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森薫『乙嫁語り』3巻

乙嫁語り(3) (ビームコミックス)

乙嫁語り(3) (ビームコミックス)

19世紀中央アジアを舞台に、そこに生きる人たちの生活・習俗を余すことなく紙上に再現せんとしているかの如きこの作品。
2巻までは、アミルとカルルク、そしてその家族が物語の中心になっていましたが、3巻ではカルルクの家に居候していたイギリスの学者ヘンリー・スミスと、調査・研究の目的地へ向かう途中の村で知り合った未亡人・タラスとの淡く儚い恋愛模様が描かれます。


頭部全体を覆う布(フードともターバンとも違うのだが、何という名称でしたか・・・)を外して長い髪を露にし、羊と戯れるタラスの姿が実にまぁ艶やかで素晴らしいですな。そしてそれ故にとでも言いましょうか、スミスとの恋路の結末は切なく、薄幸さが際立ちます。この行き違いが生み出す悲恋は、あたかも戦後間もない日本のメロドラマを彷彿とさせるものがありますね。


3巻の最後の描写を見ると、このエピソードはこれで終わりなのか?と思ったりもしますが、もう少し波乱の展開があって欲しいと思いつつも、それだと予定調和に過ぎるのかなぁとか思ってしまったりも。生活・習俗をこれでもかと言わんばかりに細密に描くのが森薫さんの特徴とも言えますので、その時代の婚姻・家長制に関してもその時代の厳しさを描くのが自然かという考えが浮かぶ一方、いやしかし『エマ』においては・・・とか思考がぐるぐると渦巻いています。


それと同時に、アミルたちと同じ村に住む少女・パリヤの恋愛が描かれ始めたり、アミルの故郷で争いの火種が見え始めたりと、物語はゆっくりと、且つ確実に大きな動きを見せ始めています。今後の展開も非常に気になります。
読み返す度に「面白いよなぁ・・・」と嘆息してしまう作品ですね。