マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

『ロトさんの本 Vol.20』

気が付けば既に20日近くが過ぎてしまっていますが、まだコミケで購入した同人誌の感想は続きます。

今回は評論本。こちらです。

『アニメとTV放送45年の果てに ロトさんの本 Vol.20』。
ロトさんっていうのは、アニメ評論家の第一人者で現在は『BSアニメ夜話』等でもご活躍している氷川竜介さんの別名ですね。
ニフティサーブで使っていたハンドルネームをこの同人誌でも用いておられる、という訳で。

この本に関しては、僕のアニメに対する知識等が欠落しているのが原因かもしれませんが、批判とか指摘できる問題点とかがまるで存在しません。少なくとも自分には発見できませんでした。
従って、以下の文章も賛辞或いは提灯記事みたいなものになると思われます。

コミケに行き始めてからずっと『ロトさんの本』は買い続けているんですが、氷川竜介さんの史観といいますかアニメへのアプローチの仕方といいますか、読む度に感嘆させられます。

どうしても、アニメ評論って(とりわけネット上においては)語られる範囲が限定されているように感じたりするのです。
トーリーに対しての言及・そこで描かれるテーマの考察・何らかのキャラクターに対しての意見表明(「○○萌え」から「誠死ね」に至るまで)・あとは作画崩壊がどうしたこうしたとか。そこから一歩踏み込んだところまで行っても制作会社やらスタッフやらに触れるところまでに留まっている場合が多い印象がある訳です。


当然それはアニメを語る際に於いて重要な位置を占めていることは言うまでもありませんし、僕もまたそれを第一に考えたりしている訳ですが、それだけでは何か欠けているような思いがあったりもします。
まぁこれは、僕の感性が欠けているのかもしれませんが。(;^ω^)

そんななかで、氷川竜介さんの文章は視点の幅・深さ共に抜きん出ている。

アニメ(TV)とマンガの関わりとか二次商品とスポンサーとの力関係とか、他にも製作委員会方式関連の話とか、産業・経済といった視点から語れる人は非常に少ないと思う訳です。
「放送は不動産業である」という考え方が印象的です。
UHF局の隆盛を作品傾向の二極分化・社会情勢・テレビ東京の放送基準等から説明するくだりも非常に興味深かったですね。

デジタル技術についての考察も非常に早い時期から行っていますし、2D・3Dについての分析も非常に筋が通っていると思いました。「実は人間は2D生物ではないか」という指摘は唸らされましたよ。脳・網膜の情報処理の話まで持ち出してくる引き出しの広さと思考の深さは到底真似ができそうにありません。


予想どおり、太鼓持ち的な内容になりましたね。
でもこれは一読の価値ありだと思います。
萌え絡みの文章とは一味違うものも読んでみたい、という方には特にお薦めかと。

さて、次は何の感想を書きましょうかね。