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時折マンガの話をします。

懐かしさと安心感。もとなおこ『コルセットに翼』

昨日の購入日記でも書いたのですが、『コルセットに翼』というマンガを買いました。


コルセットに翼 1 (プリンセスコミックス)

コルセットに翼 1 (プリンセスコミックス)

こちらは1巻。)


「プリンセス」で連載されている作品です。作者はもとなおこさん。この作品以外だと『レディー・ヴィクトリアン』とか『リエギエンダ物語』とかが代表作でしょうか。
そして『コルセットに翼』は19世紀末〜20世紀初頭のイギリスを舞台にした作品です。年代的には『エマ』や『Under the Rose』に近いですね。


この作品、読んでいて非常に安心感を与えてくれます。同時にノスタルジー的なものも感じさせてくれる。
大雑把な概略を書いてみましょう。


物語は、主人公のクリスティンがデスデモーナ寄宿学校に入学するところから始まります。
クリスティンはその少し前に、父親を亡くしています。母親も既に亡く、更にはその母親は父親と出逢った時には既にクリスティンを身籠って(いた、とされて)おり、クリスティンは親戚から疎まれています。言わば厄介払いで寄宿学校へ送られてきた訳です。
そして寄宿学校の校長、ミス・デスデモーナは非常に冷酷な女性です。外向きは生徒思いな優しい校長を演じつつ(良家の子女が入学する学校なので、外向きの振る舞いが自らの名声等にも繋がる訳です)、学校内では生徒を屈服させ自らの支配下に置くことを最大の目的としています。
反抗的な生徒、利用価値のない生徒に対しては徹底して冷淡な扱いをします。屋根裏の粗末な部屋をあてがわられたり、反省房に入れられて食事抜きにされたり。


と、そんな抑圧的な環境下ではあるものの、クリスティンはデスデモーナに対抗しようとするグループに入れてもらったり、そこで様々な知識を教えてもらったりしていきます。それ以外にも、偶然父親と面識のある人物と知り合いになったり、素性を明かさない支援者が現れたり、と・・・。


何か思い出したりはしませんか?
僕は「ハウス名作劇場*1を思い出しました。『小公女セーラ』や『あしながおじさん』とかの類ですね。何と言いますか、エッセンスを抽出したような感じ。ある日天涯孤独になる、境遇が一変する、徹底した悪役、理不尽な仕打ちを受ける、それに耐えつつ前向きに生きる姿、そして謎の支援者と出生の秘密、と。
ノスタルジーと安心感があるのはそれ故だろうと思う次第です。名作劇場の可憐なヒロインたちと同様、クリスティンもまた様々な出来事に翻弄される筈だが、必ずハッピーエンドに辿り着く筈だ、と。付け加えるならば、クリスティンはその結末を自らの手で摑み取る筈です。デスデモーナに対抗するために得た知識を武器にして。


タイトルの『コルセットに翼』、「コルセット」は抑圧の象徴ですが、「翼」はその抑圧に立ち向かう手段の象徴である訳です。


現在単行本は3巻まで出ています。20世紀に入るとほぼ同時にヴィクトリア朝が終わり、新しい時代を迎えようとしています。そんな時代を背景としつつ、寄宿学校で少し成長したクリスティンの、デスデモーナ校長への叛逆が始まろうとしている模様です。
これから先クリスティンを待ち受ける運命はどのようなものか、次巻が楽しみな1冊です。

*1:「カルピス名作劇場」だと少し年代的に違うんですよね。