2009年のマンガを振り返る一人座談会(中編)
前回の記事の続きになります。
人物(?)の割り振りも、前回と同じく
A:id:m-kikuchi
B:ツッコミ役
C:司会進行役
となります。
【2009年は復刻と新装版の刊行が目覚ましい1年だった】
C:それでは続きを始めましょう。前回は『このマンガがすごい!』の難癖ばかりになってしまっていたので、そろそろ振り返って戴きたいところです。
A:そうですね。3日ほど前に購入した『このマンガを読め!2010』については、こちらのほうが自分好みの作品が多くランクインしていたということに触れるだけにしておきましょう。
A:で、ようやく振り返ってみる訳ですが、最初に挙げるのは『クローズ』ですね。
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B:お前は何を言っているんだ?
C:今年のマンガを振り返るという題目でありながら、1991年発行の作品を挙げるのは如何なものかと思います。
A:いや、自分が読んだのは今年なので。マンガというものは常に最新のものを読まなくてはならない訳ではないですからね。どうにかして現在に結びつけようと言うのであれば、それも出来なくはありません。
C:と言いますと?
A:最近、スピンオフ作品の動きが活発ですよね。『クローズZERO』だとか、映画化とか。外伝の『春道』や『リンダリンダ』もありますね。他にも高橋ヒロシさんの影響下にある作品が多数見受けられます。『クローバー』や『ドロップ』、『エグザムライ』とかもそうですかね。高橋ヒロシさん自身、続編の『WORST』を描いている最中です。ついでに言えば、フィギュアの人気が実は凄いという話も聞いたことがあります。それらの源流として、今『クローズ』を読み返してみるのも良いのではないかと思います。坊屋春道やリンダマン、ブルを初めとする熱い漢たちの生き様を堪能して戴きたいところです。
- 作者: 高橋ヒロシ,武藤将吾,内藤ケンイチロウ
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A:そして次に挙げておきたいのが『COBRA』です。
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C:いや、ですからね・・・。
B:今年のマンガで『COBRA』を挙げる奴なんぞ誰もいねぇよ!
(寺沢武一『COBRA』メディアファクトリー版11巻235ページ。)
B:お前、この画像使いたかっただけだろう!
A:いえいえそんなことはありません。随分久し振りに読み返してみたのですが、やはりコブラさんの格好良さは異常です。上の画像は、傭兵部隊「地獄の十字軍(ヘル・クルセイダーズ)」に攫われたオフィーリアという女性を救うために、コブラさんが単身敵地へ乗り込んだ場面です。オフィーリアはその直前のコマで、まさしく絶体絶命の窮地に立たされています。助けを求めるオフィーリアに対し、冷酷な返答を返すクルセイダーズ総統・ゴールドマン。そこに颯爽と登場するコブラさん!喝采を上げたくなりますね。
C:見目麗しい女性の窮地を救う、ヒーローの鑑と呼ぶに相応しいと。
A:ニコニコ動画でも「鬱ブレイカー」として熱い支持を集めているのも当然の帰結と言えましょう。ただ、ちゃんと読んでみると判るのですが、そのような女性が悲運の末路を辿ることも少なくありません。この作品の世界には、美女を何ら躊躇うことなく、むしろ自らの欲望の赴くままに蹂躙する外道が相当数跋扈しているのです。とりわけ○○○○の末路を初めて読んだ際は、しばらくその事実を受け入れることが出来ないくらいの衝撃を受けました。そしてそれ故に、哀しみと怒りを胸に秘めつつ、それでいながら小粋なジョークを口にしながら悪党を叩き潰すコブラさんの勇姿には、深い感銘を受けざるを得ません。
B:それについては同意だが、今年のマンガという点から言うとだな。
A:まぁ、一度頓挫(?)していたアニメがようやく始まるようですので、それを踏まえればタイムリーな選択と言えるかと。
B:強引にまとめたな。
A:ところで、『COBRA』によく出てくるスキンヘッドの女性のエロスやレディのボディラインの見事さ、或いはレディの容姿の原型と考えられるドイツ映画『メトロポリス』に登場したアンドロイドについて・・・。
C:それは別の機会にお願いします。
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C:で、『クローズ』『COBRA』と、幾分昔の作品が続いたので、「昔の作品」繋がりということで、多少苦しいかもしれませんが復刻版の話をして戴こうかと思います。2009年は、近年稀に見る復刻の当たり年だった印象がありますが。
A:まったくもってその通りですね。今年始めには『新寳島』の復刻という偉業がありました。『忍者武芸帳』の完全復刻も素晴らしい仕事です。『新寳島』は全集版とはかなり様相が異なるという話ですし、『忍者武芸帳』も、これまで流通していた文庫版とかと比べると、迫力が桁違いです。これらは何れも原本を手にしようとしたら数十万・数百万というレベルだったので、如何に素晴らしい仕事だったかが判るというものです。
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A:新連載に合わせるようなかたちでの、新装版の刊行も数多くありました。『西遊妖猿伝』や『地雷震』ですね。後者については昔のを全巻持っているので購入はしていないのですが、前者については双葉社版を途中までしか買っていなかったのでこれを機に揃えました。この圧倒的な面白さ、どう説明すればいいのでしょうか。絵柄で敬遠している方がけっこういるのかもしれませんが、あまりにも勿体ない話です。因みに装丁についてなんですが、『西遊妖猿伝』双葉社版は祖父江慎さんが行っていて、そちらを評価する方も少なくないのですが、自分は統一感がある講談社版のほうが好みです。背表紙が奇数巻がランダム配色、偶数巻が黒になっていて、棚に並べるといまいち散漫な印象といいますか。あくまで個人的なものですがね。
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B:お前の好みはいいとして、『蒼天航路』とかも新装版が出ているな。
A:『蒼天航路』は、呂府と関羽の一騎打ちとか見事だったんですが、いかんせん官渡の戦い以降が・・・。とりわけ赤壁の戦いのうやむや具合たるや、おかげでそれ以降の展開をよく知らないという有様です。やはり原作者が亡くなられたのは痛かったのかと。
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B:それにしてもここ最近の新装版ラッシュは、やはりメディア展開が原因か?
A:それは大きいでしょうね。アニメ化やドラマ化・実写映画化、そしてパチンコの影響は見逃せませんね。あと10年くらい前の文庫化ブームに近い匂いも感じられますね。過去の作品を再び掘り起こして新規の読者を獲得すると同時に、嘗ての読者に再び手に取って戴くことも狙っているという。あくまで素人の一意見ですがね。
C:ところで復刻と言えば、何か大事なものが抜けていませんか?
A:いやこれは最後に取っておいたのですよ。言うまでもないですね、『藤子・F・不二雄大全集』ですね。まさしく真打と言っていいでしょう。遂に『オバケのQ太郎』が読めるという感動!そして今月末には『海の王子』、来年には『ジャングル黒べえ』ですよ!これについてはただ感謝という他ありませんね。
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C:あと、マンガ家さんの自伝・回顧録的作品にも素晴らしい作品が。
A:『劇画漂流』と『青春少年マガジン』ですね。『このマンガがすごい!』『このマンガを読め!』どちらにもランクインしていてほっとしました。どちらの作品も、当時の熱気・空気が伝わってくる名作です。
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青春少年マガジン1978~1983 (KCデラックス 週刊少年マガジン)
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A:とりわけ『劇画漂流』については、少々感慨深くもあります。殆ど誰の目にも留まらなかった記事ではありますが、相当早い時期にレビューしていたと思いますよ。去年の11月末ですからね。
- 当該記事:もうひとつのまんが道『劇画漂流』
A:あと、『劇画漂流』にも登場する松本正彦氏が同じく劇画誕生期を描いた『劇画バカたち!!』もお薦めです。辰巳ヨシヒロ先生とはまた違った角度から、その時代が描かれています。
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C:さて随分長くなりました。区切りもいいかと思いますので、次回こそは今年のマンガについて語って戴ければと思います。
更に続きます。