖精が現れて、何か辛辣な言葉を投げかけてくるような気がしますな。


といったところで、本日はこのあたりにて。

*1:施川ユウキ『鬱ごはん』1巻12ページ。

*2:同書17ページ。

*3:163ページ(あとがき)のみ、奇数ページでありながら上部に描かれています。

*4:第0話と、特別版を含む話数。