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時折マンガの話をします。

『BILLY BAT』の、予想外の展開

西遊妖猿伝』に続いて、もうひとつ雑文。
先週から始まった浦沢直樹さんの新連載、『BILLY BAT』のことを少々書いてみます。



前回は確か巻頭カラーで、今回はセンターカラー。
やはりアメコミ的な雰囲気を出すには、カラーページが必須ですよね。
しかし独特の展開だな・・・、と思っていたら、今週号で予想もしなかった展開に。



メタフィクション?・・・とは違うかな。(合ってるかな?)
今週号の一部分ですが、実はこの数コマが実に巧い演出なのです。
まさか第一話すべてと第二話の半分が、この後の展開の前フリだとは思いませんでした。
詳細なネタバレは避けたいので、是非ご一読を。


しかし浦沢直樹さん、ますます古典(という表現は適当ではない気もしますが)への指向を強めていますね。
PLUTO』の原案は『鉄腕アトム』のエピソード「地上最大のロボット」です。そして『BILLY BAT』も、タイトルから判断するに『ビリーパック』へのオマージュであろうことが窺われます。


『ビリーパック』について少し触れておきましょう。
僕もそれほど知っている訳ではなく、勘違いがあるかもしれないことをあらかじめ書いておきます。


『ビリーパック』は1954(昭和29)年から、「少年画報」で連載された作品です。
作者は河島光広という人です。
この話の主人公・ビリーは混血(ハーフ)で、それ故にいじめられたりするのですが、そんな彼が少年探偵として国際陰謀団との闘いを繰り広げる話とのこと。戦後間もない混乱した社会状況も作品に反映しているようです。


この作品は非常に人気のあったらしく、手塚治虫も注目していたようなのです。しかし作者の河島光広氏は重度の結核に冒されていたとのことで、若くして亡くなってしまいます。このあたりのエピソードは『金魚屋古書店』でも紹介されていましたね。


金魚屋古書店 1 (IKKI COMICS)

金魚屋古書店 1 (IKKI COMICS)

(第4話に『ビリーパック』のエピソードあり。)


『ビリーパック』の諸設定を踏まえたうえで『BILLY BAT』を読むと、ニヤリとさせられること請け合いです。
これを機に、復刻版(できれば安価な文庫版で)とか出ないかな。原本は言うまでもなく、アップルBOXクリエートの復刻版とかもかなり高値になっているんですよね。
因みに廉価で唯一読めるのが、



このアンソロジーに収録されている「恐怖の狼人間」です。
でもこれも絶版なのかな・・・。